人生の岐路であった、日本一周。



帰宅後、私はただ「日本一周をしてきた女」に成り下がる。


「日本一周」と書かれた高級ジャムの瓶を、満足気に眺め、人に見せびらかした。


見せびらかし、自慢げにする事が、

ジャムを所持している事だけが、


私の誇りとなっていた。

旅で感じた事は、きっちりと蓋をされて、味を思い帰すだけ。

冬が来ていた。

「こんなんじゃない」と、焦り、空回り、そして猛吹雪に巻かれて前が見えなくなった。


蓋を開けると言う行為に気づいたのは、随分人に迷惑をかけてからだった。


少しずつ漏れ出す薫り。

「そうか、そうだった。」

切なくて情けなくて涙がでた。


ようやく、雪が溶けて来た。

新しい芽吹きの時。



ふと立ち止まり振り返ると、顔を覆ってしゃがみ込みたくなる。

後悔し、恥じる目録は溢れるほど次々に見つかる。

私は、ただ恥ずかしい人間だったのか?

今もか?

後ろ向きでしゃがみ込む。


いや、そうじゃない。

もしそう思ったなら、私を大切に思ってくれている人達に失礼だ。

立ち上がり、前を見るのだ。




道は前にしかない。


恥も欲も悔いも酸いも甘いも全部糧にして歩いてやる。