少し前から止めていたタバコに火を着け、缶コーヒーを開けて、

岩山展望台から夜景を見ていた。

凍て付くような風を頬に受けながら、ただ眼下にある現実を眺め、ため息をつく。

ブワブワと膨張して掴めなくなった波状が何を求めているのか分からなくて、

今、落ち着くためには何だって試してみようと思った。

止めたはずのタバコを燻らせてみたけど、これじゃなかった。

久しぶりに吸う煙は、前とは違う香りで、

少しの満足感を与えてくれたけど、一瞬でしかなかった。

冷たい空気も、甘ったるいコーヒーも、香ばしい煙も、私を満たしてはくれない。

凍結した路面は、バイクでの走行を望む私を嘲笑っている。

毎年、この季節が辛い。

安定を欠く。

安全地帯が欲しくて、右往左往してしまう。

夏休みから、あんなに変わったと思ったのに、また翻弄されてしまった。

だからってもう酒や娯楽に逃げたりはしない。

冷静に、投げやりにならずに、一つずつ紐解いて行く。

力まずに。

もう一本、タバコに火を付ける。

大きく吸い込んで、ゆっくり吐き出す。

そう、今ここで出る答えなんて、求めてない。

「落ち着いて。落ち着いて。」
と言い聞かせながら自分をあやす。

今までの思慮を経験を思い返して、
オートマチックに変動する感情の波をコントロールできる術を模索している。


フィルターぎりぎりの葉っぱが燃えた頃、
ようやく家に帰れる気持ちになった。

大丈夫だ。
明日は明るい。

明日の明日はもっと明るい。

その根拠は、今までの足跡全てだ。


おごりではなく、謙虚に。