父はたくさんの管や機械に囲まれてた。

人口呼吸器を付けるにあたり、大変な苦痛を伴う為、薬で寝かせられてる状態だった。

でも、声をかけると反応するし、焦点が合わない事も多いけど目を開けたりもした。

目を覚まさせると苦しいんじゃないかと心配ではあった。

父は聾学校に勤めていた事もあり、手話が出来る。

人口呼吸器を着けていると声が出ない。

覚醒してる時は、手話で話した。

ミミズみたいな字だったけど、筆談も出来た。

覚醒したり、寝たり、繰り返しだった。

寝てる時に行って、覚醒した時に「ちんは?」と気にしていたと言う。

それは私には何より救いだった。


昨日、先生と話した。

いいニュースと悪いニュース、半々。

いいニュースは、白血球が増える兆しがある事。

肺の影が全体に広がってるのに、酸素を取り込む量が増えて来た事。

悪いニュースは、肝機能と腎機能が悪くなった事。

不整脈が出てる事。

他にも、おしっこがたくさん出始めてるとか、
抗生剤を変えたとか、たくさん、良くも悪くも色々あった。


今日の昼、父は、覚醒していた。

たくさん話しかけて、手話で話した。

でも覚醒しすぎたのだろうか。

とてもとても悲しい事を言った。

色々感じ取ったのだと思う。

私は、よく分かった。

一連の気持ちの変動が。

似てるもの。

思考がすごく似てるから、お父さん、分かってるよ。

お父さんは、「がんばれよ」って、出ない声で言ってた。

「うん!」って言ったら、頷いてた。

私はやっぱり心配な子なんだね。

心配してて。

頑張るから。


夜、先生からお話があった。

覚醒状態の父と一緒に聞いた。

白血球が増えた、と。

呼吸が、ほとんど自分で出来てる、と。

明るいニュースだった。

父も笑ってた。

良かった、良かった。良かった!

今夜、きちんと呼吸出来れば、人口呼吸器外すって。

話せるよ!また話せる!

氷が溶けたようだった。


父と二人きりになった時、
「お父さん、良かった。私も頑張るね」って言ったら、

うなずいて、

「やったよ」「よかったよ」って、筆談してくれた。

誰よりも、父自身が嬉しいんだ。

でも、本当はまだ手放しで喜べない。

増えた白血球が正常な細胞か分からない。

それでも、先生は私たち全員のメンタルも考慮して、父の前でこの話をしてくれたんだ。

お父さん頑張ったね。

たくさん頑張ったね。

支えてくれてありがとう。

本当に頑張ったね。

もう少しだからもうちょっと辛いの我慢してね。


先生、先生で本当に良かった。

迅速な対応と的確な判断で、父を始め、私たち家族を救ってくれてる。

先生は私たちのブラックジャックです。