「そういう事なんだよねっ」
困った顔はかわらないけど
愛実は明るく言った。
そしてそれが悲しかった。
この子は今努めて明るくしている。
怒られると思っているんだろうか
嫌われると思っているんだろうか
わからない。
今日初めて見せる暗い一面。
ただ、包んであげたかった。
愛実の気持ちを解いてあげたかった。
僕はベッドに寝転がり、少し端に寄り、言った。
「あー抱き枕欲しいなぁ。どこかに抱き枕ないかなぁ。」
愛実が飛びついてくる。
俺の腕の中にすっぽりと収まり、腕をまわしてくる。
何も言わずに、俺を強く抱きしめていた。
「よしよし。」
俺は愛実の頭を撫でていてあげた。
何も喋らなかった。
何も聞かなかった。
ただ、俺は彼女を許容していた。
「大丈夫だよ。」
愛実は何も言わず抱き返してくる。
10分、15分、時間がたって落ち着くと、愛実の体から緊張がとれた。
「お母さんとね、仲がよくないの。」
彼女は言葉を続けた。
「多分、嫉妬だと思うけど。
お母さんは新しいお母さんで、後からうちにきたから
それでもお父さんからしたらあたしは可愛い娘。
お母さんはそれが面白くなくて、たくさんいやがらせされた。」
俺は、ただ、頭を撫でて聞いていた。
「勉強をしっかりするっていう名目でね、あたしは家を出されたの。
なのに突然仕送りが遅れたり、なかったりする。
財布の中に20円しかない時もあった。
おかしいよね。
一番辛かったのは、模試のお金が払えなかった事。」
愛実は、時々強がって明るい声を出していたが
やっぱり泣いていた。
実は俺の家も家庭環境はぐちゃぐちゃ。
小学生の頃に両親が離婚して
父親はつい数年前に再婚して
やっぱり俺と後妻との関係はうまくいってない。
痛い程よくわかった。
"風俗をするのが一番楽な道"
なんて揶揄する言葉を聞いた事がある。
でも、高校生の愛実にはそれしかなかった。
一番楽だけど、それしか選べない
一番厳しい道。
俺はもう一度、愛実を抱きしめた。
