記録的な猛暑だった今年の夏も、もう勢いを無くし、
まだ傍に来ていなかったはずの秋に、急速に塗り替えられて来た。

陽射しはまだ夏色を残すけど、空気はどこか稟と冷え、空は広く高く。


休日の今日は、溜まりに溜まった用足しを片付けるために外出した。

つい先週までは、Tシャツ一枚でバイクに乗っていたのに、もう革ジャンを羽織らなければ肌寒い。

用足しが済み、帰路に着こうとした時、ちょうど夕暮れ時だった。

秋晴れの澄み渡った空に、入道雲とバトンタッチしたように薄くて高い雲が散らばっていた。

「今日の夕日は美しいに違いない。」

帰る前に展望台で夕日を見よう。

国道から、梁川沿いの土手にある細い道へ入る。

梁川は小学校の側に流れる川。

土手を挟んで反対側にある小さな山は、子供の頃の冒険の跡。

ぽつんと見える鳥居を目指し探検をした。

結局、思ったより遠くて辿り着けなかったけど、まっすぐに鳥居を目指し、川を進み、
橋の下の段ボールハウスは私達の冒険を邪魔するボスの住家だった。

この道を走ると、キュンとする。

手の届かないものって、どうしてこんなに切ないんだろう。


岩山展望台へ着くと、カメラを抱えた人達が集まっていた。

バッチリのタイミング。

缶コーヒーを飲みながら、盛岡を照らし落ちていく夕日を見ていた。

何とも不思議な雲が連なっていて、まるで浮世離れした眺め。

カスケード-Image638.jpg カスケード-Image642.jpg カスケード-Image641.jpg (左端は岩手山)


敷き詰められたアスファルト、平行直角にならぶビルディング、計算された人口物。

そこで快適に暮らしているけれど、計算の及ばない物を求めている。

どこかファンタジックでどこか切ない。

手の届かない物。


展望台に届く、遠くで走る列車の音や、どこかでやっているライブのご機嫌なロックチューンは、明日が雨だと伝えてる。

日が落ちてもなお染まる雲を後ろに、相棒に跨がって帰路に着く。


今夜はグラタンが食べたいな。