相撲をやっている人にはとんでもなく性格の悪い人もいる。もちろんほとんどの人は性格はいいですけど。今日は高校のときにいた、自分が最も性格が悪いと思った男との話をしてみたいと思います。




 高校のとき、自分ははっきり言うのは気が引けるが、そんなに相撲は強くなかった。大会に出てもだいたい初戦敗退。初めて勝ったのが相手が欠場しての「不戦勝」だった。




 高校一年生のときのとある大会のこと。



 対戦表をもらってまずみるのが、個人戦での自分の対戦相手。そのとき初戦の相手はガラの悪いことで有名な高校の同じ一年生で、入道坊主のような感じのでかい男。。その高校には全国レベルの選手が多数いるのに、一年生ながらもレギュラーになるような相撲の強い男で自分はよく知っていた。「あー、勝てそうにないな・・」と弱気な自分。




 で、会場を歩いていると、偶然にも向こうから初戦の対戦相手の入道坊主が仲間たちと数人で歩いてきた。そんで、入道坊主。突然自分の肩にドーンとぶつかってきて、痛がる自分に一言、




 「お前なんか屁の河童!楽勝楽勝♪」





と大きな声で言ってきて、仲間たちと笑いながら去っていった。




 むかついたが、何も言えないへなちょこな自分。




 そんなこともあっての対戦本番。自分のことを楽勝と言わんばかりに睨んでくる入道坊主。自分は目を合わさないようにする気の弱さ。




 立ち合い。思い切ってぶつかったつもりだったが、相手のスピードがすごすぎて、すぐに両廻しを取られた。しまったと思ったが、すごい力でそのまま吊り上げられ、一気に土俵際へ。余裕で力があり余る入道に、何もできない自分はそのまま豪快に土俵に叩き付けられた。わざとなのか俵がある部分に体をぶつけられ、ものすごく痛かった。しかし、入道はそれだけでは満足できなかったのか、そんな痛がる自分に追い打ちをかけるように、背中に足で蹴りを入れてきやがった。一瞬息が止まるくらいの激痛が走った。




 そして、入道はどや顔で土俵を下りていった。自分は心も体もボロボロだった。軽く涙も出ていた。




 かなり屈辱だったが、自分が相撲弱いのが悪いんだ。「絶対強くなる!」と心に誓った。




 しかし、誓っただけで、そんなに強くはならないのが現実(笑)それでも高校時代は相撲に青春をかけていた。





 そんで月日は流れ、高校三年生のときのとある大会。あの性格の悪い入道坊主と対戦する機会がやってきた。




 相変わらず性格の悪い入道坊主。体つきも稽古十分でごつい。で、相変わらず睨んでくる。勝てる気はしなかったが、こちらも気持ちでは負けないぞと睨み返す。




 立ち合い、入道が両差しでくるのがわかった。それで差そうとする右手を無我夢中で掴み、必死にその右手を引っ張り込むように投げた。そしたら、自分でもびっくりするくらいに見事な「とったり」が決まった。勝った瞬間のことは今でも体が覚えている。本当に快感だった。




 屁の河童の自分に負けてしまった入道は、「うぉおおおお!!!!」と鬼の形相で何度も何度も大声で叫んで、しばらく動こうとはしなかった。




 自分は奇跡で金星をあげたことが何度かある。今日はその中の一つをお話ししてみました。






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