
- 2015年の国際生物学五輪日本代表選抜の流れ
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国際科学オリンピックに出場するためには、国内大会を突破しなければならない。
生物学の場合、国内大会にあたる日本生物学五輪の予選、本選、代表選抜試験のハードルがある。8月中旬、筑波大学(茨城県つくば市)で開かれた本選。白衣を着た中高生たちが慎重にピンセットを動かし、体長3ミリほどのショウジョウバエを顕微鏡のレンズの下に置いていた。
全国で3265人が参加した予選を勝ち抜き、本選に進んだのは80人。2日間に出される計4問は、実験の手際や正確さのほか、観察の結果から答えを導く論理性も評価の対象になる。
1日目は、ハエを顕微鏡でのぞいて雄、雌の違いをスケッチしたり、幼虫のうちに雄、雌を簡単に区別できる方法を考えたり。2日目は、4種類のカーネーションから取り出したDNAを特殊な装置で分析し、ほかの植物の遺伝子を組み込んだものはどれかを突き止める問題もあった。
本選、代表選抜試験を経て、来年夏の国際生物学五輪に進めるのは4人だけだが、問題作成に携わった和田洋・筑波大教授(45)は「問題を解きながら専門家がどんな視点で生物の研究をしているか追体験できるように工夫している。科学の面白さを体感してほしい」と話す。
参加した高校3年生の女子生徒(18)は「『これ覚えといて』と言われるばかりの高校の授業と違って自分の頭で考えるのは本当に楽しかった」と笑った。
参加者は3泊4日の日程で集まり、試験前に実験器具の基本操作を学ぶ「予備体験」もあった。大学院生らから生物をそのまま観察できる実体顕微鏡の使い方を教わった男子高校生は、ハエの複眼を目にして「すごい」と感嘆の声を上げていた。筑波大などの研究施設訪問も行われ、マウスの細胞培養など最先端科学に触れる機会が用意された。
今年、大会スタッフを務めた筑波大3年の相馬朱里さん(21)は高校時代に日本生物学五輪を経験し、「自分であれこれ考える面白さや、ワクワクした感覚が忘れられない」。将来、高校の生物教師になり、生徒を五輪に連れていくのが夢という。
一方、国際物理五輪の国内大会にあたる「物理チャレンジ」は、大会前に実験リポートの提出を課している。
今年のテーマは「水溶液の屈折率」。砂糖水や食塩水の濃度を変えると光の進み方がどう変化するかを、自ら考えた実験方法で測定する。リポートの書き方は細かく指示され、論文の基礎基本が身に付く仕掛けだ。
競争の側面が注目されがちな科学五輪だが、科学者の卵の育成にも貢献している。