複雑性PTSDって何? | しかまち心療内科のブログ

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精神科の記事は一応専門として書いていますが、政治経済は素人ですので趣味で書いています。

PTSDは患者さんから最も好まれる診断名ではないかと思う。時々自分で診断をつけてくる人がいるがPTSDが多い。欧米人を診察しているとこれがまた多い。違うのでは、というとすごく食って掛かられる。元気じゃん、と思います。言葉が分からないから理解してもらえないという。ネットでカウンセリングしてくれる人がいるらしくその人からPTSDだと言われたという。精神科医は共通の診断基準を使う。PTSDは基本生きるか死ぬかの体験を持つ人につけられる病名である。臨床で見ているとそういう人はなかなかいない。不思議と彼らは主張せず、数年後にぽろっとそういう体験の話を聞いたりする。治りにくかったのはこのせいかとわかる。

 

問題は精神医学でトラウマとはそのような生きるか死ぬかの体験をさすのに対して、一般的にはトラウマという言葉がそれによって気持ちが傷ついたという意味で世間で汎用されていることにあるように思える。もはやトラウマという言葉は消えないように思えるので精神科の方で新しい言葉を作った方がいいか?

 

複雑性PTSDは今の診断基準にはなく来年のICD(WHOが中心になって作っている診断基準)に掲載されるらしい。DSM(アメリカの精神医学会で作られている)にはその基準はない。現在使われていない診断名を今使うのはおかしいのではないかと思う。これまでのような生きるか死ぬかまではないけど長期間暴露されることによって過覚醒、フラッシュバック、回避行動などの症状が生じた場合に診断するらしい。

 

 

週刊文春12月2日号岩波明氏

PTSDとは本来重い病気。会見を見る限りでは眞子さんにそのような症状があるようには見えなかった。あえてつけるなら適応障害ではないでしょうか。(大分省略しているので読んでみてください)

 

マスメディアのバッシングでPTSDになるのかというところが疑問。仮になっているならそこを回避する行動をとるのが診断基準。会見に立てるはずがない。

個人的には今までPTSDと診断してほしいのにされなかった人たちに対応するため基準を作ったようにも思える。あれがPTSDだと誤解されるのが怖い。雅子さんを適応障害と診断した大野先生は適切だったと思う。