生活者目線で品質分析 | 国際そのほか速

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生活者目線で品質分析 
  • 部下の研究員と分析データについて話し合う。「消費者としての意識も忘れずに仕事にあたっています」(大阪府島本町で)=若杉和希撮影
  •   サントリービジネスエキスパート(東京)の上新原十和さん(40)は、お酒、ジュース、お茶などサントリー製品の原料や容器の安全性を調べる品質保証本部の課長。大阪府内にある研究センターで、あらゆる角度から検査の目を光らせる。

      原料に有害物質は含まれていないか、容器から化学物質が溶けだしたりしないか――。少しでも疑わしい点があれば、最新の計測機器を駆使して検査する。だが、マニュアルに従って機器と向き合っているだけでは務まらない。「実は、生活者の目線がとても重要なんです」

      例えば、ジュース飲料に販促品としてつけられるカップ。そこに注がれるのはジュースだけとは限らない。熱々のコーヒーを入れたり、自家製ドレッシングの保管に使ったりするかもしれない。様々な用途を想定して検証を加える。

      小学5年生と2年生の息子がいる。育児休業を2度経験し、職場復帰後は、フレックス制度や育児短時間勤務制度を用いて子育てにあたった。「当時は同僚に負担をかけているという引け目や、研究に専念できないジレンマがありました」と打ち明ける。

      しかし、出産・子育てというかけがえのない時間を得たことは、分析という仕事の視野を広げるのに役立ったと感じている。

      分析対象となる商品は年々増え、グローバル化で原料の購入先も多様化している。だからこそ、より正確で、効率のよい分析手法が求められている。

      昨年、リサイクルのペットボトルの安全評価手法を独自に開発し、論文が学会などで数々の賞を受けた。「資源保護のためにも、再生ボトルの普及に一役買えるならうれしいですね」

      現在は現場のリーダーとして、若い女性研究者を支える立場。「自分の体験を踏まえ、育児と両立させやすい職場環境づくりに努めています」。母としても、研究者としても、良き先輩でありたいと心がけている。(田中左千夫)

    ◇子どもとの時間大切に

    • 長男がくれた馬の折り紙。お守りとして定期入れにしまっている
    • 入社以来、20年近くにわたり分析データをノートに記録、保存している

        週末はオフの日とし、子どもとの時間をつくるように心がけている。

        夏休みや冬休み、春の大型連休には、決まって家族旅行に出かける。週末には郊外に足を運び、キャンプや釣り、スキーなどを楽しむ。昨秋は京都・嵐山で紅葉狩りを楽しんだ=写真=。

        キャンプなどでは、テント張りなどを手伝う子どもたちの成長ぶりを見るのも喜びだ。「中学生になれば親と出かけなくなるでしょうから、今のうちに『スキンシップのとりだめ』をしています」と笑う。

        日ごろは分析機器のある実験室や、会議室にこもって仕事をしているだけに、アウトドアの開放感は、何よりの息抜きになっているようだ。
      【月曜】
        6:00 起床
        9:30 部下と1週間の業務についてミーティング
      15:00 取引先と打ち合わせ

      【火曜】
      15:00 部下と計測データについてディスカッション
      17:30 英会話レッスン

      【水曜】
        4:30 東京出張のため早めに起床
        5:30 東京に出発
        9:30 社内会議
      13:00 本社の他部署に顔を出して情報収集

      【木曜】
        9:00 名古屋で食品関係の学会に参加
      18:00 学会の懇親会で他社の技術者と交流

      【金曜】
        9:00 在宅勤務で報告書類の承認などのデスクワーク
      13:00 半休。長男の授業参観へ

      【土曜】
        7:30 犬の散歩の途中、夫と行きつけのベーカリーへ立ち寄る
        9:00 1週間分の家の片付け
      13:00 長男をサッカー、次男をスイミングスクールに送る

      【日曜】
        9:00 滋賀県へ日帰りスキー。帰りに温泉に寄る

      かみしんばら・とわ 1973年、大阪府生まれ。96年に大阪大工学部を卒業し、サントリー入社。持ち株会社制移行に伴い2009年、サントリービジネスエキスパートに出向。13年から品質保証本部安全性科学センター課長。