オペラで学ぼう! 近世英国史 ベッリーニの「清教徒」 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録


 さて、今回は、「オペラで学ぼう! 近世英国史」と題して、ベッリーニ
 
の「清教徒 (I puritani)」についての記事を書きたいと思います。
 
 
 (←残念ながら日本語字幕がありません)
 
 
 最初に断っておきたいのですが、この私、実は熱狂的なパンクロックのファン
 
でして、オペラについては、それこそずぶの素人──ですので、これからお
 
話することは、オペラ超初心者の戯言として読んでいただければと思います。
 
 
 ご紹介するのは19世紀の作曲家ベッリーニの「清教徒」です。
 
 この「清教徒」というオペラ、舞台はイギリス、時は清教徒革命末期、1640
 
年台の終わりぐらいでしょうか。国王は既に処刑されているから革命後かと思
 
えば、王党派との戦闘がまだ続いてるし・・・と、どうもよく分からないので
 
すが、実はそんな歴史的な考証など何の意味も為さないようなムチャクチャな
 
物語だったりします。
 
「オペラで学ぶ」と書きましたが、辛うじて勉強になるのは単語ぐらいなもの
 
で、これを見て、清教徒革命を知ったつもりになるとえらいことになると思い
 
ます。(そんな人はいないと思いますが)
 
 
 物語は主人公エルヴィーラの悲恋を軸に進みます。
 
 
 エルヴィーラは清教徒の父を持つ箱入り娘。父の決めた婚約者、清教徒リッ
 
カルドとの結婚の時が迫っていました。しかし、エルヴィーラは王党派のアル
 
トゥーロに恋をしていて、悲しみに暮れる娘の本心を知った父親は、娘とアル
 
トゥーロとの結婚を認めます。
 
 このあたりの設定からして、既にストーリー破綻の暗雲が垂れ込めています。
 
王党派と清教徒が敵味方となって内戦をしている最中に、清教徒の父親が王

 
党派のお婿さんを認める? そんな──
 
 いや、この道ばかりは格別、主義主張で恋する心を変えられるはずもないと、
 
無理矢理、納得して先に進みましょう。
 
 
 

 晴れてエルヴィーラとアルトゥーロの結婚の日・・・
 




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 突然、現れたこのおばさんは誰?
 
「私は亡き国王の未亡人」 とか言ってるけど、まさか!
 
 慌てて役名を確認!
 
 そう、その「まさか」でした。この人、ブルボン家出身の英国王妃アンリエ
 
ット・マリー・ド・フランスです。こんな所で英国王妃が一人で何をうろちょ
 
ろしているのでしょうか。しかも、その英国王妃にエルヴィーラが──
  
  




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 王妃の運命を知った王党派のアルトゥーロは、結婚式直前に、王妃を救い出
 
す決意をします。何を考えているのでしょうか。花嫁のベールを被せて、王妃
 
を外へ連れ出そうとするアルトゥーロ。しかし、その行く手にエルヴィーラの
 
元の婚約者リッカルドが──
 

 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 もう、ここまで来ると、いちいち突っ込んでいたら体が持ちません。
 
 
 ドタバタ喜劇としか思えないような展開の「清教徒」ですが、しかし、この
 
物語はベッリーニの音楽によって本物の悲劇となっています。
 
 式の直前に花婿がいなくなったことを知ったエルヴィーラの「狂乱の場」は、
 
このオペラ最大の見所で、錯乱した花嫁の姿に、不覚にも目に涙さえ浮かぶの
 
を感じたのでした。
 
 
 
 アンナ・ネトレプコ頑張る!
 
 
 ご紹介した作品では、アンナ・ネトレプコがエルヴィーラを演じています。
 
オペラの場合、容姿は二の次なので、ロマンスの主人公が残念なことになって
 
いる場合も少なくないのですが、ネトレプコの演じるエルヴィーラは、悲劇の
 
ヒロインそのままのイメージです。
 
 Youtube に 「狂乱の場」 がありましたので、ここで改めてご紹介したいと思
 
います。
 
 是非、鳥肌の立つような美しい狂気をご覧ください。


( 2分40秒からがお勧めです )