大学生のときの話。昔は部員はたくさんいたのに自分くらいの時代から部員不足の問題が起こってきた。そのため新入生を必死に勧誘したことがある。



 そこで相撲は人気がないのだと痛感した。話しかけても、「相撲部」とわかると顔が豹変する。

 「相撲をやるとモテるよ~」などと言っても顔や体型をみられると説得力がない(笑)

 そんなわけで、最初は体型などみて相撲が取れそうな人に声をかけていたけど、最終的には誰でもいいと経験問わず声をかけまくるわけだが、ほとんどの新入生に相手にすらされなかった(泣)モテない男がナンパをしているように、声をかけても無視されまくった(笑)




 で、そんな新入生の中に一回り、いや二回りは大きな体型。金の卵的巨漢男がいたので、声をかけてみた。



 そしたらその男・・



 「俺の体型みて勧誘したんだろ。デブだから相撲って考え方が単純なんだよ。」



 なんて生意気なことを言ってきやがった。



 でもそのあと、言ってきたのが・・



 「俺はデブだから柔道やってるけど。」



 そこで、話を聞いてわかったのだがこの男、すでに柔道部に入っていた。小学校のときに相撲をやっていたが、中学校に入って相撲部がなかったので柔道を始めたんだとか。



 「相撲部に入れば即レギュラーなんやけど!」



と言ってみたが、柔道部でもすでにレギュラーらしかった。



 そんなわけでダメもとで



「久しぶりに相撲やってみろよ。いつでも練習に参加しに来い!」



と言っておいた。



 そしたら、次の日。すぐに練習に来てくれた。純粋に久しぶりの廻しに喜んでくれた。体重があるのに、柔道で鍛えたその体は筋骨隆々でものすごく強そうだった。



 そんな男と相撲を取ってみた。負けるわけにはいかない。先輩としてのプライドとプレッシャーがあった。


 

 まずは一番。当たって一気に押し出して、あっさり勝ててホッとした。その後、何番か取ったが一度も負けなかった。柔道部は投げは強いけど押す力はそんなにないのだ。だから投げに注意さえすれば、負ける気がしなかった。この男、他の部員にもろくに勝てずだった。



 息をあげてる男に、



 「デブだけど相撲弱いな。」



 と言ってやった。




 この男には仮入部してもらって新人戦に出場してもらった。でも、初戦で負けてしまった。そしてこれがよっぽど悔しかったのか、柔道部を辞めて相撲部に正規入部してくれた。




 その後、あっという間に強くなり、主将も勤め、相撲部を盛り上げてくれた。そして卒業後、大相撲の世界に入ったが、最高位三段目で引退してしまった。中学高校でも相撲を続けてれば、もっと上の番付にあがれたのではと思うのだが、それもこの男の人生。悔いはないらしい。




 性格は悪いけど、今でもよい後輩だ。





 この後輩にと会うとそんな入部のときの話とか懐かしい話がいろいろ出てくる。相変わらず、デブのままやけど。