
仕事と子育ての両立は、優秀な人にしかできないこと…?
いいえ、かつて畑や商店などでは子育てと社会は当たり前のように共存していました。
そして現代でも、ほんの少し発想を転換することで子育てと社会が共存している例があります。
「子連れスタイル」と名付けた、そのライフスタイルを社会に提案する、「NPO法人 子連れスタイル推進協会」。
前回までは、その設立経緯についてお話ししてきました。
今回からは数回にわたって、「子連れスタイル推進協会」がどんなことをやっているのか?そして、これから何をしたいと思っているのか?その活動内容についてご紹介していきたいと思います。
「子なれた社会」を目指し、自治体、企業、個人と活動
- 2014年10月7日の復職支援シンポジウムの様子
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子連れスタイル推進協会は、まだ始まったばかりなのですが、やってきたことは、大きく分けると3つの事業になるかと思います。
1つは「自治体」と行う「産後生活支援事業」、2つめが「企業」と行う「ワークライフミックス事業」、そして3つめが「個人」と行う「子連れスタイル推進事業」です。
…といっても、初めから「この3つのパートナーとともにこういった事業を展開していこう!」と考えて始まったわけではありません。
前回お話しした「子連れ出勤見学会」を起点に、自然な流れで、立場の枠を超えたいろいろな方々と出会い、話しているうちに、気づけばこうしていろいろな立場の方との活動をともにしていました。
【with自治体】復職支援や子育てにやさしい街づくり
自治体との取り組みのきっかけは、前回記事「“ノイズ”~ざらっとした違和感で考える多様性」でお話しした「子連れ出勤見学会」。この見学会に参加してくださった方の中にとてもアクティブな方がいらして、「これは、行政に話をしにいきましょう!」と、場をセッティングしてくださったんです。
そして本当に、県議会議員、児童福祉や女性に関わるセクション、労働に関わるセクションなどさまざまな方面のキーパーソンが茨城県庁の会議室に集まることに。2012年6月5日のことです。結果、議員さんたちをはじめ、子連れ見学にいらした方々の活発な発言が多い実りある意見交換会となりました。
そのときに感じたことは、「こんなに皆、子連れスタイルに可能性を感じてくれるんだなあ」ということ。しかも、その場に以前県立美術館にもいらした方が参加されてて、美術館という場で何かできないか、という話にまで発展しました。これはまた後ほど。
他にも、ここからのご縁で、現在は茨城県の女性青少年課と恊働で行う「産後女性復職支援セミナー」の運営や、「常陸太田市で子育てにやさしい街づくりの支援」など、産後女性が「外」とつながるための情報提供を通じ、外出や復職などを支援しています。
国の方針でも女性の活用が掲げられる今、いろいろな自治体から「女性活用を推進していきたいが、どんなことができるか…」という相談をうけることが多くなってきました。私たちにしても、モーハウスやその子連れ出勤でやってきたこと・考えてきたことが生きるのならと取り組んでいます。
【with企業】ワークライフ“ミックス”を提案
企業との取り組みとしては、NPOの前身でもあり、私が代表をつとめる授乳服メーカー・モーハウスのオフィスを公開して、子連れで働くコツをお伝えしている「子連れ出勤見学会」にはじまり、最近では企業の販促・マーケティングのお手伝いなども行っています。
具体的には、ママをターゲットに展開している商業施設の発行するライフスタイルマガジンがあり、そこに載せるコンテンツを企画提案するというもの。かつては、こうした企画は、現役のママをたくさん集めてのヒアリングで成り立っていました。
でも、仕事か子育てかではない、どちらにも当てはまる、でもどちらにも寄らないライフスタイルも増えつつある今、企業はどこを向いて企画を練るべきか、難しい局面にあるようです。ご提案させていただいているのは、私たちが子連れスタイルや授乳服で日々乗り越えている、どうやって子育てと仕事のバランスを、よりラクに、より自然に、より自由に、実現できるのかというもの。それが現役ママたちに響く提案と言っていただけるということに、この活動の意義を感じさせていただいています。ちなみに、これまでに採用されたのは、3色ペンを使う手帳の使い方や、子どもの突然の病気などのハプニング時に感謝の気持ちを伝えるかわいい付箋やプチギフトなど。聞けば、確かに!なのですが、ここで使うのか!を提案させていただいています。
【with個人】“よい加減”の子育てを見てください!
- 2014年1月のオープンハウス。おもちゃコンサルタントを囲み、人の子育てを見る機会となっている
ママたち一人ひとりを対象にした取り組みでは、子連れのママが集う「オープンハウス」や、子連れで気軽に参加できるバスツアーなど、子連れで社会に出る機会をつくりだしています。
その背景にあるのは、「他の人たちの子育ての、よりラクになるお手本を見てもらいたい」という気持ち。やっぱり、いくら言葉で伝えても腑(ふ)には落ちないのが人間なので、自分の目で見たり、体験したり、と、実感するのが一番。
たとえばオープンハウスで、先輩ママたちの様子を“見る”ことで、「あ、子どもは別にその辺に自由にごろごろ寝かせておいてもいいのね」と“よい加減”の子育てがわかる。
人の子育てを見ていないと、不安で当然、わからないのも当然なんですけどね。だからこその機会なのです。
次回からは上記3つの代表的な事例それぞれについて、詳しくご紹介していきたいと思います。
(次回は11月12日掲載予定です)
- 2014年1月のオープンハウス。おもちゃコンサルタントを囲み、人の子育てを見る機会となっている