◼️父と僕の終わらない歌(2025)

良い映画とは、時間の経過も忘れ、見終わった後に、また観たくなる作品だ。本作は、そんな作品だった。

(あらすじ)
洋楽の似合う横須賀を舞台に、寺尾聰扮する間宮哲太と、その息子役雄太に松坂桃李、母親役律子に松坂慶子の家族の物語り
哲太は、地元横須賀のドブ板通りにある楽器店を営んでいる。

ある日、哲太は息子を愛車のアメ車(1964年式 Oldmobile Dynamic 88Fests Staion Wagon)で駅まで送るが、自宅迄の帰り道がわかなくなる。

家族が心配して、病院に哲太を連れて行くと、医師(佐藤浩市)よりアルツハイマー症の初期と告げられる。

哲太は、地元ではジャズフェスにも出演する程の有名なボーカリストだった。

息子は、免許を返納した父親と良く市内をドライブするようになる。車内では、父親がカセットテープをバックに歌っていた。そこで、カープルカラオケ(車内カラオケ)の様子をYouTubeに上げたところバズった!

エンディングでは、哲太が地元のライブ会場でライブを行う。

(感想)
本作は、アルツハイマーをテーマしたドラマに見えるが、実は父子の絆を主眼に置いていると感じた。そこに松坂慶子扮する律子が加わり家族愛が描かれている。
哲太は、若い頃から地元仲間とバンドを組んでおり、75歳になってもその関係は、続いている。

年老いても、家族の絆と親友をはじめとする地元商店街の人々との関係が脈々と続いている姿には、嫉妬さえ感じる。

アルツハイマーを主体と考えると軽さを批判する面もあるが、アルツハイマーになって父子の絆を見つめ直し、深まって行く様は、やっぱり親子なんだと感じる。

(雑感)
本作の撮影は、僅か1ヶ月半だったらしい。作品も90分と凝縮されており、時間の経過を忘れさせてくれる展開だった。
この歳になるとトイレにも近くなり、長尺の映画は、辛くもあり冗長だと退屈してしまう。

キャスティングは、まず息子役に松坂桃李が決まり、寺尾聰が息子役が松坂桃李だったから快諾したそうだ。これに松坂慶子を加えた配役が決まっている。

本作は、イギリスでの実話が原作で、それを脚本家三嶋瀧朗が日本版に脚色し、監督小泉特宏が映画化した。

役所広司主演の「Perfect Days」では、同じアナログのカセットテープが登場するが、この作品にも通じる日本人として普遍的な情感を感じる作品だった。

また、見たくなる映画だった。
WOWOWで放送されたら、録画して何度か観たい。

📌 追記

 本作で印象的なのは、やはり寺尾聰の“歌”だ。
彼は、俳優としてだけでなく、1981年に「ルビーの指輪」で大ヒットを飛ばした歌手でもある。
あの低く、深みのある声が、映画の中で年齢を重ねた男の哀愁と説得力を生み出していた。
歌手としてのバックグラウンドがあってこそ、哲太という人物に「歌う理由」が自然に宿り、ラストのライブシーンも感動的に映る。
単に“演じている”のではなく、“生きてきた人が歌っている”という実感があった。

◼️「博士の愛した数式」(2006)との共通点

『博士の愛した数式』と『父と僕の終わらない歌』には、共通するモチーフがある。
・記憶の喪失:アルツハイマーや脳損傷という「時間の障害」
・日々の営み:一見地味な日常こそが、かけがえのない“関係性”を紡いでいく
・家族や他人とのつながりが、生きる意味や存在感を確かにしていく