歳を追うごとに季節が鞣されていく。
すり減らす事ばかり。
毎日すり減らして、疲れる事ばかり。
空っぽだけど一杯。
「日常」を、日常として送っていたら、岩手山も姫神も早池峰も遠い御伽噺。
前向きに、ポジティブに、なんて疲れるだけだ。
染み込むのは、もっと後ろ向きな言葉。
透き通った後ろ向きな言葉。
自分のふがいなさに唖然としながら会社を出ると、空気が違った。
夏の匂いがしていた。
湿った植物の匂い。
まだ明るい西の空。
今から、どこにでも行ける予感が漂っている。
毎年こうだったかな。
こんなにも可能性を感じる季節だったかな。
鞣されていたはずの季節が鮮明に目の前に現れて少し困惑している。
ああ、でも、
なんでもできるよ。
今なら。
今だけ私は無敵。