Twitter @SilverSolWizard より 2019年1月21日 1:36



ある日、会社の玄関口の軒下に燕が巣を作った。そして、燕のつがいは数匹の雛をもうけた。私は出社、退社する度そっと見守っていた。

私が夜勤の時、帰宅しようとした同僚が玄関口の軒下に蛇がよじ登っているのを発見した。私と数人の同僚が駆けつけた時、雛の一羽が蛇に半分呑まれていた。


私はそのおぞましい光景にただ、立ち尽くすしかなかった。為す術もなかった。一人の同僚が、近くにあった傘で蛇を叩き落とそうとしたが、高くて中々狙いが定まらない。ジャンプして蛇を叩き落としたが、雛達の巣まで落としてしまった。雛も落ちてしまった。巣には四羽の雛がいた。


一羽は蛇に呑まれた時の傷で、もう一羽は巣から落ちる糞を受けるために設けていたバケツの水に落ち亡くなってしまった。一羽は地面に落ち、一羽は、崩れた巣にぶらさがっていた。もう一人の同僚がその雛を救ってくれた。私は慌てて、雛を保護するための籠か、箱がないかと会社内を探した。


戻ってきた時、蛇は退治され、微かに動く雛が二羽いた。私はすぐに巣の欠片と共に雛を籠に移した。その後、同僚と話をし、親鳥が何とかしてくれないか、微かな希望を託し、巣のあった横の自販機の上にその籠をおいた。

夜勤が明け、朝様子を見ると、一羽は残念ながら力尽きていた。


そこへ私の上司が出社してきた。私は事情を話して、最後の一羽を私が引き取り、命を繋げたい旨を願い出た。

上司は、『野生の生き物を育てるのは難しいよ』と、言ったが、私は『やれるだけやってみます』と言い、無理を願い出て、上司も、頑張ってと、了解してくれた。


私は籠をさらに大きな箱に入れ、車の助手席に乗せ、家路へと車を走らせた。

運転中、私は涙が止まらなかった。何とかこの子を救いたい。小さな命が、私の手にかかっている。その責任の大きさに潰されそうだった。

家に着いた私は、家族に事情を説明して、協力を仰いだ。


まずは何か食べさせないとと考えたが、どうすればいいのか分からなかった。

そこに母が小さな注射器を持ってきて、子猫の離乳食を詰めて雛に食べさせた。

雛は力弱く食べていたが、与え続けている内に元気を取り戻してくれているようだった。

私はその雛に『ヒナ』と名前を付けた。


その夜、少し肌寒い夜だった。私が眠りに就くまではヒナは元気だった。

翌朝、目覚めた時、ヒナは冷たくなっていた。

結局、私はヒナを救えなかった。

ひとしきり泣いた私は先に兄弟を埋めたお墓の横にヒナを埋葬した。

この世界は残酷だ。ハッピーエンドじゃない事も多い。


ヒナを救いたい想いも私のエゴだったのかもしれない。今でもヒナを想うと涙がでる。亡くした哀しみもだが、無力な私が悔しかったりもする。

空に飛ぶ鳥が、空を羽ばたけるのは当たり前じゃないのだと。

飛べない鳥もいるのだと。

そんな悲しい物語の中に少しの優しさを灯すことが出来たのかな。。。