柔と耕作(松田)の新婚日記 24日目 (午後編第3部

            文書量(文字数)が膨大な為、一日分割で表記しています。




耕作は鶴亀の神保町支店を目指して車を走らせていた。

柔「やっぱり、質問攻めだったね~。」

耕作「それは仕方ないよ。」

耕作「俺達の事をマスコミ情報以上に知りたいって事なんだろうから。」

柔「そうだね~。」

柔「でも、あたし達の事を良く知って貰って皆も良い人を見付けてくれると良いんだけど。」

耕作「また、君はキューピッド役をしようと思ってるのかい?」

柔「さすがに、あの人数は無理だよ、皆の健闘を祈る位かな?」

耕作「ふふ、試合でも無いのに健闘は可笑しい気もするけど。」

柔「まあね~、でも、皆良い子ばかりだから色んな意味で幸せになって欲しいよね。」

耕作「それも有るけど、柔道も今以上に強くなって貰わないと。」

柔「その為にあたしが任命された訳なんだから。」

柔「期待に応える様にしないとね。」

柔「最低目標としては誰かが個人優勝するか、チームで優勝かな?」

耕作「ほぉ~、大きく出たね~。」

柔「あなたはそう言うけど、それ位はやるだろうって思ってるんでしょう?」

耕作「ふふ、バレてたか、君ならそれ以上の事をやりそうだけど。」

柔「いえいえ、そこまで買い被られても困るんだけど~。」

耕作「それもそうか、君が闘う訳じゃないんだよな。」

柔「そうなのよ~、あたしは教える事に専念していかないとね。」

柔「今もそうしてるけど、近いうちに乱取りは一切出来なくなるのがほぼ確定なんだから。」

耕作「そうなんだよな~、今でもトレーニングは抑え気味だし。」

柔「一応、念の為なんだけど、桜おねえちゃんも激しい運動は避けた方が良いって言ってたもん。」

耕作「医者の言う事をちゃんと聞いてるのは偉いと思うよ。」

耕作「それにしても時間を計った様に終業時間一寸前に練習が終わってたね。」

柔「終業時間の事と着替えの時間も考慮して終わる様にしてたから。」

耕作「でも、君、時計はして無かったよね?」

柔「もう~、あなたったら~、柔道場に時計が有ったでしょう?」

耕作「あ~、そう言えば大きなのが壁に掛けてあったか。」

柔「時々あれを見て時間を確認してたのよ?」

耕作「なるほど、さすがだよ。」

柔「えへへ、褒められちゃった~、嬉しいな~。」

耕作「ところで、柔?」

柔「な~に~?あなた~。」

耕作「何で君はさっきよりも俺にくっ付いてるんだい?」

柔「やだな~、分かってるくせに~。」

耕作「俺の直ぐ傍に居たいから?」

柔「そうに決まってるでしょう?」

耕作「やっぱりか、でも、皆が居る時はそこまでくっ付いてこない様にしてよ。」

柔「分かってま~す、ちゃんと節度は持つ様に心掛けてるよ~。」

耕作「それが分かってれば、今はそうしてて良いよ。」

柔「うふふ、ありがとう~。」

柔は耕作に凭れ掛かった。

耕作「こらこら、運転中なんだから、そんな風にされると危ないって。」

柔「あっ、ごめんね~、あなたが運転してるのを忘れてた~。」

耕作「大丈夫かな~、ほんとに節度を持ってるのか心配になってきたよ。」

柔「大丈夫だってば~、今は2人っきりだったから、つい忘れてただけだよ~。」

耕作「皆が居る時はちゃんと頼むよ?」

柔「は~い、心得てま~す。」

柔「でも、こうしてるとデートでドライブしてる気分にならない?」

耕作「そう思わなくも無いけど、今、乗ってるのって君の会社がリースした車だからな~。」

柔「それを考えたら駄目だよ~、あたしだってそれは分かってるってば~。」

柔「もし車を買うとしたら、こんなタイプのにしないと全員乗れないね?」

耕作「そうなんだよな~、しかし、まだそこまで考える余裕は無いかも。」

柔「どうして?」

耕作「君の事も有るし、増改築の事も有るじゃない?」

柔「それら全てが終わるまではって事?」

耕作「目の前の事をしっかりとやっていかないとって思ってるから。」

柔「確かに、先々の事ばかり考えてても駄目かもしれないね。」

耕作「そろそろ会社の駐車場だよ。」

柔「キーはあたしが持って行ってくるから、あなたは駐車場で待ってて。」

耕作「分かった、そうして貰うと助かる、あそこは何となく入り難くてね。」

柔「あたしなら裏口から入れるし。」

耕作「じゃあ、駐車場に止めるよ。」

柔「は~い、後は任せてね~。」

耕作「よろしく頼むよ。」

耕作は車を鶴亀の駐車場に止めて車から降りると助手席のドアを開けて柔を降ろし
柔の荷物を車の中から降ろして自分が持つと車を施錠してキーを柔に渡した。

耕作「これ、お願いね。」

柔「分かった~、それじゃ、キーを渡してくるね。」

耕作「ここで待ってるよ。」

柔「うん、直ぐ戻ってくるから~。」

耕作「行ってらっしゃい。」

柔「行ってきま~す。」

柔は会社の裏口から中に入って行った。

耕作「(今日は柔に持って行って貰ったけど毎回って言う訳にもいかないか。)」

耕作「(本来なら俺が借りてる訳だから自分で返すのが筋だよな・・。)」

耕作「(明日からどうするか考えておかないと。)」

耕作「(取り敢えず、明日と明後日は柔の仕事ぶりの取材が有るから出勤は一緒で良いか。)」

耕作「(問題は明々後日以降どうするかだな。)」

耕作「(鶴亀側は俺が朝から居ても良い様にはしてくれてるから、それに甘んじても良いんだが。)」

耕作「(その事も含めて一度編集長とは話した方が良さそうだ。)」

裏口のドアが開いて柔が出てきた。

柔「あなた~、お待たせ~。」

耕作「お帰り、早かったね。」

柔「うん、羽衣課長が居たから、あなたがお礼を言ってたって言って返してきたよ。」

耕作「そうだったんだ、羽衣さんは何か言ってなかった?」

柔「う~ん・・。」

柔「そう言えば、明日は朝から一緒に来るかって聞かれたから、来ますって答えたけど良かった?」

耕作「そのつもりだから、それで良かったよ。」

柔「良かった~、あなたに相談も無しに勝手にお返事しちゃったから心配だったの。」

耕作「その位は君の判断に任せるから。」

柔「そうなの?」

柔「何でも相談するって決めてたから、その通りにしないといけないんじゃない?」

耕作「いやいや、その位の事は相談しなくても大丈夫だから、気にしなくて良いよ。」

柔「分かった、あたしで判断出来ない時はあなたに聞く様にするね。」

耕作「それで良いよ。」

柔「じゃあ、あなたの会社に行きましょうか?」

耕作「え?何で?」

柔「だって、原稿を持って行かないといけないでしょう?」

耕作「あっ、ごめん、鴨田に持って行って貰ったんだ。」

柔「あら、そうだったのね。」

柔「それなら、帰りましょうか?」

耕作「このまま真っ直ぐ帰る?」

柔「どこかに用事でも有るの?」

耕作「俺は特に無いけど、君は無いの?」

柔「あたしも特には行きたい所も無いから、帰りましょう?」

耕作「君がそれで良いならそうするか。」

柔「お部屋でのんびりしましょう~。」

耕作「何時もの様にだね?」

柔「そうだよ~、帰ろう~。」

柔が腕を組もうとしたのを耕作は制止した。

柔「え~、駄目なの~?」

耕作「さすがに、会社の傍では止めとかない?」

柔「そうだった、まだ会社の裏だったね。」

耕作「じゃあ、戻ろうか。」

柔「は~い。」

耕作は柔の手を取ると繋いだまま表通りに向かった。

柔「手を繋ぐのは良いのね?」

耕作「これ位は良いんじゃない?」

柔「なるほど、覚えておかないと。」

耕作「ただし・・。」

柔「どこでもは駄目なのよね~。」

耕作「良く出来ました、それが分かってるなら大丈夫そうだね。」

柔「あなたに以前言われた事が有ったし。」

耕作「あれで戻ろうか。」

柔「そうだね。」

耕作はタクシーを停めて柔を先に乗せ自分も乗り込むと行き先を告げて実家へ向かった。



実家の前でタクシーが停まると2人は降りて木戸を潜り玄関に入った。

柔「ただいま~、戻ったよ~。」

耕作「今、戻りました。」

玉緒が奥から玄関までやって来た。

玉緒「2人ともお帰りなさい。」

玉緒「柔?久しぶりに出勤してどうだったの?」

柔「以前と変わらない感じだったよ。」

柔「偶に顔だけは出してたからかな?」

玉緒「そう、それは良かったわ。」

玉緒「2人とも疲れたでしょうから、上でゆっくりしてらっしゃい。」

柔「そうするね、あなた?行こうか?」

耕作「時間までゆっくりしておきます。」

柔と耕作は2階へ上がって行った。



2階へ上がって部屋に入ると柔はお茶を注ぎコーヒーを淹れて耕作に渡しながら
一緒に寄り添ってベッドに座った。

柔「お疲れ様でした~。」

耕作「ありがとね、君こそ久し振りで疲れたんじゃない?」

柔「皆に業務のやり方とかを教えるだけだったから、そこまでは無いかな。」

耕作「それなら良いけど、無理はしないでよ。」

柔「大丈夫よ、無理なんてして無いから。」

柔「あなたこそ運転で疲れたんじゃないの?」

耕作「そうだな~、慣れない道だったから少し疲れたかも。」

耕作「車の運転自体はアメリカでもやってたから、そうでも無かったけど。」

柔「そうだったね。」

柔「でも、少しでも疲れてるなら休まないと。」

耕作「こうして君と話してるのが一番の休息になってるから。」

柔「それは、あたしも同じよ~。」

柔「あなたとこうしてお話してるのが一番安らげるもん。」

柔「ところで明日一緒に行くとして、あそこで何をするつもりなの?」

耕作「今日書いてた原稿の続きと何時も書いてた原稿を書こうかと思ってるよ。」

耕作「後、君の仕事っぷりも書こうかと。」

柔「あたしの仕事っぷり?」

耕作「以前話したじゃない?君が会社でどんな風にやってるか紹介するって。」

柔「あ~、そんな事言ってたね。」

耕作「今日も教える時以外は自分の仕事をやってたでしょう?」

柔「うん、自分のお仕事は当然しないといけないし、聞かれた事を教えないといけないのよね~。」

耕作「そう言うのを紹介しようかと思ってるよ。」

柔「しかし、読者さんってそう言うのを知りたいとか思ってるのかな?」

耕作「それは当然知りたいと思ってるよ。」

耕作「君が柔道以外にどんな事をやってるかとかね。」

柔「もしかして将来的にはここでの生活ぶりも紹介するつもりなの?」

耕作「それに関しては君が了承しない限りは書かないつもりだよ。」

柔「あなたが書く限り、あたしは拒否はしないから。」

耕作「なるほど、じゃあ、子育ての状況でも書こうかな。」

柔「それ良いわね、是非書いて欲しいかも~。」

耕作「その際は君だけじゃなくて俺の事も書かないといけなくなるけど。」

柔「あなたも子育てを手伝ってくれるから?」

耕作「そうだよ、俺が手伝うのは当然だと思ってるからね。」

柔「うふ、あなた~、その時はよろしくね~。」

耕作「大船に乗ったつもりで任せとけ。」

耕作「フクちゃんで経験済みだから何とかなるんじゃないかな。」

柔「そうね、あの時の事はあたしにとっても貴重な経験だったな~。」

耕作「でも、君にはその前に出産って言う大仕事が控えてるのを忘れない様にね。」

柔「あ~、そうだった~、あれって相当に辛そうだったよね。」

耕作「そうだったな~、かなりきつそうな声を出してた気がする。」

柔「あなたが傍に居てくれたら良いのにな~。」

耕作「俺が傍に居ても何もしてやれないよ?」

柔「あなたがあたしの手を握ってくれてるだけで落ち着けると思うのよね。」

耕作「そう言う事ならお安い御用だよ。」

耕作「但し、桜さんがOKしてくれたらだけど。」

柔「そっか、じゃあ、あたしから桜おねえちゃんにあなたも一緒に居てくれる様に頼んでみるね。」

耕作「桜さんの事だから駄目とは言わない気がするよ。」

柔「そうかもね、今度検査に行った時にでも聞いてみるね。」

耕作「なるほど、事前に話しておくのは良いかもしれない。」

柔「でも、確定もして無いのにこんなお話しても良いのかな?」

耕作「良いんじゃないの?」

耕作「桜さんも今までの経験からいくとほぼ確定だって言ってたし。」

柔「そんな事言ってたね。」

柔「他にも色々聞きたい事が有るから一緒に聞いてみよう~っと。」

柔「あなたも何か聞きたい事が有ったら聞いてみたら?」

耕作「そう言われても、直ぐに思い付かないな~。」

耕作「行くまでに何か無いか考えておくよ。」

柔「そうしてね、早目に分かってた方が良い事も有るだろうから。」

耕作「話は変わるけど、部員達の技量は如何なの?」

柔「今日見ただけの感想でも良い?」

耕作「構わないよ。」

柔「今日の2回の練習で見た感じだと2年目の組と温子さんは同じ位で他は少し劣る感じかな?」

耕作「なるほど、それで色々指摘してたけど修正は可能なんだよね?」

柔「勿論よ、十分に修正可能だと思うよ。」

柔「あたしが指摘した箇所以外にも色々有るけど、それも直せると思う。」

耕作「しかし、相変わらず、君って凄いと思うよ。」

柔「そうなの?」

耕作「だって、今日見ただけでそこまで把握出来てるんだから。」

柔「まだ、完全じゃ無いけどね。」

耕作「ところで部長は今のままで良いと思う?」

柔「うん、それは陽子さんのままで良いと思うよ。」

耕作「確かに、統率力は有りそうだし、何より皆に慕われてる気がしたよ。」

柔「あなたもそう思ってたのね。」

耕作「君もだったか、って事は、君の代わりをさせるのは陽子さんで決まりかな?」

柔「そうなるかな?」

柔「陽子さんにはもっと技量を磨いて貰って、あたしの代わりが務まる様になって欲しいな。」

耕作「君が大変そうだよな、皆の技量を上げつつ、陽子さんも鍛えるんだから。」

柔「そうでもないよ?」

耕作「そうなのかい?」

柔「陽子さんを鍛える事で皆の技量も上がると思うの。」

耕作「鍛えてる所を皆に見せる事で見習わせるって事?」

柔「それが一番手っ取り早いと思うのよね~。」

耕作「もう既にそこまで考えてたのか。」

柔「早い方が良いかな~って思ったから。」

耕作「明日からのトレーニングのやり方も変えるみたいだけど。」

耕作「当然、練習方法も変えるんだよね?」

柔「明日からの練習方法は変えるかな?」

耕作「どんな風に変えるつもりなの?」

柔「それについてはあなたに許可を貰わないといけないと思ってる。」

耕作「俺に?」

耕作「・・・、まさか、乱取りするつもりなの?」

柔「駄目かな?」

耕作「以前、西海大でやった技封じと空かしならやっても良いと思うよ。」

柔「良かった~、それをするつもりだから安心してね。」

耕作「まあ、君の速さに付いてこれないだろうから心配はして無いよ。」

耕作「恐らく、皆、驚きと感心を抱くんじゃないかって思う。」

柔「そこまで真剣にはしないつもりだけど~。」

柔「もし真剣になって我を忘れてそうだったら声を掛けて注意してね。」

耕作「分かった、そこら辺は注意して見ておくから。」

柔「その前に皆の技量をもう少し見極めたいから、やりたい事も有るんだけどね。」

耕作「何をするつもり?」

柔「安心して?あたしと少しの間対峙して貰うだけだから。」

耕作「あ~、ジョディー達みたいに簡単に攻めてこないかどうかで判断するつもりだね。」

柔「そうそう、あたしと試合した時にジョディー達が直ぐに仕掛けて来なかったから、
  部員の皆もそうするかどうかで技量も或る程度は分かるんじゃない?」

耕作「もし攻めてきたらどうするつもり?」

柔「その時は足技で直ぐに倒すから。」

耕作「そこまで考えてるなら、君の判断に任せるよ。」

柔「もう、あたし一人の体じゃ無いのが分かってるから。」

柔「あなたには事前に知っておいて貰わないとね。」

耕作「教えてくれて、ありがとね。」

耕作「柔道に関しては、やっぱり君に任せておいて安心だって再確認出来たよ。」

耕作「他にはどうするつもりでいるの?」

柔「昨日見た限りだと、寝技をもう少し鍛えないと駄目かな~。」

耕作「あ~、確かに、それは俺も見てて思ったよ。」

耕作「西海大の部員と寝技になった時に押され気味だったんだよな~。」

柔「後、もう少し速さを上げる様にしたいかな。」

耕作「それに付いてはトレーニングとか打込で上げさせるつもりなんだよね?」

柔「さすが、あたし専属のコーチだけ有るわね~、良く分かってらっしゃるわ~。」

耕作「おいおい、それ、間違っても鶴亀の部員達の前では絶対に言わないでよ。」

柔「やだな~、あたし専属のコーチを取られる様な真似をする訳無いじゃないの~。」

耕作「はぁ~・・、君にとっては、俺は既にコーチなんだな。」

柔「そうだよ?以前からそう思ってたもん。」

柔「ここまでハッキリと口に出して言ったのは今日が初めてかな。」

柔「以前、ジョディー達が言ってた時も余りその事は言わなかったと思うよ。」

耕作「そう言われてみればそうだったか。」

耕作「まあ、今は夫婦でも有るし、公私共にコーチとして自覚する様にしないといけない
    時期かもしれないね。」

柔「うふふ、漸くあたしの専属コーチだって事を認めてくれたのね~。」

柔「これからもよろしくね~、あなた~。」

耕作「ああ、こちらこそよろしく頼むよ、出来る限りの事はするつもりだから。」

柔「ね~、あなた~?」

耕作「何だい?」

柔「あたしの専属コーチとしてやって貰いたい事が有るんだけど~。」

耕作「どんな事をやれば良いんだい?」

柔「あのね?あたしの専属コーチは勿論の事なんだけど。」

柔「これから先、鶴亀の部員達のコーチもお願いしたいの、駄目かな?」

耕作「俺が鶴亀の部員達のコーチ?」

柔「あっ、何も積極的に指導してとかじゃなくて、何か聞かれた時のアドバイスをして欲しいの。」

耕作「なるほど、そう言う事か。」

耕作「それ位なら何時でも応じるから、ただ、皆が聞いてくるかどうかだけど。」

柔「うふふ、そこは大丈夫よ?」

耕作「もしかして・・。」

柔「ごめんね~、今迄の柔道の試合であなたがどういった事をあたしにアドバイスしてくれたのかを
  話しちゃった。」

耕作「そうだったのか~。」

耕作「道理で今日俺が行った時に初めてにも拘らず親しげな雰囲気が有ったのはその所為か。」

耕作「まあ、話してしまった事を咎めるつもりは無いから。」

柔「ほんとにごめんね~。」

耕作「いや、そこまで謝らなくて良いよ。」

耕作「どうせ流れ的に皆にアドバイス位はするつもりだったし。」

柔「ありがとう~、お願いね~。」

耕作「ほんと、君って俺に物事を頼む時は既に周りを固めてる事が多い気がするよ。」

柔「え~、あたし、そんな事まで考えて行動して無いよ?」

耕作「これも無意識のなせる業なのか・・、恐るべし。」

柔「無意識でやってたのかな?」

耕作「こうすればこうなるって考えてやって無いのは事実だと思うよ、今迄の事も含めてだけど。」

柔「先の事を考えずにやってたのは以前からだったけど。」

耕作「以前の場合だと無鉄砲過ぎたのは有るかもね。」

耕作「その所為で周りがかなり迷惑な状況になってたと思うよ。」

柔「それは・・、そうだったのよね、反省してるから今はしない様に心掛けてる。」

耕作「その一つが俺に何でも話してくれてる事だね。」

柔「そうね、あなたにお話した時点で少し冷静になるから判断が的確になってるかも。」

耕作「元々、君の判断は間違って無かったと思うよ。」

柔「そうなの?」

耕作「結果として周囲を巻き込んでたのはいけない事では有ったけど。」

柔「そうだったのよね~。」

耕作「でも、君が決断した事自体は間違って無かったでしょう?」

耕作「短大に行った事もそうだし、鶴亀に行った事もそうじゃない?」

柔「あなたはそれが正解だったって思ってくれてるのね。」

耕作「結果から判断すると大正解だと思ってるよ。」

柔「どういった結果でそう思うの?」

耕作「短大に関しては富士子さんって言う大親友が出来た事が一番かな。」

耕作「鶴亀に関して言えば、君のやりたい事をやらせてくれてるからね。」

柔「なるほど、そう言われてみれば全部そうだね。」

柔「だから、あたしの判断は間違って無かったって言えるのね。」

耕作「その通りだよ。」

耕作「今でも君の判断は間違って無い。」

耕作「更に言えば、今の君の行動は周囲に迷惑を掛けて無いどころか、間違いなく周囲を幸せに
    していってると思うんだよね。」

柔「そうなのかな?」

耕作「思い出してごらん?俺達が一緒になった後に迷惑を被った人は居ないはずだよ。」

耕作「それどころか、君が意図するしないに拘わらず幸せになった人って居るんじゃない?」

柔「う~ん・・、確かに、迷惑を掛けた人は居ない気がするかも。」

柔「幸せになった人ってカップルになった人達?」

耕作「それだけじゃないよ?」

耕作「柔道に関して考えれば直ぐ分かるはずだけど。」

柔「あ~、あたしが教えた人達全員って事なのね。」

耕作「そう言う事だよ。」

耕作「皆、君に教えられて柔道が楽しくなると伴に強くなったのは間違いない事実だし。」

柔「そうだったのね~。」

柔「確かに、あたしはやってる最中もそんな事までは考えて無かったかも。」

耕作「そこが君の良さだと思うよ。」

柔「うふ、あなたに認められて嬉しいな~。」

耕作「だから、これからも君らしく居て欲しいんだよ。」

柔「以前も同じ事を言ってたね、あなたは。」

耕作「まあ、今話した事が分かったのは最近なんだけどね。」

柔「そうなんだ。」

柔「でも、あなたに先見の明が有ったって事なのかな?」

耕作「いや~、俺にそこまでの才能が有るとは思えないだけど。」

柔「そんな事は無いと思うよ?」

耕作「どうしてそう思うんだい?」

柔「だって、あたしを見出してくれたじゃない?」

柔「それにあたしを好きになってくれて、こうして一緒になってくれたでしょう?」

柔「この結果をもってしても先見の明が無いとは言わないと思うよ。」

耕作「君はそう思ってくれてるなら、そうなんだろうな。」

耕作「俺も君に認められて嬉しいよ。」

柔「あなたに喜んで貰えて、あたしも嬉しいな~。」

柔「ね~、あなた~?」

耕作「何だい?」

柔「さっきの専属コーチのお話なんだけど~。」

耕作「それがどうかしたの?」

柔「何でそう思ったかって言うのは、他にも理由が有るのよね~。」

耕作「他にってどんな理由が有るの?」

柔「人前では言えない理由なんだけど~。」

耕作「人前で言えないね~・・。」

耕作「まさかとは思うけど、夜の事を言ってるのかな?」

柔「そうなんだけど、やっぱり、あたしって変かな?」

耕作「君が変かどうかはさて置いて、何でその事でコーチって思ったの?」

柔「だって~、あなたに色々と教えて貰ったし~、指導もして貰ってたじゃない?」

耕作「いや、あれは2人とも知らなかったんだから当然だと思うんだけど。」

柔「じゃあ、あたし達以外の人も知らなかったら同じ様にするって事?」

耕作「さすがに丸っきり同じ事をするとは思えないけど、似た様な事はするんじゃないかな。」

柔「そうなの?」

耕作「さすがにお互いに何も知らないのにいきなりとかは無いと思うよ。」

柔「それはそうだけど・・。」

耕作「俺は君を大切に思ってたから、お互いを良く知ってからって思ってたし。」

柔「あたしもあなたの事は大切に思ってたよ。」

柔「だから、全てをあなたに委ねたんだもん。」

柔「でも、その後の事よ?あたしと一緒になって色々やったじゃない?」

耕作「君が色々知りたいって言ったから教えただけだったと思うけど。」

柔「でしょう?その事をあたしはあなたにコーチされてるって思ってたのよね~。」

耕作「なるほど、君はそう受け取ってたのか。」

柔「やっぱり変かな?」

耕作「いや、変じゃ無いよ、俺も君に教えてるのは自覚してたから。」

耕作「今の話を聞いて、俺の事をコーチって思った理由の一つになったのも理解出来たよ。」

柔「分かってくれたの?」

耕作「勿論さ、君がそう思うのも無理ないって分かった。」

柔「良かった~、あなたに分かって貰えて。」

柔「あっ、だから今夜がどうとかは無いからね?」

耕作「ふふ、それも分かってるよ、君もその気はないでしょう?」

柔「うふ、あなたもそうなのね。」

耕作「今日から新たに今までと違う生活習慣が始まったばかりだから。」

耕作「まずは、それに慣れる方が先決だと思うよ。」

柔「うん、あたしもそう思ってる。」

柔「でも、あなたにあたしが思ってる事をお話して良かったよ。」

耕作「俺も君から今の話を聞いて、これからは君の自主性に任せようかって思った。」

柔「え~、あたし殆ど知らないのよ~。」

耕作「嘘だよ、君が積極的になる方が俺としては怖いかも。」

柔「もう~、あなたったら~。」

柔「うん?どうして、あたしが積極的なったら怖いの?」

耕作「あ、いや、余り深く考えなくて良いから。」

柔「ね~、どうして~?」

耕作「困ったな~、どう説明したら納得してくれるのか。」

柔「あたしが積極的になる事はいけない事?」

耕作「そんな事は無いけど、君も真面ではいられなくなるって以前話さなかったっけ?」

柔「何か、聞いた気がする・・。」

耕作「腰が抜けても知らないよ?」

柔「あ~、それだ~。」

柔「って事は、あなたもなる可能性が有るから怖いって言ったの?」

耕作「そうそう、その通りだよ、2人ともなったら大変でしょう?」

柔「そうよね~、2人とも動けなくなったら、おかあさんにも迷惑かけちゃうし。」

耕作「そう言う事だよ、だから何事も程々が良いんだって。」

柔「そうだよね、適度が一番だね~。」

耕作「どれ、話も一段落ついた感じだし、下に下りようか?」

柔「そうね、おかあさんにも色々お話したい事も有るから。」

耕作「なるほど、じゃあ、下りようか。」

柔「は~い。」

2人はベッドから立ち上がると耕作はポットを持ち柔は急須とカップ2つを持って
一緒に寄り添って下に下りて行った。