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2階の部屋に入ると耕作はベッドに座り、柔はお茶を注いでコーヒーを淹れると
コーヒーを耕作に渡しながら寄り添って座った。
柔「はい、どうぞ~。」
耕作「ありがとね。」
耕作「病院だけど、さっき言ってた様に挨拶に行くだけなの?」
柔「ううん、ちゃんと診察して貰うよ?」
耕作「昨日言った理由で?」
柔「そうだよ、十分に理由にはなると思うけど。」
耕作「まあ、そうだよね、産婦人科なんだし。」
耕作「やっぱり、心配は掛けたくないの?」
柔「おかあさんにはね、後、おじいちゃんが知ったら大騒動しそうだから。」
耕作「あ~、確かに、そうしそうだよね、滋悟朗さんなら。」
柔「あなたが知っててくれたら、それで十分だと思ってるしね。」
耕作「光栄だね、そう言って貰えると。」
柔「だって、あなたはあたしの愛する大切なパートナーですからね~。」
耕作「それは俺も同じさ。」
耕作「だからね?」
柔「うん、分かってるよ。」
耕作「一応、念の為にね、診断がどう出るかは関係無くそうしたいんだ。」
柔「うふふ、また、同じ事を考えてたのね。」
柔「一緒にお風呂に入ってくれるだけで今夜は十分だよ。」
柔「それに長湯はしない様にするしね。」
耕作「そうだね、その方が良いと思うよ。」
耕作「ところで今日の西海大での練習方法はどうするつもりなの?」
柔「基本は隙を少しでも減らす方法なんだけど、後は技の精度を上げる事かな?」
耕作「つまり技の切れとタイミングの練習になるのかな?」
柔「そうだね、それを富士子さんに見て貰うのと富士子さん自身の技の習得かな?」
耕作「寝技もだよね?」
柔「それは明日以降かな?」
耕作「なるほど、欲張っては駄目って事だね。」
柔「うん、無理に増やしても習得出来なかったら意味が無いしね。」
耕作「でも、状況次第では今話した内容も変わるんだよね?」
柔「うふふ、良くお分かりになられてます事。」
耕作「向こうに居た時がそうだったからね。」
柔「覚えてたのね~。」
柔「ひょっとしたら皆の苦手な技とかを練習するかもしれないけど。」
耕作「もしかして、西海大の部員達全員の能力を把握してるって事は無いよね?」
柔「それは無理よ、全員が乱取りしてる所は見てないんだから。」
耕作「あ、そうだったか。」
柔「自己申告かな?何が苦手かは。」
柔「それを聞いた上で実際にその技をやって貰って悪い所が有れば指摘して
改善して貰うやり方になると思うよ。」
耕作「色々考えてるんだね。」
柔「それはね~、その場その場で対処出来る様に色々考えておかないとね。」
耕作「さすがだよ、だから俺は君の柔道に関しては心配して無いんだ。」
柔「でもね?それを引き出してくれるのは、あなたなのは忘れないでね?」
耕作「そうなのかな?」
柔「そうなんです、これは紛れもない事実なのよ?」
耕作「そう言われると嬉しくなるね。」
柔「あなたに喜んで貰えたら、あたしも嬉しいから、って前から何回も言ってるけどね。」
耕作「そろそろ出掛けようか?」
柔「そうだね~、着替える時間も有るしね。」
耕作「そういや、着替えて無かったね、君も俺も。」
柔「じゃあ、着替えようかな~。」
耕作「自分でね?」
柔「あ~、先制攻撃されてしまった~。」
耕作「ふふふ、昨日着せたから良いでしょう?」
柔「うん、じゃあ、着替えるね。」
耕作「ブラ着けないって言ってたけど、ほんとに着けないの?」
柔「診察だから着けない方が良いとは思うのよね~。」
耕作「その辺りは俺は分からないから君に任せるよ。」
柔「分かった~、着けな~い。」
柔「Tシャツ着て厚手のトレーナーを重ねて着るから良いよね?」
耕作「それなら大丈夫そうだから良いよ。」
柔と耕作は着ていく服を選ぶとそれに着替えた。
柔「どうかな?」
耕作「下はジーンズにしたんだね、それで良いと思うよ。」
柔「じゃあ、あなたは玄関出た所で待ってて、おかあさんに場所を聞いてくる。」
耕作「分かった、慌てなくて良いからね。」
柔「うん、分かってるよ~。」
耕作「あ、そうだ、保険証は持ってるよね?」
柔「手元に?」
耕作「そうだよ、それが無いと診察料が高くなるから。」
柔「あ、そうだったね、ちょっと待って。」
柔は保険証を探して持って来た。
耕作「落とさない様にどこかに入れてた方が良いよ。」
柔「分かった~、そうする~。」
柔はジーンズのポケットに保険証を入れた。
柔「出掛けましょう~。」
柔は耕作の手を取った。
耕作「えらく手を繋ぎたがるね?」
柔「だって~、あなたを感じられるじゃない?直に。」
耕作「確かに、しかし、君の手温かいね~。」
柔「あなたの手も温かいよ?」
柔「じゃあ、下に下りよう?」
耕作「そうだね。」
柔と耕作は手を繋いだまま下に下りて行った。
下に下りると柔は耕作の手を離した。
柔「じゃあ、聞いてくるね。」
耕作「分かった、電話を掛けた後は外で待ってるから。」
柔「は~い。」
柔が奥に行くのを見届けた耕作は会社に電話を掛けた。
耕作「おはようございます、編集長。」
耕作「原稿の件なんですけど、少し用事が出来たので午後からで構いませんか?」
耕作「すみません、午後には必ず届けますので。」
耕作「はい、それでお願いします。」
耕作「それでは失礼します。」
耕作は電話を掛け終わると玄関を出てそこで柔を待つ事にした。
耕作「(何で、急に手を繋いできたんだろう?)」
耕作「(昨日の事が有ったから安心感を求めてるのかな?)」
耕作「(今日になってからだからな~、手を繋ぎだしたのって。)」
耕作「(心配させまいとしてるのが分かるんだよな。)」
耕作「(こちらから聞かないと柔からは理由は言わなさそうだな。)」
耕作「(病院から戻ったら真意を聞いてみるか。)」
耕作「(あれ?待てよ?柔は最初町内では行かないって言ってたけど。)」
耕作「(何で急に町内って言いだしたんだ?)」
耕作「(その事も併せて聞いてみるか。)」
耕作「(それにしてもやけに時間が掛かってるな~。)」
耕作「(玉緒さんも結構鋭いから問い詰められてるのかもしれないか。)」
玄関の戸が開いて柔が出て来た。
柔「ごめんね~、待たせちゃったね~。」
耕作「いや、大して待って無かったよ。」
耕作「ところで、その手に持ってるのは何だい?」
柔「風呂敷包みだけど?」
耕作「柔~。」
柔「あ、ごめん、中身の事だよね?」
耕作「そうだよ?普通、聞く時って中身の事だと思うけど?」
柔「だよね~、ごめんね~。」
柔「でも、この形見れば分かるんじゃない?普通は。」
耕作「反撃して来たか。」
柔「まさか、この形見て石鹸とか言う人は居ないと思うんだけど。」
耕作「畳みかけてきたか、まるで君の柔道みたいだな。」
柔「あは、分かるよね?」
耕作「お酒でしょう?それも2本。」
柔「うん、その通りだよ。」
柔「おかあさんが挨拶に行くのに手ぶらはお相手の方に失礼になるからって。」
柔「それであちらのお父様の好きなお酒を持って行けって言われて渡されたの。」
耕作「そうなのか、確かにそれを持って行けば診察とは思われないね。」
耕作「まさか、玉緒さん、挨拶だけじゃ無いって気が付いてるんじゃない?」
柔「多分、気が付いてるみたいよ、何も言わなかったけど。」
耕作「やっぱりね~。」
耕作「そうじゃないと、この如何にも手土産って言う形のは渡さないと思うよ。」
柔「そうだよね~。」
柔「ご近所さんなら、尚更これ見たら挨拶に行くとしか思わないね。」
耕作「後の話は歩きながらでもしようか。」
柔「うん、その方が良いね。」
耕作「その前に、それは俺がもつよ。」
柔「良いの?」
耕作「こう言うのは俺の役目だし。」
柔「うふふ、ありがとう~、優しいのね。」
耕作「当然の事をするだけだから。」
柔は耕作に風呂敷包みを渡した。
耕作「やっぱり、結構重いね、良く持ってたね。」
柔「それ位なら平気だよ?」
耕作「そうなんだね、でも、これから先も重い物は俺が持つから。」
柔「うふ、お願いします。」
柔「じゃあ、行きましょうか。」
耕作「そうだね。」
柔と耕作は木戸を潜って表へ出ると柔が腕を組んできた。
耕作「腕組んだりして大丈夫かい?」
柔「この辺りの人達はあたし達が夫婦だって皆知ってるから。」
柔「逆に手も繋いでないと仲が悪いのか?って思われるよ?」
耕作「そうなの?」
柔「まあ、あたしの想像だけど、絶対居ないとは言えないでしょう?」
耕作「確かに、絶対とは言えないね。」
柔「だから良いでしょう?」
耕作「君にお願いされると嫌とは言えないよ。」
柔「わ~い、嬉しいな~。」
耕作「君が喜んでくれてるなら、それが一番だからね。」
柔「うふ、じゃあ、行きましょうか。」
耕作「そうだね。」
柔と耕作は腕を組んだまま病院のある方へ向かった。
耕作「やっぱり、大通りに面した場所に有るのかな?」
柔「大通りから一本入った通りに有るんだって。」
耕作「へ~、普通は病院って大通りに面してるよね?」
柔「それって大きな病院位じゃないの?」
耕作「そうか、小さな病院は割と中に入った所に多いね。」
耕作「でも、大通りに面して無いって事は見られる危険性は少なくなるか。」
柔「そうだね、だから逆に良かったと思うよ。」
耕作「今から行く所の先生って君の4歳上って事はまだ20代だよね?」
柔「気になるの?」
耕作「うん、どんな人かは気になるね。」
柔「美人さんか可愛いかとか?」
耕作「違うよ?性格的に厳しいのか優しいのかって言う事に関してだよ?」
柔「何だ~、そうなのね。」
耕作「何か不満そうだね?」
柔「ううん、あなたならそう言うだろうと思ってたから。」
耕作「なるほど、だからそう言う反応だったんだ。」
柔「ひょっとすると、あなたも診察室に呼ばれるかもしれないよ。」
耕作「え?何で俺まで呼ばれるの?」
柔「夫婦だからに決まってるじゃない?」
耕作「なるほど、それなら分かるよ。」
柔「何の用件で呼ばれると思ったの?」
耕作「いや、そう言うんじゃなくて、単に君だけで良いのかと思ってたから。」
柔「普通の病院ならそうかもね。」
耕作「そうか、今から行く所って産婦人科だったね。」
柔「まさか、ついさっきの今で忘れてたとか無いよね?」
耕作「いや、さすがにそれは無いよ。」
柔「だよね、忘れる方が可笑しいし。」
柔「あっ、あそこみたい。」
耕作「そこまで大きな病院じゃ無いのか。」
柔「そうでしょうね、産婦人科ってしょっちゅう厄介になる所でも無いだろうし。」
耕作「でも、内科とも書いて有るよ?」
柔「へ~、両方診る事が出来るんだ。」
柔「表からで良いのかな?」
耕作「裏口とか知らないよ?」
柔「あたしも知らないんだけど。」
柔「まあ、良っか、取敢えず入るね。」
耕作「そうだね。」
耕作は入り口のドアを開けて柔を先に入れると後に続いた。
柔「おはようございます、よろしいですか?」
看護師「おはようございます、初めてでしょうか?」
柔「はい、初めてお伺いさせて頂きました、」
看護師「では、そちらの窓口で受付されて下さい。」
柔「分かりました、ありがとうございます。」
柔と耕作はスリッパに履き替えて上がると柔は受付へ行き耕作は長椅子に座った。
柔「おはようございます、すみません、初めてなんですけど。」
受付「おはようございます、それでしたら保険証をお出し下さい。」
受付「それと、この問診票にご記入をお願いします。」
柔「はい、保険証はこれでよろしいですか。」
受付「はい、結構です、問診票は椅子にお座りになって書かれて構いませんから。」
受付「書き終えたら、また、こちらにお持ち下さい。」
柔「はい、分かりました。」
柔は耕作が座っている場所へ行き寄り添って座った。
柔「これ、どうやって書くのかな?」
耕作「設問に対して『はい』か『いいえ』で答えるか該当無しの時は括弧内に
その理由を書けば良いんじゃない?」
柔「『はい』とか『いいえ』って書いて無いよ?」
耕作「どれ?あ~、最初は今日はどう言う理由で来たかを書かないといけないんだね。」
柔「どう書こうか?」
耕作「いや、それは俺には分からないよ?」
柔「確かに、あなたが受けるんじゃないからそうだよね。」
柔「生理不順なのでって書いておく?」
耕作「それで良いんじゃない?」
柔「やっぱり、正直に書くよ。」
耕作「風呂に入ってて倒れそうになったって?」
柔「うん、そうじゃないと正確な診断が下せないでしょう?」
耕作「まあ、そうだね、君がそれで良いと思うなら俺は構わないよ。」
柔「分かった~、それで書くね。」
柔は昨日の状況を詳しく書いた。
柔「これで良いかな?」
耕作「えっと、そこの俺が君に下着から全部着せたって言う部分はいらないと思うけど。」
柔「あ、やっぱり?じゃあ、消しておくね。」
耕作「後の部分は、昨日の状況を流れで書いてるから分かり易いと思うよ。」
柔「希望される検査って何だろう?」
耕作「それも俺にはさっぱり分からないから。」
柔「じゃあ、妊娠反応検査とでもしとくか。」
耕作「そこは適当なんだね。」
柔「一番時間が掛から無さそうだったから、これにしたんだけど。」
耕作「そうなのかな?まあ、良いか。」
柔が小声で耕作に話し掛けた。
柔「これ、どう書こうか?」
耕作「何で小声なの・・、あ~、これだから小声で聞いたんだね。」
耕作「1番目は来て無いから不順に〇すれば良いんじゃない?」
柔「じゃあ、そうするね。」
柔「その下は~、これはあなたじゃ無理か。」
耕作「それはそうでしょう?君にしか分からない事なんだから。」
柔「その下は簡単だから良いかな。」
柔「良し、終わった、出してくるね。」
耕作「分かった、いってらっしゃい。」
柔は受付に問診票を提出すると耕作の元に戻ってきた。
柔「呼ばれたら診察室に入って下さいだって。」
耕作「そうなんだ、でも、今誰も居ないから直ぐ呼ばれるんじゃない?」
柔「あ、だよね、行く心構えだけしとこう。」
柔「でも、誰も居なくて良かったね。」
耕作「確かに、もし居たら色々話し掛けられそうだったよ。」
柔「あなたに?」
耕作「いや、君にだよ?俺の顔は殆ど知ってる人は居ないから。」
柔「そうなの?」
耕作「新聞記者って顔は出さないからね。」
柔「そう言えば顔が載ってるのは見た事無いな~。」
看護師「松田様、どうぞ中へお入り下さい。」
柔「は~い。」
耕作「風呂敷包はどうするの?」
柔「あ、そうだった、じゃあ、ちょっとじゃないかもだけど、行ってくるね。」
耕作「いってらっしゃい。」
柔は風呂敷包みを持って診察室に入って行った。
耕作「(どの位時間が掛かるんだろう?)」
耕作「(そこまで長くはならないとは思うけど。)」
耕作「(何か、診察室の中がえらく騒がしい気がするけど、どうしたんだ?)」
耕作「(そうか、幼馴染って言ってたから、その話で盛り上がってるのかも。)」
耕作「(良く考えたら、この先ここに来る事が増えるんだよな~。)」
耕作「(慣れるとかは俺には無理そうだ。)」
耕作「(それにしても時間が掛かるな~。)」
耕作「(柔、まさか、俺との事を延々話してるんじゃないだろうな?)」
看護師がやって来た。
看護師「柔さんの旦那様ですか?」
耕作「はい、そうですけど、どうかしたんですか?」
看護師「そう言う訳ではないのですが診察室へお入り下さい。」
耕作「分かりました。」
耕作は看護師に促されるまま診察室へ入って行った。
耕作「失礼します、柔の夫です。」
柔「もう~、あなたったら~、そんなに畏まらなくても良いよ~。」
耕作「いや、一応、ここは診察室なんだし。」
桜「いやだね~、そんなに堅苦しくすんなって。」
耕作「はあ、そうなんですか?」
柔「ね~、桜お姉ちゃん、どう思う?」
桜「そうさね~、柔ちゃんにしては渋めの良い男を捕まえたわね~。」
耕作「捕まえたって・・。」
桜「あは、こりゃ、失礼した。」
耕作「柔?もう打ち解けてるのか?」
柔「だって~、思い出したら懐かしくなっちゃって~。」
桜「あんなにちっちゃかった柔ちゃんがここまで大きくなっててお姉さん感激したよ。」
桜「おまけに、こんな良い男を捕まえてるんだからね~。」
柔「桜お姉ちゃん、違うよ?どっちかと言えばあたしが捕まえられた方なんだよ?」
桜「ほ~、そうなんだ、やるね~、あんた、それでどうやって捕まえたんだい?」
耕作「捕まえたと言うか偶然見かけて柔道の素質に惚れたんですけど。」
耕作「本人にも惚れてしまってたもので。」
桜「なるほどね~、ほら~、やっぱり柔ちゃんの方が捕まえてるじゃない?」
柔「そうなのかな~?」
桜「だって、惚れたって言ってるから、そうなるんだよ?」
柔「そうなんだね~、あたしが捕まえたのか~。」
耕作「あの~、すみません、それで柔の診断の方はどうなってますか?」
柔「あ、そうだった、桜お姉ちゃん?どうなの?」
桜「おっと、本業を忘れるとこだったね。」
桜「まあ、やる事やってるなら妊娠の可能性は有るよ。」
柔「ほんと~?」
桜「今まで一回もズレた事が無いのに、来てないって言うなら可能性は有るよ。」
桜「柔ちゃんも色々勉強してたみたいだけど、概ね、その通りだと思う。」
桜「詳しくは4週目以降の検査でハッキリする筈だよ。」
桜「しかし、結婚、出産で柔ちゃんに先を越されるとは思わなかったな~。」
柔「あたしもここまで進むとは思って無かったよ?」
桜「柔道一筋みたいな滋悟朗さんだったからね~。」
桜「ずっと、柔ちゃんを手元に置いとくかと思ってた。」
柔「まあ、実際実家に住んでるから似た様なもんだけどね。」
桜「あ~、そうだったね~。」
桜「旦那さん?柔ちゃん、あんたの事を凄く信頼してるんだ、しっかり支えとくれ。」
耕作「はい、勿論、そのつもりで一緒になりましたから。」
桜「しかし、生真面目な旦那さんだね~。」
柔「そこがまた良いのよ~。」
桜「こいつ~、惚気に来たのか?」
柔「えへへ、でも、桜お姉ちゃんに認めて貰えて嬉しいな~。」
桜「当然だろう?私は柔ちゃんに最初に会った時から認めてるさ。」
桜「それにしても、本当に久しぶりに会ったけど、まさか結婚して出産まで
考えてるかと思うとね~。」
桜「もう立派に母親だよ、柔ちゃんは。」
耕作「あの~、それで昨晩倒れたのって妊娠の可能性と関連有るんですか?」
桜「あ~、それは全然関連性は無いよ、あんたも柔ちゃんに言ったんだろう?」
耕作「えっと、旅行疲れとか緊張が解けたとかですか?」
桜「そうそう、それね、多分精神的なモノから来てると思う。」
桜「私の専門外だから早計には言えないけど、恐らくそうじゃないかとは思うよ。」
耕作「そうですか、それじゃ、今後同じ事は起こらないんでしょうか?」
桜「そうだね~、まずは同じ状況の時に注意してれば大丈夫と思うよ。」
耕作「長期の旅行とか、他の場所での長期滞在の後とかですね?」
桜「そう言うこったね、まあ、あんたがちゃんとしてそうだから、私は安心だけど。」
柔「あなた?桜お姉ちゃんに認めて貰えたよ?良かったね~。」
耕作「そうだね、君に安心して貰いたいからね。」
桜「こいつら~、夫婦そろって惚気るなっちゅ~の。」
柔「あ~、ごめんね~、そんなつもりじゃ無いから~。」
桜「そうそう、再来週来てくれると、ここでも一応は確認出来るよ、どうする?」
耕作「妊娠のですか?」
桜「当たり前じゃないか~、ここはそう言う病院なの、分かってるかい?」
耕作「はい、勿論、分かってます、柔どうする?」
柔「あたしはここで診て貰うよ、その方が安心だから。」
柔「あなたもそれで良いでしょう?」
耕作「ああ、俺は君がそれで良いなら構わないよ。」
桜「分かった、分かった、ここで惚気るのは止め~。」
桜「しかし、あんた達、何時もそうやってお互いに確認取ってるのかい?」
柔「うん、何時もお話して決めてるからね。」
桜「そうなんだね~、良い旦那さん捕まえたな、柔ちゃんは。」
桜「大事にして貰うんだよ。」
柔「うん、今でも大事にされてるけどね。」
桜「だから~、惚気るな~って。」
柔「あ~、ごめんね~。」
柔「あ、桜お姉ちゃん?主人にもあの事お話してくれないかな?」
桜「良いのかい?話しても。」
柔「そう言うのもお話して決めてるから良いよ。」
桜「分かった、じゃあ、言うからね。」
耕作「俺に話しって何ですか?」
桜「えっとだな、今後、愛し合っても良いかって聞かれたんだ。」
耕作「柔?そんなこと話したの?」
桜「こらこら、ここはそう言う事も相談する病院だってさっき言ったばかりだろう?」
耕作「あ、そうでしたね。」
桜「それでだな、あんたはどうするつもりなんだ?」
耕作「俺ですか?」
桜「こう言う事はお互いの気持ちを確認しとかないとな。」
桜「ちなみに、柔ちゃんの話だと、求められたら拒まないと言ってた。」
柔「やだ~、桜お姉ちゃん、恥ずかしいよ?」
桜「いや、こう言う事はハッキリさせておかないといけないんだ。」
桜「あんたはどう思ってるんだ?」
耕作「俺は柔には絶対に無理はさせたく無いって思ってます。」
桜「だそうだけど、柔ちゃんはどうしたいんだ?」
柔「あたしは愛されてるって実感したい時はして欲しいかな?」
桜「なるほどね~、柔ちゃんはこう言ってるけど、あんたはどうする?」
耕作「それは・・、柔が望めばそうしてあげたいです。」
桜「柔ちゃん?私に相談するまでも無かったじゃないか。」
柔「うん、でも、一応は聞いた方が良いかなって思ったの。」
桜「そうかい、私を頼りにしてくれたんだね。」
桜「それじゃ、今後は2人で良く相談して決めとくれ。」
柔「うん、そうするね~。」
耕作「はい、必ず話し合います。」
桜「柔ちゃん?今後来た時に分からない事が有ったら何でも聞いてくれて良いからね。」
柔「うん、桜お姉ちゃん。」
桜「柔ちゃん、本当に懐かしかったよ、また再来週来とくれ。」
柔「うん、必ず来るから、楽しみ~。」
桜「そうかい、私も楽しみだよ、じゃあ、待ってるから。」
柔「桜お姉ちゃん、またね~。」
耕作「失礼します。」
柔と耕作は診察室を後にして待合所の長椅子に座った。
耕作「奔放な方だね~、圧倒されたよ。」
柔「そうかな?昔一緒に学校に行ってた時もあんな感じだったよ。」
耕作「変わって無いのか。」
桜「変わって無くて悪かったね~。」
柔「あ、桜お姉ちゃん、どうしたの?」
桜「患者さんも居ないから出て来ただけだよ。」
柔「それもそうだね、診察室だもんね、あそこって。」
耕作「悪い意味でじゃ無いんですよ?」
桜「分かってるって、気にすんな。」
桜「柔ちゃん、滋悟朗さんによろしく伝えとくれ。」
桜「それと玉緒さんには親父が喜ぶからお酒ありがとうってお礼を言っといてくれ。」
柔「うん、必ず伝えるね~。」
桜「じゃあ、またな~。」
柔「またね~。」
桜は自室の有る棟へ戻って行った。
耕作「ほんとに小学校の時もあんな感じだったの?」
柔「うん、そうだよ、だから、あたしも桜お姉ちゃんて呼んでたの。」
耕作「なるほど、小学校高学年にして既に姉御肌だったって事か。」
柔「姉御肌って?」
耕作「桜さんみたいな女性の事を姉御肌って言うんだ。」
柔「そうなの?」
耕作「サッパリしてるでしょう?それに面倒見が良いのも有るし。」
柔「あ~、そうだね~、今度桜お姉ちゃんにその事を言ってみようかな?」
耕作「本人には言わない方が良いよ。」
柔「何で?」
耕作「本人がその事を気にしてたらいけないからね。」
柔「そうなんだ、でも、そう言うのも気にしない様な気もするけど。」
耕作「そうかも知れないけど、君から言われる事を気にしそうなんだよね。」
柔「分かった~、あなたがそう言うなら言わないね。」
受付「松田様~。」
柔「呼ばれたから行ってくるね。」
耕作「分かった、ここで待ってるから。」
柔は受付へ行き支払いを済ませると保険証と診察券を受け取って戻って来た。
柔「診察券って言うのをくれたよ。」
耕作「あ、それは次来た時にそれを受付に出せば良いだけだから。」
柔「そうなんだ、受付の人もそう言ってたよ。」
柔「お邪魔しました、失礼しま~す。」
耕作「失礼しました。」
受付「お大事に~。」
柔と耕作は靴に履き替えると耕作はドアを開けて柔を先に出し自分も出て
病院を後にすると腕を組んできた柔と一緒に家の方へ向かった。
耕作「ね~、君って病院に行った事って有るの?」
柔「どうかな?余り記憶が無いけど。」
耕作「診察券の事を知らなかったから一人では病院に行ってないと思うよ。」
柔「そうなんだね、さっきも言った様に診察券の事は受付の人も言ってたけど。」
耕作「なるほど、初めて1人で病院に行った事になるんだね。」
柔「ううん、あなたが居たよ?」
耕作「あ、そうか、1人で受付をしたのが初めてだねって事ね。」
柔「そう言う事なのね、確かに1人で受付して来たね。」
耕作「それにしても桜さんって俺より年下のはずなのに全然そんな気がしなかった。」
柔「やっぱりお医者さんだからかな?」
耕作「それだけじゃないと思うけどね。」
柔「そう言えば、手土産、風呂敷ごと渡してきちゃったけど良かったのかな?」
耕作「え?あのまま渡してきちゃったの?」
柔「だって、中を出したら持ち難くなるでしょう?」
耕作「そう言われればそうだね、じゃあ、良かったのかな?」
耕作「帰って玉緒さんに確認してみたら?」
柔「一応は言うけど、どの道、再来週行くからその時に返して貰っても良いんじゃない?」
耕作「それもそうだね、それで良いと思うよ。」
柔「到着~。」
組んでいた腕を解くと柔と耕作は木戸を潜って玄関から中に入った。
柔「戻ったよ~。」
耕作「戻りました~。」
玉緒が出迎えた。
玉緒「お帰りなさい、それでどうだったの?」
柔「桜お姉ちゃん、昔のまんまだったよ~。」
玉緒「そうなのね、ところで診察の方はどうだったの?」
柔「あ、そっちの『どうだったの?』だったんだ。」
柔「やっぱり、おかあさん、知ってたんだね。」
玉緒「ふふふ、勿論よ?わざわざ挨拶だけに行くはず無いですからね?」
柔「えっと~、診察の方は可能性は有りますって。」
柔「それで再来週もう一回来て下さいって言われたよ。」
玉緒「検査かな?」
柔「そうだと思うよ。」
玉緒「可能性有りなのね、でも可能性ですからね、まだはっきりはして無いって事なのね。」
柔「うん、そうだと思う。」
柔「あ、そうだ、手土産なんだけど、風呂敷ごと渡してきたけど良かったの?」
玉緒「再来週行くならその時に返して貰えるでしょうから、構いませんよ。」
柔「それと桜お姉ちゃんがおかあさんにお酒ありがとうって。」
柔「後、おじいちゃんにもよろしく伝えてって言ってたよ。」
玉緒「そうなのね、私とおとうさんの事も覚えてくれてたのね。」
柔「それじゃ、上に上がってちょっとしたら会社と富士子さんの所に行ってくるね。」
玉緒「気を付けて行ってらっしゃいね。」
柔「は~い、気を付けるね~。」
玉緒は奥の自分の部屋へ戻って行った。
柔「あなた?上に行こう?」
耕作「そうだね。」
柔と耕作は2階へ上がって行った。