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「4TEEN」石田 衣良

石田 衣良
4TEEN

Amazon掲載のあらすじ

 地下鉄の階段を上がる。目の前にずらりと並ぶもんじゃ焼き屋。裏道に入れば木造の長屋が残り、そして目線を上げれば、そこにはスカイラインを切り取る超高層マンションが。それらがみんな奇妙に調和して共存する町、それが僕らの町、月島。
 180センチ、100キロの巨漢、ダイ。
 ウェルナー症候群という難病のナオト。
 勉強が得意なジュン。
 かっこいいことを言ってもどこかイケてない、テツロー。
 月島中学に通う中学二年生四人組が一年間で経験する様々な出来事。入院中のナオトの許に大まじめで「エンコー」の女子高生をプレゼントし(「びっくりプレゼント」)、過食・拒食を繰り返す同級生とつきあい(「月の草」)、自転車旅行と偽って2泊3日で新宿の町を探訪し(「十五歳への旅」)……。この町でぼくたちは恋をし、傷つき、死と出会い、いたわり合い、そして大人になっていく。
 その他「空色の自転車」「大華火の夜に」「月の草」「ぼくたちがセックスについて話すこと」「飛ぶ少年」の、瑞々しい八つの物語で描く今どきの十四歳、青春ストーリー。


 テレビドラマ、そしてコミカライズにも至ったデビュー作「池袋ウエストゲートパーク」でお馴染みの石田衣良が、晴れて手にした129回直木賞。その受賞作は、やはり池袋シリーズの軽快な語り口を受けながらも、更に若い世代への探求に満ちた一作であると言えるでしょう。

 短編の連なりで、それらのテーマこそセックスや死に偏りがちではありますが、それぞれの物語は実に個性的で、読み進めていてもほとんど飽きを感じません。池袋シリーズはどうも物語の作りに制約が多く、少しマンネリ化しつつある印象が拭えなかったので、この作品ではとても自由にシナリオを描いていると思いました。個人的には少し残念な点ですが、短編毎に4人組以外の登場人物をほぼ完全に刷新している点が良いのかも知れませんね。

 8作中、個人的には「大華火の夜に」が良かったです。同じ病人として、率先して老人の下の世話をするナオトが印象的です。

 昨日オナニーしすぎた、に始まり、今の自分達を…、に終わる「14歳」の小説。

 14歳の少年達、にしては少々頭が出来過ぎている所もあり、この物語がそのまま現実の14歳の少年に当てはまるとは言い切れませんが、こんな14歳は素敵だ、と自分の14歳を回帰しながら読める作品だなと思います。少年時代物とまではいきませんが、それなりに年を食ったほうが面白いのかも?

 「4TEEN」は「Four Teen」でも「FOURTEEN」でもありますが、けれど決して「For TEEN」には成り得えない、と言う事でしょう。

それは僕が今しがた考えたこじつけだからです。

 

91/100点

まず、今度もう一回書き直したいですこの書評。

「透明人間」東京事変

東京事変
大人(アダルト) (通常盤)

 東京事変2nd Albumより。東京事変Vo.こと椎名林檎と言えばソロ休止前最後のシングル「りんごのうた」がNHK「みんなのうた」にて放送されていますが、今回のアルバム収録中の「透明人間」はそれよりも更に子供向けと言うか、とても親しみやすいモダンポップの体をしていて好印象でした。この曲には大きく分けて2バージョンあり、それぞれ発表された当初のライヴ版(こちらはアルバムよりもスピード感があります)とアルバムバージョンに別れるのですが、個人的には断然こっちですね。

 何といっても歌詞が解かり易く、それでいて一曲限られた時間、文句数の中で非常に鮮明な世界が描かれているのです。「噂が走る通りは息を吸い込め 止めた侭で渡ってゆける」の一節は特に秀逸で、透明人間と言うタイトルとその世界観に独自の含みを持たせていると言えるでしょう。あとこれは完全に個人的な趣味ですがサビの「空の短い季節」「空の尊い模様」と言う表現に感服。最近はつくづく楽曲=メロディこそが評価対象な志向があった自分において、ここまで歌詞に惹かれた曲は無かったと思います。

 だからこそ、この曲については、演奏は少し大人しくあって欲しいのです。

 修羅場はシングルバージョンの方が好きですけど。

「mansfield popp」mansfield

Mansfield, 伊集加代子, Dougee Dimensional, mags FURUHOLMEN,
pal WAAKTAAR, morten HARKET, 鈴木桃子, chuck LAMOINE
マンスフィールド・ポップ

 自分音楽史において、偶然手に取ってみたら超優良盤だったと言う典型。

 と言うのも、まずジャンルとして自分の大好きなオシャレラウンジ/ジャズがほぼ全編に渡って展開されており、それも半数が今日のテレビ番組BGMに使われている程のポピュラーな物であるのですから、これが気に入らない訳が無い。

 初っ端から「ルパン一世」「Take on me」と馴染みやすくも鮮明なナンバーが続きますが、お勧めは土岐麻子(Ex.Cymbals)ヴォーカルの二曲。その片方はカジヒデキとのツインVoで、この曲は結構有名なのでは。とにかく、このCDがいかにポピュラーなナンバー揃いであるかは一度手にとって聞いてもらいたいところです。

「ビフォア・ラン」重松清

重松 清
ビフォア・ラン

 いきなりですが、僕は「重松 清」のファンです。鍵括弧で括ったのは、たった今書いた「ファン」と言う単語の定義が彼の作品のみに及ばず、彼自身にまで及んでいると言う事の意味合いであるとご理解下さい。(この配慮は無意味でしょうか)


http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=DVXA,DVXA:2005-25,DVXA:ja&q=%E9%87%8D%E6%9D%BE%E6%B8%85&sa=N&tab=wi

 だって、父親であれ叔父であれ、こんな「オヤジ・オブ・オヤジ」みたいな方が家系にいたら(それも職業・小説家で矢沢栄吉のファンだとしたら)良いと思いませんか?


 冗談はさておき、彼のファンになった本当の理由は、高校の国語の教科書に掲載されていた「卒業ホームラン」と言う短編で初めて小説らしい小説を好きになる事が出来たからです。僕はその頃から既に同人関係で小説を書いていたのですが、恥ずかしながら読む事に関してはさっぱり集中力が持たない体だったので、一冊の本を片手に何時間も机に向かう・寝転がる・トイレに入る等の行為は端から諦めていました。しかしながら国語の授業中と言うのは嫌でもそれを行わなければならないので、結果的にその拘束が良い切欠になったのだと思います。軽快でありながら、なかなか深い表現を用いた中で描かれる「家族」の肖像に非常にリアリティがあり、何度も読み返しているうちに一念発起。図書館へと出向き、「卒業ホームラン」が収録されている「日曜日の夕刊」をまる一日かけて読破。今やなんとか習慣として根付いている僕の読書のルーツは、まさにここ、重松清作品にあると言えます。ならばその「日曜日の夕刊」をまず紹介しろよ、と思われるかも知れませんが、まぁここは一つ、僕のルーツよりも重松清のルーツを優先する事にします。


 と言う訳で、最初の書評は彼のデビュー作「ビフォア・ラン」。


 BOOKデータベースよりあらすじ

 授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、「今の自分に足りないものはこれだ」と思い込んだ平凡な高校生・優は、「トラウマづくり」のために、まだ死んでもいない同級生の墓をつくった。ある日、その同級生まゆみは彼の前に現れ、あらぬ記憶を口走ったばかりか恋人宣言してしまう―。「かっこ悪い青春」を描ききった筆者のデビュー長編小説。


 今や作品テーマに「家族」「父親」「いじめ」等が定番となりつつある重松清ですが、そのデビュー作は片田舎青春小説。この頃から既に、巧みな主人公の内面描写や、文章のテンポ等、所謂「骨組み」の部分に関しては既に現在と遜色無い物が形成しつつあるのは流石。

 秀逸なのは、作中で主人公とヒロインがそれぞれ勝手に描いた幻想と、現実の絡まり様。

ページが進むにつれて、物語はゆっくりと、しかしながら確実に幻想の世界へと向かっていきます。

デビュー作云々の概念を捨てても、青春小説として非常に良い出来で、読みやすくなっているのでは。

僕はデビュー作と言う言葉をじっくりと噛み締めながらだったので読了まで二日かかりましたが、普通に読む分なら片手間でもそこまでかからないのでは…。お手軽ですね。


88/100点

死んでもいない同級生の墓を作る過程が少々いい加減とは思いました。