ナッツ事件の判決は有罪だった。大韓航空内で客室乗務員のナッツの出し方に怒って機体を引き返させたとして航空保安法違反などの罪に問われた同社前副社長、趙顕娥(チョ・ヒョナ)被告(40)に、ソウル西部地裁は12日、同法上の航空機航路変更の罪を認定し懲役1年(求刑懲役3年)を言い渡した。執行猶予処分の可能性も指摘されたが、オーナー一族という強い立場に乗じた社員への横暴、高圧的な態度が強く問題視され、実刑は免れなかった。
裁判長は判決理由で「金と地位を利用して人間の尊厳を崩壊させた事件。国家の威信を失墜させた」と断罪。「真剣に反省しているのか(疑問だ)」と述べた。さらに「他の航空機の運航を妨害し、衝突する可能性もあった。数百人の乗客が(遅れで)被害を受けた」と続けた。乗務員に暴行を加えたとする同法上の航空機安全阻害暴行の罪と、刑法上の業務妨害罪についても有罪とした。
「航路とは空路(離陸後)のみを言う」として離陸前の引き返しは航路変更に当たらないとの趙被告側の主張を認めず、ドアが閉まった後は運航中に当たるとした。量刑については、事故が起きていないことや、趙被告が既に厳しい批判を受けていることなどが考慮された。趙被告の弁護人は判決後、控訴について「(同被告と)協議して決める」と記者団に述べた。
今回の公判は、1月19日の初公判から判決まで24日と、異例の速さで進行した。趙被告側は多くの起訴内容を否認しながら、目撃者の証言など検察側の証拠採用にいずれも同意。法廷に立った証人は裁判所が呼んだ3人にと びっくり画像 どまった。趙被告側が執行猶予処分を見越して、早期の判決言い渡しを望んだとみられる。
しかし今月2日の求刑公判で趙被告は「事件の発端は乗務員の規則違反」と主張し、世論は悪化。証人の客室サービス責任者の男性は「趙前副社長は(男性に)過ちを認めていない」と厳しく批判した。裁判所は被害を受けた社員らと和解できていないことを重く捉え、実刑を言い渡した。
事件の隠蔽(いんぺい)を企てたとして証拠隠滅などの罪に問われた同社常務(57)は懲役8月(同懲役2年)、常務に国交省の調査内容を漏らした罪に問われた同省調査官(54)には懲役6月、執行猶予1年(同懲役2年)が言い渡された。
◆ナッツ・リターン事件 大韓航空の趙顕娥前副社長が昨年12月5日に米ニューヨークのケネディ国際空港で同社機に搭乗した際、ナッツの出し方が規定と異なると激怒、離陸直前の同機を搭乗口まで戻させ客室サービス責任者の男性を降ろして運航を阻害した事件。前副社長は男性を罵倒、暴行したとされ、究極のパワハラ事件として韓国社会で非難が噴出。天候上の理由や機体トラブルなどで引き返すのは「ランプ(駐機場所)リターン」と呼ばれることから、この事件は「ナッツ・リターン」と、やゆされた。
◆韓国の裁判制度 韓国の裁判は日本と同じ3審制で、日本の地裁、高裁、最高裁にそれぞれ当たる地方法院、高等法院、大法院がある。2008年には重大事件を対象に市民が刑事裁判に参加する「国民参与裁判制度」が導入された。法律の違憲審査などを担当する憲法裁判所が別にある。
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