彼女の家は
誰も煙草を吸わないので
煙草を吸うときは外に出る。
だから、
雪だろうが台風だろうが外に出た。
そろそろ空気が冷たくなってきて
吐き出す息のどこまでが煙で、
どこまでが白い水蒸気なのか
区別がつかなくなるだろう。
煙草は屋外で!
と、
彼女によく言われた。
寒くてコート着用で
震えながら吸う煙草の
凍えた空気と混ざった独特の匂い
…実は好きだ。
彼女は、
自分の高校の
ちょっと変わった制服が好きだという。
私は、その制服は笑えるって思うけど
その中身の彼女が大好きなので
気がついたら、
その制服を街で見かけると
嬉しいくらいになってる。
いつしか、
彼女はいつも香水のにおいをさせていた。
当時は、
高校生が制服で香水のにおいをさせているのって
どうなのかな~って思ったけど
彼女曰く、
誰からかお土産でもらった香水を
思いっきりカバンの中にぶちまけちゃって
しっかり皮に吸い込まれちゃったからどうしようもない、と。
で、気がついたらその匂いも私は好きになっている。
私たちは、
お金もたんまりあるってわけじゃないし
お互い学校も違うから
デートしようと思うと
屋外を二人で歩くってことが多いんだけど
二人とも寒がりなのもあって冬はつらい。
寒いから、
もうちょっと寄り添って歩けたらな~って思うけど
なんだか気恥かしくて、
とてもこれ以上は近づけない。
たくさんの時間を共有して
たくさんの話をして
互いに何かを得て、何かを失った。
何かを得るたびに与え
何かを奪うたびに失った。
得ることの喜びが大きいうちは、
ただただ楽しくて
だけど、
それは未熟な二人には長くは続かず
失うことの恐ろしさに囚われて、
別れてしまった。
だから、
いくら吸い込んでも奪ったことにはならない
さまざまな香りだけが
私の嗅覚に記憶として染みつき
彼女の思い出として残った。
今でも、
彼女が『寒い寒い』って言い、
その横で
煙草をくゆらしている自分の姿を
懐かしく切なく思い出せる。
凍えた空気と混ざった独特の匂いがやっぱり好きだ。
