携帯電話間でテキストを送りあうためのメッセージング・アプリで、日本で人気のLINEのようなもの。名前は、カジュアルな若者の挨拶である「What's up」と掛けられています。What's upは「ワサッ」という感じで発音され、直訳すると「なんか面白いことある?」という感じですが、実際は「よぉ!」くらいのイメージでしょうか。
このWhatsApp買収で世間が驚愕(きょうがく)したのは、そのお値段。190億ドル、日本円にして約1兆9000億円という巨額なものだったのです。企業価値(時価総額)が1兆9000億円以上になる日本企業は四十数社しかありません。会社を丸ごと買う場合の株価は、株式市場で取引されている相場よりかなり高額になるのが普通ですが、それにしてもすごい額です。WhatsAppはメッセージング・アプリとしては著名でしたが、まだ社員も50名ほどしかいない小さなベンチャーなのに1兆9000億円、ということで皆おおっと驚いたのでした。
ユーザ数は4億5000万人!
この巨額な買収額のベースとなっているのがWhatsAppのユーザ数で、買収時点で4億5000万人もいます。ここでいう「ユーザ」とは月間アクティブユーザで、「ひと月の間に最低でも1回はそのサービスを使った人」のことで、登録者の累計ではありません。そうしたアクティブなユーザが日本の全人口の4倍近くいるわけです。そして、買収金額をこの月間アクティブユーザ数で割ると、1ユーザ当たり42ドルというお値段になります。
果たしてこの42ドルという数字は高いのか安いのか。ここはひとつ、他の企業と比べてみようではないか、ということでグラフにしたのが下図です。
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数字の基を説明しますと、Facebook、Twitter、ビジネス用SNSのLinkedInは公開企業ですので、2月26日時点での企業価値を最新発表の月間アクティブユーザ数で割ってみました。写真共有サービスのInstagramは2012年4月にFacebookが買収した時のユーザ数と買収価格を使っています。SNSのMyspace、ブログサービスのTumblrも、同様に買収時のユーザ数と買収価格を使いました。写真共有サービスのPinterestは2013年の10月に増資をしているので、その時点でのユーザ数と企業価値を使っています。
1ユーザ当たりの企業価値42ドルは安いのか、高いのか
結果はご覧の通り、Facebookで145ドル、Twitterで126ドル、LinkedInで137ドルと、軒並み100ドルオーバーです。買収された他のベンチャーに比べてもWhatsAppはあまり高くない、むしろ安い!ということになります。もちろん、果たしてWhatsAppが安いのか、FacebookやTwitterが高過ぎるのかは、時が経(た)ってみないとわからないことではあるのですが。
それにしても、2006年にGoogleがYouTubeを16億5000万ドルで買収した時は、「なんて高額なんだ」と世の中がどよめいたものですが、あれはもう遠い昔のことなのだなぁ、としみじみ感じる190億ドルのWhatsApp買収でありました。
なお、この続きはブログ「ON,OFF AND BEYOND」でご紹介しています