ずっと、前の車のテールを見ながら走っていた。



トイレ休憩を挟み、地図を見たりしていると、無性に心細くなった。


出発の日はいつも、何か切ない。


大切なモノを後にするから、余計に大切に感じるのか。


暖かさを背中に感じるからか。


信号待ちで、後ろを振り返ると、手放したくない宝物が向こうにある・・・と思った。



いつだったか誰かが言ってた。


「旅をするのはすごい事じゃない。


旅をしないで生きていけるほうがすごい。」



ようやくその言葉を理解した。



繰り返される毎日に埋もれて、忘れたくない事も、感じていたい事も見失う。


不出来な私は、旅をする事でやっと気が付く。


それが分かっていたから、きっと、家族は暖かく見送ってくれたんだ。



大人になれなくて、ごめんね。



雨の中を走り続けて、どんどん暗くなり、ついには夜になった。


帰宅ラッシュは終わり、大型トラックが我が物顔で走り抜ける。


正直、怖い。


福島県には入ったものの、繰り返される国道の景色は、どこを走っているのか分からなくなる。


そろそろ限界かな。


急ブレーキが増えてきたもの。


出来れば、流れのスムーズなうちに郡山市までは行きたかったけれど、


初日だし、無理はせずに福島市のネットカフェに入った。



走ってて、何より思ったのは、無事でいる事。


事故にあわない事。


それは自分の為ももちろんあるけど、


悲しむ顔を見たくない。




「あ~楽しかった~!!」


と満面の笑みを見せ付けてやろう。