仄赤く夜空を囲う雲が、なぜか少し赤く、明るい。突然聞こえたのは、白鳥の声。北へ向かうはずが、東へ。たった二羽。お互いを確認し会うように鳴きながら飛んで行く。その声の大きさに思わず空を仰ぐ。僅かに赤い曇天に、まっさらな白い羽が浮かび、迷うことなく進んで行く。すぐに雲に紛れて見えなくなったけど、鳴き声だけが響いていく。季節は次々通りすぎて、私を置いていく。何回目かわからないほど待ち望んだ春はもう来てるのに、また置き去りだ。うんざりだ。