雨も上がり、広々とした道を悠々と走行。

 

段々車線が増えて、街中に入ってきた。

何となく見覚えがあるような…?

ここ通ったことあったかなぁ。

 

桜の頃には大勢の観光客が足を運ぶ弘前城には、まだ行ったことがなかった。

弘前の市街地を走り弘前城へ向かう。

 

途中、町屋造りの素敵な質屋があったので、一瞬見とれてから視線を戻したら、

前の車が停車していて、目の前に迫っていた。

「あ、終わった…」

急ブレーキをかけながら、ちょっと諦めてしまった。

しかし、相棒は聞いたことのない悲鳴を上げながらもギリギリ止まってくれた。

少し右にハンドルを切ったのも良かったのかも。

呼吸が浅くなるほど動揺した。

お父さんが守ってくれたに違いない。

よそ見運転、ダメ、絶対。

なのに街中には古くてモダンなビルがあったりして私の視線を誘惑する。

危険な街だ…。

 

気を取り直してとりあえずバイクが止めれる所を探さなくちゃ。

弘前城のお堀の周りを走っていたら「ねぷた村」という施設があったため入って停めていいか聞いてみた。

「弘前城の周りは停めれるところないので、ここなら無料で停めてもいいですよ」

と、隅の方に停めさせてくれた。なんという親切…!

おりんごがたわわに実ってる!

 

せっかくなので「ねぷた村」の中を散策してみたところ、ねぷたのお囃子を聞いたりできるみたい。

後はお土産屋さんにお食事処が並んでいた。

少しだけ空腹の予感がしたため、焼き立ての南部せんべいをば。

ちょっとおこげも出来てる手作りのあったかいおせんべい。

出身地柄おなじみなんだけど、意外なほどにおいしかった。

モクモクした食感がお腹にしっかり届きます。

 

食べ歩きしながら向かった弘前城内。

桜の立ち並ぶお堀は、花が無くても美しい…。

満開ならばさぞ見事な眺めなんだろうな。

 

紅葉が始まって、色めきだったよう。

お堀に姿を映して秋の化粧を施し始めたみたい。

鯉がいたので試しに手を叩いてみたら、みんな口をパクパクさせながら寄ってきた!

ぬか喜びさせてしまった…ごめん。

よく懐いてて、可愛がられている様が想像できてほほえましい。

 

苔むした石垣は、どっしりと積み重ねた歴史の物語。

どこもかしこも美しく感激していたが、城内にはとにかく立派な大木が多かった。

どの木も静かなオーラが漂っていて、神様みたいだった。

   

 

そしてやはり、建造物も素晴らしい。

今、石垣の補修工事をしている関係で、天守閣は石垣の上から移動されぽつねんと平地にあった。

やはり天守閣は権力の象徴らしい圧倒的な存在感がある。

中は展示場。

お城の階段はどっこも急なんだなぁ…。

昇り降りが恐ろしい…。

戦に備えた小さな窓。壁の中にも鉄砲の玉を防ぐために石が埋め込まれているんだそう。

 

杏葉牡丹紋を付けた駕籠が妙にドラマチックだ…。

中は畳敷きになってて御簾からうっすら外が見える感じ。

座布団でも敷いてもらわないと腰に来そうだ。

 

模型を見るに、中庭がふんだんに散りばめられていてかなり贅沢な造りだ。

この廊下に立って中庭を眺めてみたいなぁ。

 

この模型の天守閣があるところの石垣を補修工事していたのだけど、

とんでもない規模の大きさ。

 

しかも石垣の石一つ一つに番号を付け、あたりを引いてる繊細な作業。

玉勝温泉のおかみさんから「10年かかる大工事」と教えてもらった時、そんなにかかるもんなんだーとぼんやりとしか思っていなかったけど、

これはかかるよ10年…。

 

漆喰壁の見事な東内門を潜り、

 

鴨と白鳥(何故居る…)の泳ぐ内堀を渡って、再び相棒の元へ帰ってきた。

 

いいお城だった、行って良かった。

けぶる様に降った雨が、通り過ぎた歴史を少し寂し気に感じさせた。

 

弘前市内から抜けて、白神山地へ向かう。

川沿いの道を辿ると岩木山が見えていた。

頭が隠れているけれど、私が来るときはいつも裾野まですっぽりと雲を被ってたから姿を見たのは初めて。

なんて力強い独立峰!

岩手山に似ている。

 

岩木山に見守られる田んぼは稲刈りが始まったところ。

地域や気候によって掛け方が違うと思ってたけど、杭掛けとはせ掛けが隣同士になってる。

この距離で日当たりが違うってこともなさそうだけど、お米の種類の違いなのかな。

 

リンゴ畑と田園が続く静かな快走路が続く。

どっちも鈴なり、実りの秋真っ只中。

なんという幸せな道なんだ!