彼はO型だった。
私より3歳年上で、スーツを着て仕事に行く人だった。
通っていた高校や大学の影響で、私にはわりと個性的な友達が多い。
B型やAB型が圧倒的に多いのだ。
我が家の娘もB型。
自分や元ダンナも含めて、スーツを着て働くような仕事に就いている友達は少なかった。
だからなのか…
初めて会った時の、彼のスーツ姿に異常にドキドキしたのは。。
私は、血液型の性格診断をわりとそのまま受け入れるタイプだ。
O型の男の人には、あまり出会ったことがなかった。
イメージ的には、大雑把でおおらかな性格…
彼は、少し違っていたように思う。
まず、自信家。
自分に自信がなきゃ、自撮りの写メなんて送信しないはずだから。
発言も自信たっぷりなものが多かった。
ま、そこが大人でいいなぁ…と思ってしまった私がいるのだが。
次に、ワガママ。
大雑把なO型さんのイメージをもっていたから、わりと適当になんでもOKなのかな、なんて思っていた。
けれども、ホテルとか旅館とか汚いのは許せないらしい。
あと、プールの更衣室の床のヌルヌル…笑
でもその他は汚れていても散らかっていても気にならないらしい。
一部のこだわりを主張するのは、子どもっぽくてワガママだ。
あ、思い出した。
彼の奥さんは、ズボラ人間らしい。
掃除もたまにしかしない、料理も下手。
朝ご飯は作ったことがないそうだ。パンのみ。
我が家の子ども達と同じ年代の子がいるのに、ちょっとかわいそうだなぁ、と思ったことがある。
不倫男が言うことだから、どこまでが本当かは分からないけど。
そんな家庭で生活しているから、その他の汚れは気にならなかったのか…
あとは、意外と几帳面だった。
脱いだ服はそのままだったが、外した時計や眼鏡は、いつも几帳面にテーブルの上に置いていた。
体調管理も几帳面に気にしていたみたいだし。
花粉症と風邪予防と変装のために、いつもマスクをしていたし、カバンの中にはいつも、龍角散のど飴と、喉ぬ〜るスプレーが入っていた。
龍角散のど飴と、喉ぬ〜るスプレーのコンビは、私と共通の必須アイテムだったのだけど…
こうして私はたまに、彼を細かく思い出す。
とてつもなく寂しい気持ちになるのだけれど、彼を忘れるわけにはいかない。
なぜなら彼は、お腹の子の父親だから…
生まれてくる前から父親がいないこの子が、少しずつ成長して、もし、パパのことを聞いてきたら、私は隠さずに伝えるつもりだ。
どんな顔のパパなのか、どんな声のパパなのか、どんな人だったのか。
こういうことになってしまったけれど、お腹の子に罪はない。
だから私は、彼のことを悪く言うつもりは一切ない。
自分で選んだ道だから、弱音は吐けない。
けれどもたまに、こうして彼を細かく思い出す。
もう会うこともないであろう彼のことを。
彼の匂い…
彼の感触…
私が知っている彼の全てを…
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