「くっ、うぅ···。」
よろめきながらも立ち上がる。
「確か俺は闇に飲まれて···」
辺りを見回すが、視界に入るのはボロボロの廃墟のような一室だ。
外の気温とほぼ同じで、少し肌寒い。
「俺は工事現場にいたはず。」
いまは何時だ。ふと時間が気になった。長い間家を空けていたら困るからだ。
ふと腕時計を確認すると、時計盤は黒く何もない。
ん?腕時計?
ここに来るとき、俺は携帯しか持ってこなかったはず。
ポケットを探るが、携帯は何処にもない。
「どうなってんだよ。」
クエスチョンマークばかり頭に浮かぶ。
パチンッ!
不意にあの音が鳴り響いた。その瞬間に腕時計の時計盤から光が投射される。
ホログラムというやつか。
あの仮面の男が少しデフォルメされたような、
二頭身のキャラクターが時計盤の上で話す。
「ホールに集まってね!ホールに集まってね!ホールに···」
同じ内容をひたすら繰り返す。
いい加減腹が立った俺はその男をつつく。
すると、MAPと左上に表示された地図が出る。
赤い点が4つ、黒い点が1つ。そしてホールに▲のマークが表示される。
恐らくこの黒い点は俺のいる場所を示しているのだろう。
「俺の他にも誰かいるのか。」
不安の裏に密かな期待を抱き、俺はホールに向かった。
ホールの中央に、あの男は立っていた。
それを取り囲むように四人の人が立っていた。
一人目はスポーツでもしていそうな、体つきが良く性格もケンカっぱやそうな感じだ。
二人目は優しそうな青年。顔立ちは良く、女性に人気がありそうだ。
行け好かん。いや、なんでもない。
三人目は真っ赤なドレスに身を包んだ若い女性。手には宝石の指輪が輝いている。
最後は、俺と同じ制服を着ている高校生だ。身長は低い。
だが、あの顔は見たことがない。他学年だろうか。
一通りメンバーを確認し終わると、いきなりスポーツマンが叫んだ。
「んだよ!いきなりこんなとこに連れてきやがって!」
続き、ドレスの女が言う。
「早く帰らせてよ!」
残る俺を含む三人は黙って仮面の男を睨む。
すると、沈黙を貫いていた男が口を開いた。
「そう慌てるな。まずは互いの顔合わせといこう。」
「んなこと言ってんじゃねーんだよ!早く帰らせろ!」
そんなスポーツマンの野次もどこ吹く風で、男は続ける。
俺にスポットライトが当たる。
「冴木 悠牙。8月14日生まれ、17歳。高校二年生。部活は無所属だ。」
スポットライトがスポーツマンに当たる。
「高橋 亮 5月10日生まれ。24歳。知っているとは思うが、プロバスケプレイヤーだ。」
はじめて知った。何せバスケにはあまり興味がないのだ。
続けて、紹介していく。
「椿 雛 6月3日生まれ。32歳。キャバ嬢だ。」
「桜井 透7月24日生まれ。19歳。大学一年生。怪奇現象についてのサークルに所属。」
そこで桜井が顔をしかめるのが、気になった。
何かまずいことでもあったのだろうか。
そして最後
「柊 なな 12月13日生まれ。高校二年生。部活は無所属だ。」
同い年?けれども覚えがない。俺が忘れただけか?
あとで修に聞いてみよう。
そして男は続ける。
「さて、先程から帰らせろと喚いていたな。」
そう言って手を横に出す。すると、その先の壁が歪み、闇ができた。
「さぁ、帰りたいやつは変えれ。ジーニアスの加護が要らぬと言うやつは。」
再び耳にするその言葉に反応した。
「なんだよ、ジーニアスの加護って。」
男は答える。
「常人のそれを遥かに越える力を手にすることができる。」
「ばかばかしい。」
女はそういい、迷うことなく闇に消えていった。
桜井が高橋に訪ねる。
「あんたはええんか?帰らんで。」
何か怪しい口振りだ。
男は返す。
「あ?力って言うのに興味がわいた。俺はまだまだ強くなりてぇ!それも世界一な!!」
すでにその目には、メンバー一の闘志が宿っている。
「では、この場にいる全員は参加でよいな。」
皆無言の返事で返す。
すると男は手を握る、すると壁の闇が消えた。
「では、ゲームの説明を開始しよう。」