ああ、楽しい事ばっかりだ。

そんな時の隙間に、ふっっと滑り込んでくる。


「あの時あんな言い方しなきゃ良かった。」

「あの時あんな態度取らなきゃ良かった。」



初めに私を支配したのは、必死に戦った姿。

ほほがグッと上がる笑顔や、病院での日々。

反芻されてはいたずらに涙腺を刺激した。

でも、覚悟する時間も、尽くす時間も父はくれたし、
仕事が忙しかったのもあって、徐々に落ち着いた。

辛かったけど、忙しくせき立てられていたのは、今思うと、助かってた。


時間が経つにつれ、思い出されるのは、元気だった頃の記憶。

何気ない会話と、わずらわしいくらい側にあった日常。

当たり前だったから、大切になんかしてなかった。

今になって、それが悔やまれて、

ふと瞼に浮かぶ元気な姿に、後悔が付き纏う。

今更、もう居ない事に動揺してる。


ついに納骨の日取りが決まり、
私たちを守ろうと建ててくれた、
帰ることを切望していたこの家から離れる父。

「お墓に入るなんてまるで死人じゃないか」と、訳の分からない事が頭に浮かんだ。



まだこれでいいんだ。

動揺も後悔も抱えながら、でも捕われずに、大切な人達と楽しい時間を過ごしていければいいんだ。