小説の中に流れている時間、視点の置かれた時間について確認しよう。
小説における「視点のブレ」の微妙なケースに触れるために、さまざまな準備をしています。
前回までに、動詞の時制を考えるときに大切な「テンスとアスペクト」という考え方に触れ、動詞で語られる内容と時間との関わりについて確認しました。
大切なことは、動詞があらわす「動作や状態」と「時間」とは、「過去」「現在」「未来」という単純な問題だけではなく、複雑な関わり方をする、と知っておくことでした。
さて、今回も前提として確認しておきたいことがあります。
小説の中に流れる時間と、そのうちどの時間に視点が置かれているかという問題です。
小説の中には、通常、時間が流れています。
例えば、浦島太郎なら、
若者である浦島太郎が亀を助けて竜宮城に招待され、数日遊んで帰ってきたら故郷の風景が様変わり。慌てて玉手箱を開けるとおじいさんになってしまう。
というストーリーがあります。
そのうち、亀を助けたときは、おじいさんになったときより「前に起きたこと」なのは明らかです。
そのような小説内の時間の流れのどこに視点を置くかで、「視点のブレ」に見える表現なのかどうかが変わってきます。
私が考える、「小説内の時間と視点の関係」の基本的なものを三つご紹介します。
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①現在起きつつあることとして書く。
(小説内の時間:現在、視点:現在)
これから起きることを、登場人物と一緒に経験するように書く方法。
例:太郎は空港のフロアを、汗を流して走る。ANAのマークを見つけ、迷わずそちらを目指す。ガラスの向こうの出発ロビーは、たくさんの家族連れで賑わっているのがわかる。息が切れてきたが、目だけは動き回り、家族と一緒にいるはずの花子の姿を探す。
②過去の出来事を、現在から振り返って書く。
(小説内の時間:過去、視点:現在)
過去にあった出来事を、思い出しているように書く方法。
例:太郎は空港のフロアを、汗を流して走った。ANAのマークを見つけ、迷わずそちらを目指したのだという。遠目にも、ガラスの向こうの出発ロビーがたくさんの家族連れで賑わっているのがわかった。息が切れたが、それでもあきらめず、花子の姿を探した。
③過去の出来事に没入し、その場にいるように書く。
(小説内の時間:過去、視点:過去)
過去の出来事の登場人物に感情移入し、その場に一緒にいるような気分で書く。
例:太郎はタクシーの運転手に一万円を渡し、釣りも受け取らずに飛び出した。
太郎は空港のフロアを、汗を流して走る。ANAのマークを見つけ、迷わずそちらを目指す。ガラスの向こうの出発ロビーは、たくさんの家族連れで賑わっているのがわかる。息が切れてきたが、目だけは動き回り、家族と一緒にいるはずの花子の姿を探す。
小説内の時間のどこに視点を置くか。
そこをしっかり意識することによって、「視点のブレ」かそうでないのかの判断がしやすくなります。
なぜなら、「視点のブレ」の問題とは、「語り手」と「小説世界を経験する人」が知りえないことを書いてしまうかどうかの問題だからです。
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さて、そろそろ、「視点のブレ」の微妙なケースを扱えそうです。
「いい加減準備はできたのかね?」と上から目線でくつろぐチワワしぇんしぇー

「①現在起きつつあることとして書く」をベースとして、後半一箇所、「③過去の出来事に没入し、その場にいるように書く」手法を使った作品。
『クランチ・ベスト2013』 掲載作。
「夜明け間際の吉野家で」