先日ですね、カットした年配(推定70歳)のお客様の顔に

毛がついてたのでフェイスブラシで毛を掃ってたんです。

しかし、中々、敵も頑固で唇の横についた少しロングな毛が落ちない。

短い毛だったらまだしも、この長い毛は不快な毛に違いない。

この毛は絶対取ってしまわなければないだろうと、こちらも必死。

フェイスブラシでも落ちないので、今度はタオルでゴシゴシこする有様。

それでも取り掃う事が出来ない、ロングな毛。

こうなれば、ロングな毛VS私。

お客様の顔に手を触れるなんて、少々、失礼ぶっかまし、親指と人差し指で

その毛を掴み心の中で「と、とったどー!」と叫び、そのロングな毛を

取ると、小さく小さくそのロングな毛は予想だにしない音を発した。

ブチッ!

?????

ブチッ?


そう、その毛はカットして落ちた毛ではなく、自然発生した一本の長い髭。

もしくは、宝毛と言われる、年配さん特有の有難い毛。

そんなビターな経験は財産であると言えましょう。

あ、どうも、美容師女オンナです。


財産。

その、年配のお客様は言いました。

私は金銭的なもので財産はないけど、歳を取ると全ての人生経験が身についた財産だと思うのよ。

アナタの手についた職も立派な財産ね。

失敗した事、悔しかった事、傷ついた事、泣いた事、全て人の身になり

貧しさは大きな力になり、人を奮い立たすんですよ。

お金はないくらいの方が人は自分に財産を与えるのかもしれないね。

そうおっしゃいました。

素晴らしい!

大事な物は金なんかやない!ビターな人生経験や!

感動したっ!

そして、大事な毛を引っこ抜いてごめんなさい。







私には顔に傷があります。

ちょっと見れば気付くでしょう。

私がまだ3歳の時にコンペイトウの入った瓶を持って外で遊び

転んでしまい、瓶は割れ私の顔に傷がついたそうです。

母の不徳の致すとこだ、と母は言います。

傷はぱっくりと割れ、みるみる内に顔は血だらけになったそうです。

母はびっくりして病院へ連れて行き、すぐに処置をしたのですが

傷はしっかり残り、現在に至ります。

小学生の頃は、その傷でいじめられた事もありました。

その醜い傷が嫌でたまらなかったのですが、母を恨んだ事はありません。

私の母は、私が小さい頃はよく怒ってはいましたが、とても雰囲気の温かい人です。

そして、雰囲気の可愛い人です。

私や姉の友達には市原悦子みたいな人だ、と言われていました。

私が小学校に入った頃くらいから、父が焼酎の飲みすぎで肝臓を患い、入院。

その後、元気になったものの、やはり入退院の繰り返し。

そんな感じで、私より父をかまう母。

というか、私にかまう事が出来なっかったのだ。

たくさんかまってもらった事はないけど、寂しいとかは思わなかったし

大好きでした。今でももちろん好きですがね。

母の座右の銘は


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そんな人ではありますが、私は大好きです。

何よりも、かまってもらえなかったという事で、自分の事は自分でやる精神がつき

何でも、自分でやり過ぎるとこはあったと思います。

しかし、そのおかげで、過保護に育った事もなく、むしろ野生児で

人の家の山の生えた竹の子(絶対食べれそうにない代物)を引っこ抜き

母に「お土産!」と言って持って帰り、しこたま怒られた事があります。

母はその家に行きひたすら謝り倒していました。


今、思えば、親が頭を下げる姿ってビターです。

私よりビターだったのは、むろん母ではあるが。

ほったらかしに育てられたけど、我が子の不祥事にはケジメをつけて

その姿を見て子は育つ。

未熟な子供にたくさん経験をさせ、もしもやんちゃをやらかしたら

尻拭いをしてくれる。

だけど、大人になったら、尻拭いはしてくれない。

自分で責任を取る事を覚え、もしくは、してはいけない事を覚える。

経験ありき、ですね。

近頃は、優しさと過保護をはき違え、子供にビターな苦労をさせずに育て

不祥事をやらかしたらもちろん謝るが、ビターな経験をしてない子供は

親のそんな姿を見ても、感じる事無く、また何かしでかしたら

親が謝ってくれると、いつまでも親のスネをかじり生きている。

経験を財産にして生きているのだろうか。

昔も今も、親が子を思う気持ちは変らないが、情報と物があふれ返り生活も豊かになって

貧しさもあまり感じる事がなくなり、大きな力にはならない。

流れゆく時代のせいで、仕方のない事だとは思うけど

私は子供にビターな経験をたくさんさせてやりたいなぁ、と、思う今日、母の日。




娘にはいろんな経験をさせて、もしも不祥事をやらかしたら


尻を拭いに行こう。


そして、いつか、自分で尻を拭える責任感のある人に育てよう。

そして、その後は、その経験を財産に出来る人に育てよう。


ちょっとちょっと!

今、私、何だか、ええ事書いちゃったりしてるって!

早く、携帯!携帯!持って来て友達にこの話し、簡潔にまとめてメールしてあげて!

簡潔にまとめすぎて、しかもちょっと間違えて

「今からアナタのケツの穴を拭いに行くよ」

なんてメールしたら、友達の縁を切られる事間違いないから気を付けて!





母、ビターな経験をさせてくれてありがとう。

んで、お花贈るの忘れててごめんなさい。