
- Yik Yakのつぶやき画面
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今年の夏ごろから「ついにシリコンバレーのバブルが始まった」と思っている渡辺です。みなさん、お元気ですか。
事業の実態とその会社の時価総額が乖離
さて、ベンチャー界的に「バブルが始まった」とは、つまり、事業の実態とその会社の時価総額が乖離(かいり)、かけ離れることであります。今年の夏以前にも、1000億円、時には1兆円オーバーの時価総額で資金調達をするベンチャーが複数ありましたが、そうした会社はベンチャーとはいえ売り上げもかなりあるので、数字的には納得感がありました。
しかしこの11月24日に6500万ドル、70億円以上を調達したYik Yakには「むむ、さすがにそれは……」という感がぬぐえません。
「匿名のTwitter」的アプリYik Yak
Yik Yakは「匿名のTwitter」という感じのモバイルアプリ。ファウンダーの2人が大学のiPhoneアプリのクラスで開発したものがベースになっています。2人は2013年の夏に大学を卒業、10月に会社化して今年の4月に150万ドル、6月に1000万ドルと、トータル80億円超を増資してきました。
「匿名でつぶやく」というYik Yak的なアプリには他にWhisperとSecretがあります。Whisperは2012年創業、これまでに総計6000万ドル(70億円弱)を調達。SecretはYik Yakとほぼ同じ2013年10月に創業し、これまでに3500万ドル(40億円)を調達しています。
「アプリが外注」Whisperは頭打ち?
Whisperはサンタモニカの会社で、リリース後一気に人気が出て、今年のイラク内紛ではイラク政府がインターネット上の情報をブロックする中で、市民ジャーナリズムのプラットフォームとしても活躍しました。
ですが、Whisperの痛いところは「アプリが外注」というところ。「創業者はエンジニアでアプリは内製」という「ベンチャー成功の法則」に反します。もちろん、どんな方法でもユーザがついた製品の勝ちなのですが、アプリの見た目や使い勝手はかなり微妙です。「成功の法則」が存在する背景には、超高速で製品を進化させ続けないと勝てない、そしてそのためには創業者自身が製品を進化させられるエンジニアの方が圧倒的に有利だから、ということがあるのですが、Whisperはどうなることでしょうか。ユーザ数の伸びは初速こそ激しかったものの、最近は頭打ちになってきているようです。
おしゃれなベンチャーSecret
Secretはサンフランシスコ発。元Googleエンジニアと元Googleプロダクトマネージャという2人が始めたおしゃれなベンチャーで、アプリが一般公開される前からサンフランシスコのベンチャー界ではホットな存在でした。リリース後もSecret上でメジャーITベンチャーの社内パワハラ・セクハラ告発があったりと何度か話題になりましたが、こちらも光速で出発したはいいもののその後ややトーンダウン中。
そんな中、伸び続けているのがYik Yak。特徴はロケーションベースなことです。「つぶやき」は全てGPSによる場所情報つきで、ユーザは自分の周囲2キロ圏での「つぶやき」を見ることができます。この機能が人気となり大学単位で利用が広がりました。最近ではiPhoneアプリのソーシャルネットワークカテゴリのダウンロード数トップをキープし続けています。
ベンチャーの成功法則「創業者はエンジニアでアプリは内製」
とはいえ、「匿名発言」は「いじめ」に発展するリスクがあります。Whisperでは100人を超すスタッフが「つぶやき」を常時監視。Yik Yakでも予想通りいじめ問題が発生しましたが、メディアで問題が取り上げられてすぐに全米の中学、高校を場所情報で特定してそこからの発言は不可能にする、という技術的な回避法をとりました。「創業者はエンジニアでアプリは内製」という成功法則を満たしていたからできた回避法とも言えます。
どんどん入れ替わる人気アプリに永続性はあるか
しかし、どんな方法でいじめを回避したとしても、たった1年半ほどの間に人気アプリがどんどん入れ替わる状態では、そもそも「匿名つぶやき」自体に永続性があるのか懸念があります。むしろ人気映画のように、どんなに大当たりしても一定期間しかもたないただの流行ではないのか、だとしたら、それに数十億円単位の資金が次から次へとつぎ込まれる現状はバブルか否か。
その答えは数年たって振り返ってみなければわからないものではあるのですが。あなたはどちらだと思いますか?