評価の理由をコメントしてもらう
- NPSの指標の例(C)ベインアンドカンパニー
-
前回に引き続き、NPS(Net Promoter Score=正味推奨者率)についての話。
正味の口コミ率を高めていくべく、現場をどうやって変えていくか。それには、改善の糸口が必要だ。
そこでフローレンスが行っているのが、11段階での評価のほかに、その点数をつけた理由もクライアント(利用者)に記入してもらうこと。そのうち、とくに「批判者」のグループに入る人たちのコメントに注目し、具体的な不満を集め、改善に生かしていくのである。
改善にあたっては、大きく2つのことを行う。1つが現場のルーチンや制度を改定していくこと。もう1つが、不満の感想をもらった個々のスタッフレベルで改善を促していくこと。
この2つがしっかり行える仕組みを組織のなかに整え、全体として現場の改善が進んでいくようにしている。
改善点は利用者にも伝えるとベター
たとえうまく改善できたとしても、利用者にそれを伝えないのでは、なかなか気づいてもらえず、満足度のアップにはつながらない。
ホームページやメールマガジン、利用者への配布物などを通じて、「こうした意見をいただきました。そこで、このルールをこのように改定しました」と、改善した部分を利用者に確実に伝えていくことが肝要。改善のきっかけとなる意見をくれた利用者を特定できるなら、個別にメールなどでその旨を報告してもいいだろう。
「利用者に伝える」を徹底していくと、じつはNPSアンケートの提出率アップにもつながっていく。
利用者の心理を考えれば当然のことだろう。せっかく物申しても、何も変化がなければ、「言っても意味ないじゃん!」となってしまう。たとえばファミリーレストランや居酒屋に行くと、テーブルの上にアンケート用紙が置いてあるのをよく見かけるが、実際に記入している人はあまり多くないと思われる。それは、書いても反映されると実感しづらいから。
一方、自分が書いたことが、目に見えるかたちで反映されれば、利用者としても書きがいがあるというものだ。その結果、「次もきちんとコメントしよう」という気持ちにつながる。
口コミのお客さんがつくってくれる「いい流れ」
サービスの質が向上し、NPSの数値がプラスになれば、それは口コミで広がっていくレベルに達したことを意味する。そうなれば、おのずと利用者は増えていく。広告費をかけずに。
しかも、口コミを介して来てくれる利用者は、広告などを見て来てくれる利用者より、継続してくれる率が高い。なぜなら、事前にこちらのサービスのことを知ったうえで利用してくれるわけだし、こちらの理念にすでに共感してくれていたりするからだ。最初からある程度の「ロイヤルティー」をこちらに感じてくれているのだ。そのロイヤルティーがさらに高まれば、その人自身も口コミをしてくれることになるだろう。
一方、「広告を見て……」という利用者の場合、そこまでロイヤルティーをこちらに感じてくれていないことのほうが多い。なので、離れていきやすいし、下手をすればNPSでいう「批判者」になる確率も相対的に高い。
口コミでいかに評判を広げていくか。広告費などをかけられないソーシャル・ビジネスが成長していくうえでそれは欠かせない。
利用者の声に耳を澄まし、PDCAサイクルを回し続ける。こうした地道な努力を続けていれば、口コミで利用者は確実に増えていく。決して焦る必要はない。
最初は小さく。そして、現場をつくっていくことに大きなエネルギーを注いでいこう。
(次回は3月6日掲載予定です)