Silver laboratory

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CRAZYのSilver laboratoryへようこそ★
ここはCRAZYの趣味を中心に、日々の生活の中で感じた事を書きつづるブログでございます。
なるべく趣味の話を活かしていきたいと考えてますが、基本はくだらない日記になると思いますので、その辺を含めて楽しんでってくださーい!

Amebaでブログを始めよう!

さぁさぁ、、こちらのブログに日記を書くのはだいぶ久々になってしまいましたねぇ~。



去年も色々ありましたが一応、生きてますよw



まぁ、2013年はコチラにもちょこちょこ日記を書けたらなぁと思いますので、ヨロシクです(`・ω・´)ゞ



それではCRAZYが年末年始で行ってきました、台北旅行について書いていきたいと思います~(*´∀`*)


台北は福岡空港からわずか2時間くらいで着く、非常に身近な海外でした!


沖縄までが1時間45分くらいなのでほぼ沖縄に行く感じで海外でしたねぇ。


って、地図上で沖縄の左下って感じですから、当然っちゃー当然かw


空港はめっちゃめちゃ綺麗で意外にも広かったですねぇ~。。


空港から市内へはタクシーやバスで1時間と言ったところでしょうか、無事に着き、そのままホテルにチェックイン!


順調な旅の幕開けでしたっ♪w


そして街中に出てさっそく目に付いたのが・・・


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ダイソーって言うねwwwww


台北でもダイソー!!


やっぱ百均は人気でしたし、中にある商品のほとんどは日本語でかかれているものばかりでしたよw


そりゃ台湾の人も日本語に強くなるよねwww


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これが台北のマクドナルド!!www


台北市内はコンビニだらけで日本にも馴染み深いセブンイレブンもたくさん目にありましたね~。


日本でも贔屓目にしているこのコンビニもありました・・


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全家!!!!!!ワロタwwww


市内を少し歩きまわった後は台北名物の夜市・・「士林市場(シーリンイチバ)」に行ってきました!


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夜市は出店が所狭しと並び、その雰囲気や熱気は凄まじいものがありました。


出店も、飲食系、雑貨系、服飾系、遊戯系と様々な屋台があり人でにぎわってましたねぇ~。


CRAZYらも食べ物を食べたり、射的やスマートボールなどを楽しんだのですが、その中でも一番楽しかったのが、こちらのエビ釣り!


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プールの中には手長エビがたくさんおり、ヨーヨーすくいで使うような水につかると切れやすくなる針付きの仕掛けでエビを引っ掛けて釣るのですが、何がすごいって、これ、釣ったあとそのエビをその場で焼いてくれるんですよ!www


最後はエビ焼きとしてGETできるので、皆さん躍起になって釣ってましたねぇ~(*´ω`*)


ちなみにCRAZYらは手馴れた動きで竿3本でエビ7匹と言う好成績でお店を後にしましたw


そうそう、最初に食べたものは、このビーフンでした!


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夜遅くまで夜市で遊んだ後は、小腹を満たす為に台北と言ったら・・・・・


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ハイ、キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!!!


しょーーーろんーーーーぽぅぅぅぅーーーー!!!!!


もうね、、、堪りませんでしたよ・・・(*´д`*)激ウマー


小龍包の中には肉汁が外から見てもわかるくらい入っており、それをレンゲに入れ、、、すすり・・・・ああああ、思い出しただけでもよだれが出そうですわwwww


日本では食べた事が無いくらい美味しい小龍包でしたよ。。


これでいて、物価が日本の3分の1なので、確か400円もかかりませんでしたw


思わずここは天国かと思いましたねwwww


2日目は年始のカウントダウンの下見がてら台北101と言う高層ビルを見に行きました。


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形が印象的な高層ビルでした。これがあんな事になっちゃうなんて・・・・・(笑)


そのふもとにあったこれまた台北で有名な飲み物と言ったら・・・


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ハイコレ、タピオカ入ドリンク!!!!


これ、カエルの卵を想像しながら飲むと楽しいですよね~(・∀・)ニヤニヤ


うん、、これ言ったら嫁様から「しゃべるな!!!!」って言われましたよwwwwww


あと街中で見かけた猫がまるで牛のようやったので激写っ☆w


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つぶらな瞳でガン見されましたけどねwwww


2日目のお昼はこの有名店で食べました!


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このお店、「金鶏園」と言うお店でして、台湾で美味しい小龍包のお店で調べたらよく出てくるお店なのです!


店内にも日本語の取材のポスターが貼ってあったり、日本語メニューなどがあり、とても親切な感じです。


ちなみに若き日の藤井隆の訪問記事があり、藤井君の若さと何やってんねんと言う状況でひと笑いがありましたねーww


勿論食べたのは、、、


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ハーーーイ、、またまた登場、小ーーー龍ーーー包ーーー!!!!!!


昨日食べた小龍包とまた味が違って、このお店はかなり濃い味付けで作者好みでしたねぇ~(*´∀`*)


本当、小龍包はいくらでもお腹に入ってしまう感じで、こちらの味とは別にカニミソ入の小龍包も食べちゃいましたw


そして、金鶏園に行ったら小龍包以外にお薦めなのが、コチラの・・・・・


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エビ入お粥でございますっ!!


これが優しい味でお腹に染み渡り、濃い目の小龍包に対し非常に良い塩梅でしたねぇ~(*´д`*)ウマー


嗚呼、こんな時間に小龍包やお粥の画像見てたらめっちゃお腹空いてきましたよwwww


上記以外にもどの料理も美味しそうだったので、是非ともまた行って他の料理も食べたいと思います!


さて、、この後はこの旅行のメインイベントの年始のカウントダウンがございます。


続きは後編として気分が乗った時にでもまた書きたいと思いますので、乞うご期待をッッ!!w


つぁいちぇーーーん!!!!!ww

ブルーアステール

こちらが先日作者が挙式を行ったチャペル、『ブルーアステール』でございます(*´∀`*)


このチャペルの景色に一目惚れして、どちらかと言うと、CARZYの方からこの式場にしたい!!とプッシュした感じになりましたもんねぇ~(苦笑)


なんか、式を挙げるなら海の見える式場でどうしても挙げたかったんですよっ!!


あ・・・ここで、「乙女かっっ!!!!」って言うツッコミはご遠慮ください(笑)


ちなみに中はこんな感じになっております。。


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ちょっと澄ましてますが、ご愛嬌って事で許してくださいな(*´∀`*)ゞエヘヘ


まぁ、完全に馬子にも衣装ですよねwww


ただ、こう見ると少しは紳士っぽく見えますかねぇ?w


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チャペルの中から外の景色はこんな感じに海が見えるんです。


まぁ新郎にも関わらず一眼レフ片手にめっちゃ写真撮りまくってましたがねwww


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そしてチャペルの外見通りに天井は三角錐状になっているんですが、日差しが強くなると中はけっこう蒸し暑かったです。。


そして、チャペルの横にはパーティールームも併設していたので、式の後には両家交えてのレセプションパーティを行いました♪


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パーティ会場はこんな感じに飾りつけしてもらいました★


そして日も暮れ始めたので、こっそり外に出て写した渾身の写真がコチラっ!!


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どうです?!


まるで宣材写真みたいじゃないですか??


この写真が撮れてめっちゃめちゃ満足してパーティに戻ったのは言うまでもありませんけどねっ!!(爆)


そんなこんなで、チャペルのご紹介だったのですが、いかがでしょうか?


もし、皆様の中でこのチャペルで挙げたいと言う方がおりましたら、是非とも言ってくださいねー。


僭越ながらアドバイスなど致しますよ~(*´∀`*)ノ


って、なんかウェディング会社の営業マンみたくなってしまいましたが、景色も綺麗ですし、グアムも最高だったので個人的にはめっちゃめちゃお薦めの式場になります♪

さて、、最近怖い話しばかり載せておりましたが、今回はプライベート日記を久々に書いちゃいました!!


それではグアム旅行後記を画像と共にお楽しみくださーいヽ(*・ω・)ノ


まずはコチラがホテルからの景色になります(*´∀`*)

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いかがでしょうか??


朝日がホテルの背側から昇っておるので上手い具合に影が良い感じに写っておりますよねー。


あ、グアムは飛行機で3時間半程度のフライトだったので、着いた瞬間は余り海外の気分がなかったのですが、入国審査?検査?に大量の人が並んでおり、1時間半くらいかかり、近いと言えどここは海外なんだなーと待ちぼうけをしながらしみじみ思いましたねぇ~(・ω・`;)


基本、ホテルでの食事は付いていなかったので、現地のコンビニ(ABCストアーやサークルK)で買ったり、外食だったのですが、時期が違ったのか想像してた程日本語が通じなかったのがグアムの正直な感想です!


ただ、カタコト日本語は非常によく耳にしたので、その辺を考えると、やはり日本語の通じる外国ってイメージでも間違いではないかもしれませんけどねー(笑)


さて、次の画像は釣り!!!


お父様がトローリングでのルアーフィッシングに連れて行ってくれたのです(*´ω`*)


開始1時間くらいは特に何もHITせずに若干ただのクルージングでしたが、あるポイントからHITが出始め、一緒に行ったメンバー全員が釣れましたからねぇ~。


ちなみ釣れたのはサワラだったんですけど、めっちゃめちゃ引きましたし、最高に楽しかったですよっ♪

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そして、グアムに行く事が決まってから、密かにめーーーーーっちゃめちゃ楽しみにしてた、「とある事」があるんですよ・・・フフフフフ


なんだかお判りになりますか??


正解は・・・・


そう、、














DEATH★www

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いやー、、過去にハワイとアトランタで撃った事はあるんですが、やっぱたまらんのですよー(*´д`*)


あの手への衝撃と言うか、ガスガンですら好きな自分なので、興奮度合いも半端ないんですwww



フフ、なんせ結局3日とも別のお店ですが毎日撃ちゃってましたしねー(*´∀`*)HAHAHAHAHA(笑)


ちょっとマニアックな話しになりますが3日合わせて、38口径リボルバー、44口径マグナム、45口径ガバメント、デザートイーグル、ショットガンを撃たせて頂きました。


45口径ガバメントでも相当の衝撃があり、ほぉ~~と思っていたのですが、デザートイーグルは別格でしたね・・。


文字で表記するとしたら『ズガァァーーンン』と言うような爆音と共に手にくる衝撃もめっちゃヤバかったです!


更にショットガンなんて、映画ターミネーター2でサラ・コナーが片手で撃ってたの思い出し、そこまでたいしたことないんじゃないかなーとか思って1発だけ撃ったんですが、撃った瞬間にその反動で自分の体が後ろへぶっ飛びましたもん(((( ;゚д゚)))wwwなめてて本当にごめんなさいwww


そんな感じで終始テンションも高く実銃射撃を楽しみました♪


あ、CRAZYの撃った的は記念にもらってきたので、また後日でも画像を載せますね!

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そして海外、特にアメリカと言ったら、コチラ!!


ハ  ン  バ  ー  ガ  ー  ★


様々な美味しそうなハンバーガーを見かけたのですが、ハードロックカフェのをチョイスいたしましたー(*´ω`*)


サイズ感も申し分なくアメリカンサイズなんですが、味は大味ではなくしっかりとしておりめっちゃ美味しかったですねー!!


景色、アクティビティ、食べ物、そのどれをとってもグアムは本当に最っっ高でしたぁぁーー!!!!


兼ねてから行きたかった場所だったので、それも重なり感慨深いものがありましたねぇ~(´;ω;`)



あ、、それはそうと、とりあえず皆様・・・

アナスイ

↑この画像を補足しますとジョジョの奇妙な冒険第6部のキャラ、「アナスイ」の有名なシーンなんです。


この後にこう続くのですよ・・・



『祝福しろ 結婚には それが必要だ』



・・・うん。


まぁ、と言う訳で、この度ワタクシ・・


グアムで挙式してきました(`・ω・´)ゞ

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そんなこんなで結婚しても中身は変らぬままですので、皆様これからも宜しくお願いしまーす!!wwww


皆様こんばんわ、朝晩共に肌寒くなり、だいぶ秋らしくなってきましたネェ。。



徐々に冬が近づくにより夜も長くなるものです。



そんな夜長にもってこいの長編話を今日はご用意致しました!



ではでは、、【姦姦蛇螺】をお楽しみくださいな・・・(Φ∀Φ* )フフフフ





小中学の頃、俺は田舎者で世間知らずで、特に仲の良かったA、Bと三人で毎日バカやって荒れた生活をしていた。


俺とAは、家族にもまるっきり見放されていたのだが、Bのお母さんだけは、Bを必ず構ってくれていた。あくまで厳しい態度ではあったけれど、何だかんだ言ってBのために色々と動いてくれていた。


中三のある時、そんなBとお母さんが、かなりキツい喧嘩になったことを知った。詳しい内容は言わなかったものの、精神的にお母さんを痛め付けたらしい。


お母さんをズタボロに傷つけていたころ、親父が帰ってきた。一目で状況を察した親父は、Bを無視して黙ったままお母さんに近づいていった。


服や髪がボロボロなうえに、死んだ魚のような目で床を茫然と見つめてるお母さんを見て、親父はBに話した。


B父「お前、ここまで人を踏み躙れるような人間になっちまったんだな。母さんがどれだけお前を想ってるか、なんでわからないんだ。」


親父はBを見ず、お母さんを抱き締めながら話していたそうだ。


B「うるせえよ。てめえは殺してやろうか?あ?」


Bは全く話を聞く気がなかった。


だが親父は何ら反応する様子もなく、淡々と話を続けたらしい。


B父「お前、自分には怖いものなんか何もないと、そう思ってるのか。」


B「ねえな。あるなら見せてもらいてえもんだぜ。」


親父は少し黙った後、話した。


B父「お前は俺の息子だ。母さんがお前をどれだけ心配しているのかも良く分かっている。だがな、お前が母さんに対してこうやって踏み躙る事しか出来ないのなら、俺にも考えがある。これは父としてでなく、一人の人間、他人として話す。先にはっきり言っておくが俺がこれを話すのは、お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ。それでいいなら聞け。」


Bは、その言葉に何か凄まじい気迫のようなものを感じたらしいが、「いいから話してみろ!」と煽った。


B父「森の中で立入禁止になっている場所があるのを知っているな。あそこに入って奥へ進んでみろ。後は行けばわかる。そこで今みたいに暴れてみろ。出来るもんならな。」


親父が言う森というのは、俺達が住んでいるところに小規模の山があって、そのふもとにある樹海みたいな場所だ。


山自体は普通に入れて、森全体も普通ではあるが、中に入っていくと、途中で立入禁止になってる区域がある。言ってみれば、四角の中に小さい円を書いて、その円の中には入るな、という状態だ。


2メートル近い高さの柵で囲まれ、柵には太い綱と有刺鉄線、柵全体にはが連なった白い紙がからまっていて(独自の紙垂のような)、大小いろいろな鈴が無数に付いている。変に部分的なせいで柵自体の並びも歪だし、とにかく尋常じゃないの一言に尽きる。


そして、特定の日に巫女さんが入り口に数人集まっているのを見かけることがあるが、その日は付近一帯が立入禁止になるため、何をしているのかは謎だった。


様々な噂が飛び交っていたが、カルト教団の洗脳施設があるという説が一番有力だった。そもそもその地点まで行くのが面倒なので、その奥まで行ったっという話はほとんどなかった。


親父はBの返事を待たずにお母さんを連れて2階に上がって行ったそうだ。Bはそのまま家を出て、待ち合わせていた俺とAと合流。そこで俺達もこの話を聞いた。


A「父親がそこまで言うなんて相当だな。」


俺「噂じゃカルト教団のアジトだっけ。捕まって洗脳されちまえって事かね。怖いっちゃ怖いが…どうすんだ?行くのか?」


B「行くに決まってんだろ。どうせ親父のハッタリだ。」



面白半分で俺とAもついて行くことになり、三人でそこへ向かった。あれこれ道具を用意して、時間は夜中の1時過ぎぐらいになっていた。


意気揚々と現場に到着し、持ってきた懐中電灯で前を照らしながら森へ入って行く。軽装でも進んで行けるような道だった。俺達はいつも地下足袋だったので歩きやすかったが、問題の地点へは40分近くは歩かないといけない。


ところが、入って5分もしないうちにおかしな事になった。


俺達が入って歩きだしたのとほぼ同じタイミングで、何か音が遠くから聞こえ始めた。夜の静けさがやたらとその音を強調させる。最初に気付いたのはBだった。


B「おい、何か聞こえねぇか?」


Bの言葉で耳をすませてみると、確かに聞こえた。落ち葉を引きずるカサカサ…という音と、枝がパキッ…パキッ…と折れる音。それが遠くの方から微かに聞こえてきている。


遠くから微かに…というせいもあって、さほど恐怖は感じなかった。人って考える前に動物ぐらいいるだろ、そんな思いもあり構わず進んでいった。
動物だと考えてから気にしなくなったが、そのまま20分ぐらい進んできたところで、またBが何かに気付き、俺とAの足を止めた。


B「A、お前だけちょっと歩いてみてくれ。」


A「?…何でだよ。」


B「いいから早く!」


Aが不思議そうに一人で前へ歩いていき、またこっちへ戻ってくる。それを見て、Bは考え込むような表情になった。


A「おい、何なんだよ?」


俺「説明しろ!」


俺達がそう言うと、Bは「静かにしてよ~く聞いててみ」と、Aにさせたように一人で前へ歩いていき、またこっちに戻ってきた。二、三度繰り返してようやく俺達も気が付いた。


遠くから微かに聞こえてきている音は、俺達の動きに合わせていた。俺達が歩きだせばその音も歩きだし、俺達が立ち止まると音も止まる。まるでこっちの様子がわかっているようだった。


何かひんやりした空気を感じずにはいられなかった。


周囲に俺達が持つ以外の光はない。月は出てるが、木々に遮られほとんど意味はなかった。懐中電灯を点けているので、こちらの位置が分かるのも不思議ではない。しかし一緒に歩いてる俺達でさえ、互いの姿を確認するのに目を凝らさなければならない暗さだ。


そんな暗闇の中で、光もなしに何をしている?なぜ俺達と同じように動いているんだ?


B「ふざけんなよ。誰か俺達を尾けてやがんのか?」


A「近づかれてる気配はないよな。向こうはさっきからずっと同じぐらいの位置だし。」


Aが言うように森に入ってからここまでの20分ほど、俺達と、その音との距離は一向に変わっていなかった。近づいてくるわけでも遠ざかるわけでもない。終始、同じ距離を保ったままだった。


俺「監視されてんのかな?」


A「そんな感じだよな…カルト教団とかなら何か変な装置とか持ってそうだしよ。」


音から察すると、複数ではなく一人がずっと俺達にくっついてるような感じだった。しばらく足を止めて考え、下手に正体を探ろうとするのは危険と判断し、一応あたりを警戒しつつそのまま先へ進む事にした。


それからずっと音に付きまとわれながら進んでいたが、やっと柵が見えてくると、音などどうでもよくなっていた。音以上に、その柵の様子の方が意味不明だったからだ。


三人とも見るのは初めてだったが、想像以上のものだった。同時にそれまでなかったある考えが頭に過ぎった。


普段は霊などバカにしてる俺達から見ても、その先にあるのが現実的なものでない事を示唆しているとしか思えない。それも半端じゃなくやばいものが。


まさか、“そういう意味”で、いわくつきの場所なのか。森へ入ってから初めて、今俺達はやばい場所にいるんじゃないかと思い始めた。


A「おい、これぶち破って奥行けってのか?誰が見ても普通じゃねえだろこれ!」


B「うるせえな、こんなんでビビってんじゃねえよ!」


柵の異常な様子に怯んでいた俺とAを怒鳴り、Bは持ってきた道具あれこれで柵をぶち壊し始めた。破壊音よりも、鳴り響く無数の鈴の音が凄かった。


しかしここまでとは想像してなかったため、持参した道具では貧弱すぎた。というか、不自然なほどに頑丈だった。特殊な素材でも使っているのではないかというくら、びくともしなかった。結局よじのぼるしかなくなってしまったが、綱のおかげで上ることは簡単だった。


だが柵を越えた途端、激しい違和感を覚えた。閉塞感のような、檻に閉じ込められたような息苦しさを感じた。AとBも同じだったようで、踏み出すのを躊躇していたが、柵を越えてしまったからには行くしかなかった。


先へ進むべく歩きだしてすぐに、三人とも気が付いた。ずっと付きまとってた音が、柵を越えてからパッタリ聞こえなくなった事に。正直そんなんもうどうでもいいとさえ思えるほど嫌な空気だったが、Aが放った言葉でさらに嫌な空気が増した。


A「もしかしてさぁ、そいつ…ずっとここにいたんじゃねえか?この柵、こっから見える分だけでも出入口みたいなのはないしさ、それで近付けなかったんじゃ…」


B「んなわけねえだろ。俺達が音の動きに気付いた場所ですらこっからじゃもう見えねえんだぞ?それなのに入った時点から俺達の様子がわかるわけねえだろ。」


普通に考えればBの言葉が正しかった。禁止区域と森の入り口はかなり離れている。時間にして40分ほどと書いたが、俺達だってちんたら歩いていたわけではないし、距離にしたらそれなりの数字にはなる。


だが、現実のものじゃないかもしれない…という考えが過ぎってしまった事で、Aの言葉を否定できなかった。柵を見てから絶対に“ヤバい”と感じ始めていた俺とAを尻目に、Bだけが俄然強気だった。


B「霊だか何だか知らねえけどよ、お前の言うとおりだとしたら、そいつはこの柵から出られねえって事だろ?そんなやつ大したことねえよ。」


そう言って奧へ進んでいった。


柵を越えてから2、30分歩き、うっすらと反対側の柵が見え始めたところで、不思議なものを見つけた。


特定の六本の木に注連縄(しめなわ)が張られ、その六本の木を六本の縄で括り、六角形の空間がつくられていた。柵にかかってるのとは別の、正式なものっぽい紙垂もかけられてた。そして、その中央に賽銭箱みたいなのがポツンと置いてあった。


目にした瞬間は、三人とも言葉が出なかった。特に俺とAは、マジでやばい事になってきたと焦ってさえいた。


バカな俺達でも、注連縄が通常どんな場で何のために用いられてるものか、何となくは知ってる。そういう意味でも、ここを立入禁止にしているのは、間違いなく目の前にある光景のためだ。俺達はとうとう、来るとこまで来てしまったわけだ。


俺「お前の親父が言ってたの、たぶんこれの事だろ。」


A「暴れるとか無理。明らかにやばいだろ。」


だが、Bは強気な姿勢を崩さなかった。


B「別に悪いもんとは限らねえだろ。とりあえずあの箱見て見ようぜ!宝でも入ってっかもな。」


Bは縄をくぐって六角形の中に入り、箱に近づいてった。俺とAは箱よりもBが何をしでかすかが不安だったが、とりあえずBに続いた。


野晒しで雨などにやられたせいか、箱はサビだらけだった。上部は蓋になっていて、網目で中が見える。だが、蓋の下にまた板が敷かれていて、結局中を見ることはできない。


さらに箱にはチョークか何かで模様のようなものが書いてあった。恐らく家紋ではないか。前後左右それぞれの面にいくつもの紋所みたいな模様が書き込まれていた。しかも全部違う模様で、同じものは見当たらなかった。


俺とAは極力触らないようにし、構わず触るBにも乱暴にはしないよう、注意しながら箱を調べてみた。


どうやら地面に底を直接固定してあるらしく、大して重くはないはずなのに持ち上がらなかった。中身をどうやって見るのかと隅々までチェックすると、後ろの面だけ外れるようになってるのに気付いた。


B「おっ、ここだけ外れるぞ!中見れるぜ!」


Bが箱の一面を取り外し、俺とAもBの後ろから中を覗き込んだ。


箱の中には四隅にペットボトルのような形の壺が置かれていて、その中には何か液体が入っていた。箱の中央に、先端が赤く塗られた五センチぐらいの楊枝みたいなものが、変な形で置かれていた。



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このような形で六本。接する四ヶ所だけ赤く塗られてる。


俺「なんだこれ?爪楊枝か?」


A「おい、ペットボトルみてえなの中に何か入ってるぜ。気持ちわりいな。」


B「ここまで来てペットボトルと爪楊枝かよ。意味わかんねえ。」


俺とAはぺットボトルのような壺を少し触ってみたぐらいだったが、Bは手に取って匂いを嗅いだりしていた。


Bは壺を元に戻すと、今度は爪楊枝を触ろうと手を伸ばす。


ところが、汗をかいていたのか指先に一瞬くっつき、そのせいで離すときに形がずれてしまった。



その瞬間。



チリンチリリン!!チリンチリン!!



俺達が来た方とは反対、六角形地点のさらに奧にうっすらと見えている柵の方から、物凄い勢いで鈴の音が鳴った。さすがに三人ともうわっと声を上げて、一斉に顔を見合わせた。


B「誰だちくしょう!ふざけんなよ!」


Bはその方向へ走りだした。


俺「バカ、そっち行くな!」


A「おいB!やばいって!」


慌てて後を追おうと身構えると、Bは突然立ち止まり、前方に懐中電灯を向けたまま動かなくなった。


「何だよ、フリかよ~」と俺とAがホッとして急いで近付いてくと、Bの体が小刻みに震えだした。


「お、おい、どうした…?」言いながら無意識に照らされた先を見た。



Bの懐中電灯は、立ち並ぶ木々の中の一本、その根元のあたりを照らしていた。



その陰から、女の顔がこちらを覗いていた。



ひょこっと顔半分だけ出して、眩しがる様子もなく俺達を眺めていた。


上下の歯をむき出しにするようにい~っと口を開け、目は据わっていた。




「うわぁぁぁぁぁ!!」




誰のものかわからない悲鳴と同時に、俺達は一斉に振り返り走りだした。頭は真っ白で、体が勝手に最善の行動をとったような感じだった。互いを見合わせる余裕もなく、それぞれが必死で柵へ向かった。


柵が見えると一気に飛び掛かり、急いでよじのぼる。上まで来たらまた一気に飛び降り、すぐに入り口へ戻ろうとした。


だが、混乱しているのかAが上手く柵を上れずなかなかこっちに来ない。


俺「A!早く!!」


B「おい!早くしろ!!」


Aを待ちながら、俺はどうすればいいのか分からなかった。


俺「何だよあれ!?何なんだよ!?」


B「知らねえよ黙れ!!」


完全にパニック状態だった。





その時





チリリン!!チリンチリン!!



凄まじい大音量で鈴の音が鳴り響き、柵が揺れだした。


「何だ…!?どこからだ…!?」


俺とBはパニック状態になりながらも周囲を確認した。


入り口とは逆、山へ向かう方角から鳴り響き、近づいているのか、音と柵の揺れがどんどん激しくなってくる。


俺「やばいやばい!」


B「まだかよ!早くしろ!!」


俺達の言葉が余計にAを混乱させていることを分かってはいたが、せかさないわけにはいかなかった。


Aは無我夢中に必死で柵をよじのぼった。



Aがようやく上りきろうというその時、俺とBの視線はそこにはなかった。がたがたと震え、体中から汗が噴き出し、声を出せなくなった。

それに気付いたAも、柵の上から俺達が見ている方向を向いた。


山への方角にずらっと続く柵を伝った先、しかもこっち側にあいつが張りついていた。


顔だけかと思ったそれは、裸で上半身のみ、右腕左腕が三本ずつあった。


それらで器用に綱と有刺鉄線を掴んで「い~っ」と口を開けたまま、巣を渡る蜘蛛のようにこちらへ向かってきていた。



とてつもない恐怖



「うわぁぁぁぁ!!」



Aがとっさに上から飛び降り、俺とBに倒れこんできた。それではっとした俺達は、すぐにAを起こし、一気に入り口へ走った。


後ろは見れない。前だけを見据え、必死で走った。


全力で走れば30分もかからないはずの道のりを、何時間も走ったような気がした。


入り口が見えてくると、何やら人影も見えた。おい、まさか…三人とも急停止し、息を呑んで人影を確認した。


誰だかわからないが何人か集まっている。


あいつじゃない。そう確認できた途端に再び走りだし、その人達の中に飛び込んだ。


「おい!出てきたぞ!」


「まさか…本当にあの柵の先に行ってたのか!?」


「おーい!急いで奥さんに知らせろ!」


集まっていた人達はざわざわとした様子で、俺達に駆け寄ってきた。何を話しかけられたのか、すぐには分からないほど、頭が真っ白で放心状態だった。


そのまま俺達は車に乗せられ、すでに三時をまわっていたにも関わらず、行事の時などに使われる集会所に連れていかれた。



中に入ると、うちは母親と姉貴が、Aは親父、Bはお母さんが来ていた。Bのお母さんはともかく、最近ろくに会話すらしていなかった、うちの母親まで泣いていた。Aもこの時の親父の表情は、普段見た事のないものだったらしい。


B母「みんな無事だったんだね…!よかった…!」


Bのお母さんとは違い、俺は母親に殴られAも親父に殴られた。だが、今まで聞いた事ない暖かい言葉をかけられた。


しばらくそれぞれが家族と接したところで、Bのお母さんが話した。


B母「ごめんなさい。今回の事はうちの主人、ひいては私の責任です。本当に申し訳ありませんでした…!本当に…」


Bのお母さんは、皆に何度も頭を下げた。よその家とはいえ、子供の前で親がそんな姿をさらしているのは、やはり嫌な気分だった。


A父「もういいだろう奥さん。こうしてみんな無事だったんだから。」


俺母「そうよ。あなたのせいじゃない。」


この後ほとんど親同士で話が進められ、俺達はぽかんとしてた。


時間も時間だったので、無事を確認しあって終わりという感じだった。この時は何の説明もないまま解散した。


一夜明けた次の日の昼頃、俺は姉貴に叩き起こされた。目を覚ますと、昨夜の続きかというぐらい姉貴の表情が強ばっていた。


俺「なんだよ?」


姉貴「Bのお母さんから電話。やばい事になってるよ。」


受話器を受け取り電話に出ると、凄い剣幕で叫んできた。


B母「Bが…Bがおかしいのよ!昨夜あそこで何したの!?柵の先へ行っただけじゃなかったの!?」


とても会話になるような雰囲気じゃなく、いったん電話を切って俺はBの家へ向かった。同じ電話を受けたらしく、Aも来ていて、二人でBのお母さんに話を聞いた。


話によると、Bは昨夜家に帰ってから急に両手両足が痛いと叫びだしたそうだ。痛くて動かせないという事なのか、両手両足をぴんと伸ばした状態で倒れ、その体勢で痛い痛いとのたうちまわったらしい。


お母さんが何とか対応しようとするも、いてぇよぉと叫ぶばかりで意味がわからない。どうにか部屋までは運べたが、ずっとそれが続いてるので、俺達はどうなのかと思い電話してきたという事だった。


話を聞いてすぐBの部屋へ向かうと、階段からでも叫んでいるのが聞こえた。「いてぇ!いてぇよぉ!」と繰り返している。


部屋に入ると、やはり手足はぴんと伸びたまま、のたうちまわっていた。


俺「おい!どうした!」


A「しっかりしろ!どうしたんだよ!」


俺達が呼び掛けてもいてぇよぉと叫ぶだけで目線すら合わせない。


どうなってんだ…俺とAは何が何だかさっぱりわからなかった。一度お母さんのとこに戻ると、さっきとはうってかわって静かな口調で聞かれた。


B母「あそこで何をしたのか話してちょうだい。それで全部わかるの。昨夜あそこで何をしたの?」


何を聞きたがっているのかは、もちろんわかっていたが、答えるためにあれをまた思い出さなかればならないことが苦痛となり、うまく伝えられなかった。


それよりも、“あれ”を見たっというのが大部分を占めてしまってたせいで、何をしたのかという部分がすっかり抜けてしまっていた。


「何を見たか」ではなく「何をしたか」と尋ねるBのお母さんは、それを指摘しているようだった。


Bのお母さんに言われ、俺達は何とか昨夜の事を思い出し、原因を探った。


何を見たか?なら、俺達も今のBと同じ目にあってるはず。だが何をしたか?でも、あれに対してほとんど同じ行動だったはずだ。箱だって俺達も触ったし、ペットボトルみたいなのも一応俺達も触わってる。




後は…




楊枝…




二人とも気が付いた。



楊枝だ。あれにはBしか触ってないし、形も崩してしまっている。しかも元に戻してない。俺達はそれをBのお母さんに伝えた。すると、みるみる表情が変わり震えだした。そしてすぐさま棚の引き出しから何かの紙を取出し、それを見ながらどこかに電話をかけた。俺とAは、その様子を見守るしかなかった。


しばらくどこかと電話で話した後、戻ってきたBのお母さんは震える声で俺達に言った。


B母「あちらに伺う形ならすぐにお会いしてくださるそうだから、今すぐ帰って用意しておいてちょうだい。あなた達のご両親には私から話しておくわ。何も言わなくても準備してくれると思うから。明後日またうちに来てちょうだい。」


意味不明だった。誰に会いに?どこへ行くって?説明を求めてもはぐらかされ、すぐに帰らされた。一応二人とも真っすぐ家に帰ってみると、何を聞かれるでもなく「必ず行ってきなさい」とだけ言われた。


意味がまったく分からないまま、二日後に俺とAは、Bのお母さんと三人で、ある場所へ向かった。Bは前日にすでに連れていかれたらしい。


ちょっと遠いのかな…ぐらいだと思っていたが、町どころか県さえ違う場所だった。


新幹線で数時間かけて、さらに駅から車で数時間。絵に書いたような深い山奥の村まで連れていかれた。


その村の、またさらに外れの方、ある屋敷に俺達は案内された。


大きく、古いお屋敷で、離れや蔵もある、物凄い立派なものだった。Bのお母さんが呼び鈴を鳴らすと、“おじさん”と女の子が俺達を出迎えた。


おじさんの方は、まさに“その筋”の人のようなガラの悪い感じで、スーツ姿だった。


女の子の方は、俺達より少し年上ぐらいで、白装束に赤い袴、いわゆる巫女さんの姿をしていた。


おじさんは、どうやら巫女さんの伯父らしく、普通によくある名字を名乗ったのだが、巫女さんは「あおいかんじょ(俺にはこう聞こえた)という、よくわからない名を名乗った。


名乗ると言っても、一般的な認識とは全く違うものらしい。よく分からないのだが、ようするに彼女の家の素性は一切知る事が出来ないって事のようだった。


実際、俺達はその家や彼女達について何も知らされていない。


だだっ広い座敷に案内され、訳も分からないまま、ものものしい雰囲気で話が始まった。


伯父「息子さんは今安静にさせてますわ。この子らが一緒にいた子ですか?」


B母「はい。この三人であの場所へ行ったようなんです。」


伯父「そうですか。君ら、わしらに話してもらえるか?どこに行った、何をした、何を見た、出来るだけ詳しくな。」


突然話を振られて戸惑ったが、俺とAは何とか詳しくその夜の出来事をおじさん達に話した。


ところが、楊枝のくだりで「コラ、今何つった?」といきなりドスの効いた声で言われ、俺達はますます状況が飲み込めず混乱してしまった。


A「は、はい?」


伯父「おめぇら、まさかあれを動かしたんじゃねえだろうな!?」


身を乗り出し今にも掴み掛かってきそうな勢いで怒鳴られた。


すると葵がそれを制止し、蚊の泣くようなか細い声で話しだした。


葵「箱の中央…小さな棒のようなものが、ある形を表すように置かれていたはずです。それに触れましたか?触れた事によって、少しでも形を変えてしまいましたか?」


俺「はぁあの、動かしてしまいました。形もずれちゃってたと思います。」


葵「形を変えてしまったのはどなたか、覚えてらっしゃいますか?触ったかどうかではありません。形を変えたかどうかです。」


俺とAは顔を見合わせ、Bだと告げた。


すると、おじさんは身を引いてため息をつき、Bのお母さんに言った。


伯父「お母さん、残念ですがね、息子さんはもうどうにもならんでしょう。わしは詳しく聞いてなかったが、あの症状なら他の原因も考えられる。まさかあれを動かしてたとは思わなかったんでね。」


B母「そんな…」


それ以上の言葉もあったのだろうが、Bのお母さんは言葉を飲み込んだような感じで、しばらく俯いてた。


口には出せなかったが、俺達も同じ気持ちだった。「Bはもうどうにもならん」てどういう意味なんだ。一体何の話をしているのか。そう問いたくても、声に出来なかった。


俺達三人の様子を見て、おじさんはため息混じりに話しだした。


ここでようやく、俺達が見たものに関する話がされた。



俗称は「生離蛇螺」「生離唾螺
古くは「姦姦蛇螺」「姦姦唾螺

なりじゃら、なりだら、かんかんじゃら、かんかんだらなど、知っている人の年代や家柄によって呼び方はいろいろあるらしい。


現在では一番多い呼び方は単に「だら」、おじさん達みたいな特殊な家柄では「かんかんだら」の呼び方が使われるらしい。


もはや神話や伝説に近い話。


人を食らう大蛇に悩まされていたある村の村人達は、神の子として様々な力を代々受け継いでいたある巫女の家に退治を依頼した。依頼を受けたその家は、特に力の強かった一人の巫女を大蛇討伐に向かわせる。


村人達が陰から見守る中、巫女は大蛇を退治すべく懸命に立ち向かった。しかし、わずかな隙をつかれ、大蛇に下半身を食われてしまった。それでも巫女は村人達を守ろうと様々な術を使い、必死で立ち向かった。


ところが、下半身を失っては勝ち目がないと決め込んだ村人達はあろう事か、巫女を生け贄にする代わりに村の安全を保障してほしいと大蛇に持ちかけた。


強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇はそれを承諾、食べやすいようにと村人達に腕を切り落とさせ、達磨状態の巫女を食らった。


そうして、村人達は一時の平穏を得た。


後になって、巫女の家の者が思案した計画だった事が明かされる。この時の巫女の家族は六人。異変はすぐに起きた。


大蛇がある日から姿を見せなくなり、襲うものがいなくなったはずの村で次々と人が死んでいった。


村の中で、山の中で、森の中で。


死んだ者達はみな、右腕・左腕のどちらかが無くなっていた。


十八人が死亡。(巫女の家族六人を含む)


生き残ったのは四人だった。



おじさんと葵が交互に説明した。


伯父「これがいつからどこで伝わってたのかはわからんが、あの箱は一定の周期で場所を移して供養されてきた。その時々によって、管理者は違う。箱に家紋みたいのがあったろ?ありゃ今まで供養の場所を提供してきた家々だ。うちみたいな家柄のもんでそれを審査する集まりがあってな、そこで決められてる。まれに自ら志願してくるバカもいるがな。」


さらにこう続けた


伯父「管理者以外にゃ“かんかんだら”に関する話は一切知らされない。付近の住民には、いわくがあるって事と万が一の時の相談先だけが管理者から伝えられる。伝える際には相談役、つまりわしらみたいな家柄のもんが立ち合うから、それだけでいわくの意味を理解するわけだ。今の相談役はうちじゃねえが、至急って事で昨日うちに連絡がまわってきた。」

どうやら、一昨日Bのお母さんが電話していたのは別の人らしいことが分かった。話を聞いた先方は、Bを連れてこの家を尋ね、話し合った結果こちらに任せたらしい。Bのお母さんは俺達があそこに行っていた間に、すでにそこに電話していて、ある程度詳細を聞かされていたようだ。


葵「基本的に、山もしくは森に移されます。御覧になられたと思いますが、六本の木と六本の縄は村人達を、六本の棒は巫女の家族を、四隅に置かれた壺は生き残られた四人を表しています。そして、六本の棒が成している形こそが、巫女を表しているのです。」


葵「なぜこのような形式がとられるようになったか。箱自体に関しましても、いつからあのようなものだったか。私の家を含め、今現在では伝わっている以上の詳細を知る者はいないでしょう。」


ただ、最も語られてる説としては、生き残った四人が巫女の家で怨念を鎮めるためのありとあらゆる事柄を調べ、その結果生まれた独自の形式ではないか…という事らしい。柵に関しては鈴だけが形式に従ったもので、綱とかはこの時の管理者によるものだったらしい。


伯父「うちの者で“かんかんだら”を祓ったのは過去に何人かいるがな、その全員が二、三年以内に死んでんだ。ある日突然な。事を起こした当事者もほとんど助かってない。それだけ難しいんだよ。」


ここまで話を聞いても、俺達三人は完全に話に着いていけず、置いてかれたままでいた。



だが、事態は一変した。



伯父「お母さん、どれだけやばいものかは何となくわかったでしょう。さっきも言いましたが、棒を動かしてさえいなければ何とかなりました。しかし、今回はだめでしょうな。」


B母「お願いします。何とかしてやれないでしょうか。私の責任なんです。どうかお願いします。」


Bのお母さんは引かなかった。一片たりともお母さんのせいだとは思えないのに、自分の責任にしてまで頭を下げ、必死で頼み続けてた。でも泣きながらとかじゃなくて、何か覚悟したような表情だった。


伯父「何とかしてやりたいのはわしらも同じです。しかし、棒を動かしたうえであれを見ちまったんなら…。お前らも見たんだろう。お前らが見たのが大蛇に食われたっつう巫女だ。下半身も見たろ?それであの形の意味がわかっただろ?」



「…えっ?」



俺とAは言葉の意味がわからなかった。下半身?俺達が見たのは上半身だけのはずだ。


A「あの、下半身っていうのは…?上半身なら見ましたけど…」


それを聞いておじさんと葵が驚いた。


伯父「おいおい何言ってんだ?お前らあの棒を動かしたんだろ?だったら下半身を見てるはずだ。」


葵「あなた方の前に現われた彼女は、下半身がなかったのですか?では、腕は何本でしたか?」


俺「腕は六本でした。左右三本ずつです。でも、下半身はありませんでした。」


俺とAは互いに確認しながらそう答えた。


すると急におじさんがまた身を乗り出し、俺達に詰め寄ってきた。


伯父「間違いねえのか?ほんとに下半身を見てねえんだな?」


俺「は、はい…」


おじさんは再びBのお母さんに顔を向け、ニコッとして言った。


伯父「お母さん、何とかなるかもしれん。」


おじさんの言葉にBのお母さんも俺達も、息を呑んで注目した。


二人は言葉の意味を説明してくれた。


葵「巫女の怨念を浴びてしまう行動は、二つあります。やってはならないのは、巫女を表すあの形を変えてしまう事。見てはならないのは、その形が表している巫女の姿です。」


伯父「実際には棒を動かした時点で終わりだ。必然的に巫女の姿を見ちまう事になるからな。だが、どういうわけかお前らはそれを見てない。動かした本人以外も同じ姿で見えるはずだから、お前らが見てないならあの子も見てないだろう。」


俺「見てない、っていうのはどういう意味なんですか?俺達が見たのは…」


葵「巫女本人である事には変わりありません。ですが、“かんかんだら”ではないのです。あなた方の命を奪う意志がなかったのでしょうね。かんかんだらではなく、巫女として現われた。その夜の事は、彼女にとってはお遊戯だったのでしょう。」


巫女とかんかんだらは同一の存在であり、別々の存在でもある…という事らしい。


伯父「かんかんだらが出てきてないなら、今あの子を襲ってるのは葵が言うようにお遊び程度のもんだろうな。わしらに任せてもらえれば、長期間にはなるが何とかしてやれるだろう。」


緊迫していた空気が初めて和らいだ気がした。Bが助かるとわかっただけでも充分だった。この時のBのお母さんの表情は本当に凄かった。この何日かでどれだけBを心配していたか、その不安とかが一気にほぐれたような、そういう笑顔だった。


それを見ておじさんと葵も雰囲気が和らぎ、急に普通の人みたいになった。


伯父「あの子は正式にわしらで引き受けますわ。お母さんには後で説明させてもらいます。お前ら二人は、一応葵に祓ってもらってから帰れ。今後は怖いもの知らずもほどほどにしとけよ。」


この後Bに関して少し話したのち、お母さんは残り、俺達はお祓いしてもらってから帰った。


この家の決まりで、Bには会わせてもらえず、どんな事をしたのかもわからなかった。転校扱いになったのか、在籍していたのか分からないまま、二度とBを見ることはなかった。ただ、すっかり更正して今はちゃんとどこかで生活してる、という話だけを聞かされた。


結局、Bの親父は一連の騒動に一度も顔を出さなかった。


俺とAも、その後すぐに落ち着くことができた。理由はいろいろあったが、一番大きかったのは、やはりBのお母さんの姿だった。母親というものがどんなものなのか、いろいろと考えさせられた。その一件以来、うちもAの家も、親の方から少しづつ接してくれるようになった。


他に分かった事としては、特定の日に集まっていた巫女さんは相談役になった家の人。“かんかんだら”とは、危険だと重々認識されていながら、ある種の神に似た存在にされてるということ。それは元々、大蛇が山や森の神だったことによるものだということ。それで年に一回、神楽を舞ったり祝詞を奏上したりするようだ。


そして、俺達が森に入ってから音が聞こえたのは、“かんかんだら”が柵の中で放し飼いのような状態になっているかららしい。六角形と箱の“爪楊枝”が封印の役割となって、棒の形や六角形を崩したりしない限り、姿を見せる事はほとんどないそうだ。


供養場所は何らかの法則によって、山や森の中の限定された一部分が指定されるらしく、入念に細かい数字まで出して範囲を決めるらしい。基本的にその区域からは出られないらしいが、柵などで囲んでる場合は、俺達が見たように、外側に張りついてくる事もあるようだ。


俺達の住んでいるところからは、既に移されている。たぶん今は別の場所にいるんだろうな。


やぁやぁ、、皆様、お久しぶりです。
9月にも入ったものの、残暑が厳しいので前回同様、今宵も怖い話しで少しでも
皆様の肝が冷えたらなぁと思います(*´∀`*)

ではでは、、、とっておきの怖い話・・・

とくとご賞味あれ・・。


~八尺様~


親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗る
ようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。
じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行って
いないことになる。
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこ
んなことだ。

春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで
行った。まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛
いでいた。そうしたら、


「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」


と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じが
した。それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。生垣の上
に置いてあったわけじゃない。帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで
来ると、一人女性が見えた。まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。
女性は白っぽいワンピースを着ていた。

でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだ
け背の高い女なんだ…
驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。

そのときは、もともと背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、踵の高い
靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。

その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを
話した。
「さっき、大きな女を見たよ。男が女装してたのかなあ」
と言っても「へぇ~」くらいしか言わなかったけど、
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」
と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にあ
る電話まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、
何を話しているのかは良く分からなかった。
ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。
――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。あの女だって、自分から見に行った
わけじゃなく、あちらから現れたわけだし。

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、
「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何
にも心配しなくていいから」
と震えた声で言った。
それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してく
れた。

この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。
八尺様は大きな女の姿をしている。名前の通り八尺ほどの背丈があり、「ぼぼ
ぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年
増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か載せてい
ること、それに気味悪い笑い声は共通している。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区
分)に地蔵によって封印されていて、よそへは行くことが無い。
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前。

これは後から聞いたことではあるが、地蔵によって封印されているというのは、
八尺様がよそへ移動できる道というのは理由は分からないが限られていて、そ
の道の村境に地蔵を祀ったそうだ。八尺様の移動を防ぐためだが、それは東西
南北の境界に全部で四ヶ所あるらしい。
もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、周辺の村と
何らかの協定があったらしい。例えば水利権を優先するとか。
八尺様の被害は数年から十数年に一度くらいなので、昔の人はそこそこ有利な
協定を結べれば良しと思ったのだろうか。

そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。
そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレの
ドアを完全に閉めさせてくれなかった。
ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。

しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には
盛塩が置かれていた。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その
上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用
を済ませろってことか・・・

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。俺もば
あさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。そう
だな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前か
ら出ろ。家には連絡しておく」

と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。
「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様
の前でお願いしなさい」
とKさんにも言われた。

テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛
れない。
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気
が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。

そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか
忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。
(この頃は携帯を持ってなかった)

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く
音が聞こえた。小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような
音だったと思う。
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつ
かなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして
無理やりテレビを見ていた。

そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。
また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」

じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に
鳥肌が立った。
ふと、隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。

一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください」と必死にお祈
りをはじめた。

そのとき、

「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガ
ラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、つけっぱなしの
テレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。画面隅に表示される時間は
確か七時十三分となっていた。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。
どうやら眠ってしまったか気を失ってしまったかしたらしい。
盛り塩はさらに黒く変色していた。

念のため、自分の時計を見たところはぼ同じ時刻だったので、恐る恐るドアを
開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。

下に降りると、親父も来ていた。
じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、ど
こから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。そして、庭に何人
かの男たちがいた。

ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべ
てを囲まれた形になった。

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下
を向いていろ。俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後
に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。車列はかなりゆっくりとし
たスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のよう
なものを唱え始めた。


「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」


またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いて
いたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。しかし、車内を覗き込もうとしたのか、
頭を下げる仕草を始めた。

無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣が声を荒げる。

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。

コツ、コツ、コツ
ガラスを叩く音が始まる。

周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。

やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあ
げた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。

やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せ
てみろ」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持ってい
なさい」と新しいお札をくれた。

その後は親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られ
て命を落としたということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは
極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、
少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもす
ぐに集まる人に来てもらったようだ。

それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼
のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。

そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと
念を押された。

家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞
いたが、そんなことはしていないと断言された。
――やっぱりあれは…
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。

八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということ
だ。まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのよ
うなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。

それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日
談ができてしまった。

「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通
じる道のものがな」

と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえ
なかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言って
いたという)

今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…






「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」