素敵な県道に、近頃よく出会う。

上米内を通る36号線も今日お気に入り登録。
トトロを彷彿とさせる小川沿いの里山。

どうしてこんなに里山がいとおしいんだろう。

突然続く夏日に弾かれて、本州一寒い薮川へ向かう。

シラカンバの爽やかな梢が日を遮って涼しい。
更に涼を増す岩洞湖。

水辺から渡る風が当たるベンチで珈琲たいむ。

あまりに心地が良いからしばらく読書に洒落こんだ。

読みかけの小説が終わってしまったから、歩を進めることに。

岩洞湖から盛岡方面へ少し戻って右手に上がると、天峰山がある。

岩手山を一望。

今日は晴天だけど冴えておらず、うすぼんやりと霞む。

眩しさも相まってよく見えない。

まるで夢うつつ。

振り返ると、真っ青な青空を背に相棒が輝いていて思わず見惚れるかっこよさ。

そして草むらを掻き分ける楽しさよ。

少し進んでグネグネ峠道を下る。

山の斜面に沿う切り立った峠。

山肌側では山藤が満開。
人知れず、ひっそりと見頃を迎える山藤は、旺盛ながら慎ましい。

風に乗って時おり運ばれる香りにめまいを覚える。


盛岡への裏道を辿る道程に出会う里山。

山を奥に、緩やかな斜面に段々続く田んぼには均等に電柱が並ぶ。
泥と草の薫風。

その様は、何故か懐かしさと共に強烈に胸を焦がす切なさがある。

叫びたい訳じゃない
辛い訳じゃない
悲しくもない
だけど微笑みではない

頬を歪ませながらもなるべく表情を変えないままに、今は泣きたい。

今ただ泣きたい。


バイクで走るその瞬間にしか味わえない刹那の景色は、時おりどんな感情なのか分からないほどたくさんの波紋を広げる。

今日は少し敏感だ。


道を渡る蛇や毛虫を間一髪で避けて走り、狸の横断を見守りながら、街へと戻る。

暑い。


ああ、旅に出たい。

うんとうんと長い、旅に出たい。