遠雷が聞こえる。
私はベランダに出て空を見ていた。
南西の空に巨大な積乱雲。
風が生暖かく湿り気を帯びてる。
不謹慎だが、嵐の予感に少し浮かれる。
空の高いところで膨らむ雲が、内側から膨張していくようにあっという間に空を覆った。
ベランダの南東で、空を切り裂くように稲妻が走る。
轟くのは、重低音。
黒い雲が広がるのに、不思議な明るさ。
小さく見えていた稲妻が、次第に近づいてくる。
目が離せない。
雷鳴が割れるような音になってきた。
ベランダから真南、目の前のタワーマンションの向こうにひときわ明るい稲妻が走り、ほぼ同時に炸裂するような雷鳴が響いた。
そこでついに雨が降り出す。
風が唸るように通り過ぎて、走り出した人々を無情にも濡らしていく。
身の危険を感じ、室内へ。
真上が光り、耳をつんざく破裂音が中点から尾を引いて西へと走る。
雨はたたきつけるほど強くなり、土の香りがむせ返ってきた。
風が鳴る。
何故かはわからないけれど、どんな猛暑より、さんさ祭りより、強烈に夏を感じる。
一塊の雷雲が通り過ぎ、南から青空が見え始めた。
雨に洗われたように澄んだ青空と夕日に染まった雲。
名残惜しむように響く雷響。
心奪われるように見つめていたけど、やはり恐ろしい雷雲が去ってほっとした瞬間だった。
閃光が走り、打ち上げ花火の様な炸裂音が響く。
どこかに落ちた。
呑気に見物していた事を叱咤された様に感じた。
どうか雷害が出ていないことを祈る。