地下鉄に乗って
幻想譚や幽霊譚の名手、浅田次郎が父と息子、母と娘の時空を超えた出会いを描いた同名ベストセラーの映画化。現代と過去、2つの時空を繋ぐのは東京の地下鉄。
東京メトロ半蔵門線」で通勤する長谷部真次(堤真一)はある日、気がつくと丸ノ内線に乗って、少年時代に住んでいた新中野駅で降りる。
真次は、一代で巨大企業を築き上げた、若い頃の父親、小沼佐吉(大沢たかお)とたびたび出会うことになる。
父の非情さに反発し、家を飛び出し、母方の姓を名乗る真次は、若き日の佐吉は希望と野心に燃える青年だったことを知る。
同じ頃、軽部みち子(岡本綾)も若かりし頃の母、お時(常盤貴子)ち出会う。お時は佐吉の情婦だった。
タイムスリップの最初は、昭和39年の東京オリンピックの中野界隈。あの頃、街のランドマークのような存在だった中野オデヲン座という二番館が印象的に姿を見せる。その後、太平洋戦争中の銀座線(新橋と青山三丁目駅)、戦火の中国大陸、敗戦後の闇市と化した銀座線上野駅周辺へ真次とみち子は導かれ、激動の昭和を肌身で体験する。
佐吉、お時、真次、みち子の4人が一堂に会す、とある石段の昇りきった場所に建っているお時のバーのくだりは、日本映画史に残る名場面である。
真次は素性を明かさぬまま、同じ男として父親が激動の時代を燃えるように生きたことを讃え、みち子は母親の激しい生き方に強く惹かれながらも、自らに厳しい決断を下す。
ビックコミックオリジナル 2006.10.5号
