(7)外国人が受験勉強するフリースクール | 国際そのほか速

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 東京都荒川区の「たぶんかフリースクール」では、公立高校入試に向けて、外国出身の子どもたちが受験勉強に懸命だ。

  運営するNPO法人「多文化共生センター東京」代表代行の枦木(はぜき)典子さん(63)は、都立高の外国人生徒特別定員枠で出題される「作文」を教えている。

  昨年12月上旬、中国出身の4人に、作文の文例を音読させた。「通う」が読めない生徒のために、黒板に「交通」と書き、「交通は読めるでしょ。でもこっちは『かよう』と読みます」。すでに知っていることと関連づけて多くの知識を得られるように工夫しながら、文章を書くことに慣れさせていく。

  昨春の都立高の同枠では、55人の定員に151人が志願、狭き門となった。スクールでは、一般入試を含めて関東地方の高校を55人が受験し、54人が合格。今年度は約70人が学んでいる。

「文化が違うだけなのに」

 

  千葉県市川市で小学校教師をしていた1980年代後半、中国やペルー、フィリピンなど様々な国出身の児童がクラスに入ってくるようになった。

  遠足が雨で中止になり、体育館で輪になって弁当を広げた時のこと。隠すようにして食べるスリランカ出身の男児がいた。何品ものおかずで彩りあふれる日本式の弁当と違い、密閉容器にご飯とおかず一品だけ。男児の横で楽しい時間になるように心がけたが、「文化が違うだけなのに」ともどかしかった。

  外国人支援に本気で取り組みたいと、2005年に学校を早期退職。日本語教師の養成学校で学び、翌年、創設間もない同スクールで教え始めた。

  出身国での成果を評価されず、日本語がわからないだけで自信をなくす姿があった。宗教上の理由で夏も長袖長ズボンで過ごしたり、整列して行進するのが苦手だったり。日本の学校で当たり前のことができず、いじめられた経験も聞いた。教師に頭ごなしに叱られた子もいた。

  「なぜそうするのかを教師が理解していないと、子どもを傷つけてしまう」と痛感した。

中国出身、25歳「科学者が夢」

 

  たくましい教え子もいる。09年、19歳でスクールに来た中国出身の戴思憶さん(25)は、21歳で都立高校1年生に。昨春、私立大に合格したが、費用がかさむため、国立大を目指して猛勉強中だ。「年齢差など周囲との違いが気にならないわけではないが、科学者になるのが夢だから」と前向きだ。

  「勉強したいという思いの強さは、日本人にも学ぶものがある。隣に別の文化で育った友人がいれば、外国人も日本人も互いに学び合える。学校を多様性のある空間にしたい」と枦木さん。そのためにも、教え子たちの朗報を願う。

  外国人生徒特別定員枠 公立高校入試で日本語に不自由な外国籍の生徒を対象にした枠。入試科目を減らし、作文や面接を課すなど配慮している。文部科学省によると、14年度入試で特別枠を設けた高校があるのは12都道府県。