トヨタ、若手の賃金上げ…技能系社員の体系見直し | 国際そのほか速

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トヨタ、若手の賃金上げ…技能系社員の体系見直し 

再雇用時も待遇維持

 

  •   トヨタ自動車は工場で働く技能系社員の賃金体系を見直す。

      若手を中心に能力に応じて支給する割合を増やすほか、優れた社員については定年後に再雇用した際の待遇を定年前と同じ水準に維持する。若手の優秀な人材を確保するとともに、ベテランの技術を伝承しやすくする狙いがある。

      トヨタの上田達郎常務役員は27日、東京都内で講演し、「一人一人が能力を高めて組織として成果を上げる職場作りを進め、国内にものづくりを残す」と強調した。労働組合と合意できれば2016年から導入したい考えだ。

      対象は、トヨタ単体の従業員約6万8000人のうち、6割近くを占める技能系社員約4万人。賃金のうち、年齢や勤続年数に応じて支給する割合を減らし、能力に応じて支給する額を増やす。職場ごとに上司が新入社員を除く全員を年2回評価し、能力給を配分する仕組みを検討している。

      新制度の導入後は、入社から定年退職までの平均的な賃金の推移を示す賃金カーブが、現在よりも若手に手厚い形になる。

      現場の技能系社員の育成にも力を入れる。1990年代に廃止した、生産現場を束ねる「工長」と「組長」の役職を復活させ、職責に応じた手当を新たに設ける。指導する立場を明確にし、中堅社員に若手を育てる意識を強く持たせる狙いだ。

      一方、60歳の定年退職後、65歳までの再雇用制度も見直す。今の制度では、再雇用後は賃金が半分程度に減るが、高い技術力や指導力を持つと評価された人は、定年前と同じ賃金水準で再雇用する。役職も変えず、技術を次の世代に引き継いでもらう。

      今回の賃金体系の見直し案は、人件費の総額を増やすことにつながる。それでもトヨタが見直しを検討するのは、優秀な人材を確保し、意欲を引き出すことで、将来にわたって国内工場の競争力を強化するためだ。

      トヨタが国内の雇用や技術力を守るために必要とする「国内生産300万台」体制の維持には、国内工場の生産性を上げることが欠かせないからだ。