順天堂大浦安病院(千葉県浦安市)と浦安市が、健康な女性が将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存するバンク構想を進めていることについて、日本産科婦人科学会(日産婦)の苛原(いらはら)稔・倫理委員長は7日、毎日新聞の取材に「(健康な女性を対象とすることは)推奨しない」との考えを示した。
苛原委員長は理由として、(1)卵子を凍結保存した場合、将来妊娠できる可能性は高くはなく有用性がはっきりしていない(2)女性が妊娠を先送りすると出産年齢が上がり、医学的なリスクが高まる--の2点を挙げた。
卵子凍結は、がんなどの治療で卵巣機能が低下する恐れのある女性患者のほか、最近は若い健康な女性が将来の妊娠のため取り組む例が出ている。一方、凍結卵子による妊娠率は1~2割にとどまる。浦安市は、少子化対策の一環として市民を対象に凍結保存費用の助成などを計画する。
健康な女性の卵子の凍結保存については、日本生殖医学会が2013年に指針をつくり、「40歳以上は推奨しない」など条件付きで容認。日産婦は昨年、がんなどの治療を受ける女性患者について、実施施設に報告を義務付けるなどの指針をまとめた。【下桐実雅子】