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原発避難の職人、ゴルフクラブを子供用に再生 福島第一原発事故で秋田市に避難しているゴルフクラブ職人山田雅彦さん(62)が、不用な大人のクラブをジュニア用に作り直して提供している。若い世代は体の成長に合わせてクラブの交換が必要で、その度にお金がかかる。山田さんは、親の経済的負担を減らすことで競技人口を拡大し、競技力の向上につながればと考えており、「秋田に恩返ししたい」と言う。

  山田さんは、プレーヤーの体格、癖に合わせてクラブのヘッドの角度やシャフトの長さを調整する「フィッター」が本職。福島県南相馬市から秋田市に引っ越し、2011年5月、同市桜の練習場の好意で場内に修理・販売の店を開いた。腕前が評判になり、今では多くの常連客がいる。

  福島では、大人だけでなく、プロを目指すジュニアの道具も調整。避難後、山田さんを頼って福島から来店した選手もいたという。

  震災から2年たった頃、部品交換などで客から引き取った大量のシャフトを利用し、ジュニア用のクラブを作ろうと思いついた。

  山田さんによると、ジュニアは、早ければ半年に一度、クラブの交換が必要。体に合わないのに使い続けると、正しいスイングができず、悪癖がつくという。

  しかし、一般的なクラブは1本約1万円。セットで買い替えると10万円以上かかる。才能があっても、家庭の経済的な事情で競技を諦める選手も多いという。

  作り直すクラブの材料には、新しい部品のほか不用部品も使うため、既製品の半値ほどでできる。さらに、体の成長などで合わなくなったクラブは「ジュニアバンク」としてストックし、個々の選手がその中から自分に合ったものを選べる仕組みにしたいと考えている。

  店がある練習場で昨年からジュニアにクラブを提供したところ、今年、高校生2人が国体選手に、中学生2人が県の強化選手に選ばれた。「以前は教えた通りに子供ができても、球が飛ばない、曲がる、ということがあった。だが、今は教えたことがきちんと結果に出る」と、指導する鎌田崇司プロ(42)の評価も高い。

  昨冬から使っている秋田市立河辺中2年生(14)は「振り抜きやすく、飛距離も出る。自分のスイングで結果が出るので楽しい」と笑顔。同市立御所野学院中2年生(14)も「フォームを崩していたが、新しいクラブで距離や方向が安定した」と手応えを感じている。

  県ゴルフ連盟によると、県内のジュニア会員は現在約80人。2010年頃の150人をピークに年々減少しているという。

  山田さんは「ここで店を持てたのは秋田のゴルフ関係者のお陰。ジュニア選手の競技力を高めることが私の恩返し」と話している。