昔から交通量の多い道には

それに沿う形で霊道も通っているという。


昔に住んでいた賃貸マンションの話。

そこはいわゆる旧街道沿いに建っていた。


よく手も入れられた奇麗なマンションは

自分の賃貸生活の中でもずば抜けてよい環境だった。

ただその部屋はまさにその霊道が貫く部屋だった。


はじめて確信を持ったのは、ある夏の休日。

休みの日の日課である朝のサイクリングを終え、

部屋に戻った時のこと。


いつものとおり、爪先で扇風機のスイッチを押して

風にあたろうとしたところ、その日は上手く踏めず、

結局しゃがみこんんでスイッチをいれた。


その時、後ろを確実に人が通り過ぎた。

完全に物理的に存在する塊が動くことで生じる

風・風圧を感じたのだった。


その路は、ベランダから私の寝ているベッドの横を抜け、

ダイニングを斜めに抜けるコースだった。

人と同じ高さを通るものもあれば、天井付近の位置を通るものもいた。

あくまで気配だけなのだが。


時に、動物(おもに犬)が通ることもあり、

その体高から感じることもあれば、あきらかに独特の息遣いまで

感じることがしばしばあった。


多少気味悪くはあるのだが、ほとんどすべてにまったくと言っていいほど

悪意が感じられないのだ。

悪意がないどころか、眼中にないといった方が正しいかもしれない。

まったく意思の疎通もないまま長い時間を共存した。





そんなある晩のこと。

寝ている脇をかなりの実体感が通り、目をさまされた。


起き抜けは特に期限の悪い傾向が強い私は、

通り過ぎたであろう、足元方向(膝に布団を挟み込んでかなりの重なりになっていた)を

見据え、実際に相手を問わずに腹をたてていたのでである。

   

その時だった。

私の足元に丸め込まれた布団の陰から、

若い女の子が顔を出したのだ。


そして、口ぱくで<ごめんね>と言い、

また陰に姿を消したのだ。


その瞬間はまるで舌打ちするかのように

怒りを見せた私でしたが、よく考えると寒気が・・・。


ただ、その娘に関して言えば、

正直生気が充分に感じられました。


たまたま体を飛び出しての深夜徘徊だったのかもしれないですが、

今時なかなかいない、爽やかな笑顔の素敵なこでした。

(できればもう一度あいたいくらい)


もちろん、いくら考えても、過去の知人でもなければ

合成されたイメージではありません。


不思議なことがあるものです。

皆さんもそんんあ経験ありませんか?














学生時代のある夏休みのこと、

父の車を借りて友人と東北ドライブに出かけた。



猪苗代周辺の渋い観光を終え、帰途につこうとしたのだが、

あまりに盛り上がらなかったのか、予定外二に海にも立ち寄ることになり、

茨城方面に向かうことになった。この話はその道中のことだ。





その道は山を切り開いた、しかも真新しいスムースな舗装路で、

さらに嘘のように他の車両がいない道だった。



すでに陽は落ち、暗い山間を縫ってはしるのだが、

快適な道に恐らく80キロは普通に出せていたかと思う。


連れはすでに眠っており、気楽でいいなと思っていたその時、

それまで殆どみる必要がなかったバックミラーの中央に

それはいたのだった。





年の頃は10歳前後だろうか、

サテンのようなテラテラの着物をまとった男の子が

直立の姿勢で一定の距離でついてきていた。

そして右手には提灯を持って。


僕は助手席で居眠りする連れに、

大声で窓を閉めさせ、一気に加速した。





しばらく走り、おちついたころ、

手元の地図ではいい加減左折路があるはずだったのだが、

いっこうに標識も出てこない。


先ほどの出来事もあり、誤った道を行かされているかもと不安を覚え、

例の場所の手前にあった自販機スポットになにか標識のようなものが

あったような気もし、思い切って確認に戻ることにした。



戻る道すがら、同乗者に先ほどの出来事を話し、

その場を過ぎるところでは、見間違いの原因についても周囲を確認させた。

特に発見はなかったが。



来た道を戻り、辿り着くとそこには期待した情報はなかったが、

運よく販売機への補充に人がやってきた。


その男性に道を尋ねると。曲がり角はもうしばらく先とのこと

再度。例の場所を通ることになった。




つれも起きていることから、今回は多少強気だ。

注意をしつつ、三度目の大きなカーブの先、例の場所差し掛かった。


バックミラーを注意深く観察しながら、例のものが現れないこと、

そして見間違いの原因になりそうなものを改めて観察していた。


なにごとも起きぬまま、つれとやはり見間違いかと和みだした頃、

右目の視野の外側あたりに気配を覚えたのだ。


油断しきった状態で振り返ると、

そこにあったのは、白い着物を着た、

彼の右手が運転席側の外にあったのだ。

サイドミラーを確認する余裕もなく、
一目散に逃げたのは言うまでもない。


家族の誰もまともに取り合わなかったが、もしや道路工事で、犠牲になった動物もあったのかもしれない。

お婆ちゃんだけは、それは狐だろうと聞かせてくれた。


たしかにあの少年は狐顔には違いなかった。


と思うことにした。




もちろんその後、その道を通ることはありません。

あなたにもそんな経験ないですか?







20代前半の久しぶりに帰省した夏のある日のことだった。



その日は高校卒業以来あうことのなかった友人達と飲む約束をいていた私は、

昼過ぎに実家についたこともあり、自分の部屋で仮眠をとることにした。



2,3時間が経った頃だろうか。

部屋のドアが開き、誰かが入ってきた。



あらかじめ弟としていた約束で、

当時流行っていたバンドのコンサートパンフを持ち帰っていた。

おそらくは、それを取りにきたのだろうと考えた私は

荷物も一つだったたこともあり。

判るだろうと、わざわざ起きることはしなかった。



部屋に入ってきた彼は、しばらくウロウロと動き回り、

ドア付近においた私のスポーツバッグを開ける様子もなく、

ついには私の横になったベットの周りを反時計回りに回り始めたのだ。



バッグ一つしかないのに、なぜこいつは解らないのだろうかと

思い始めた瞬間、私はあることに気付いた。



私の部屋は6畳の洋間で、北東側の壁に寄せて配置していた。

なのにそれは私の周りを周回していたのだ。





おかしいと気付いた瞬間、

胸にドスンと圧迫感を感じ、体に力が入らなくなった。



それは馬乗りになる形で、私の首に手をかけて締め上げてくる。

とはいえ、結局はいつもの金縛りだろうと、苦しさの中でうっすらと目を開けてみた。

そこには初めて目にする男がいた。



それは年齢的に当時の自分とそうは変わらない男で、

あきらかにありえない真っ赤な目を吊り上げ、真っ青な顔色が

ただ者でないことを示していた。



その男は、強弱をつけ締め上げてくる。

私は薄目で二度三度と彼を確認し、記憶の中の知り合いリストと

照合していた。

 

しばらくの後、その締め上げる力のリズムにあわせせ、


弱ったタイミングに反撃を加えることを決意した。



当時テレビ番組で人気のお笑い芸人が、金縛りにあった際、

締め付ける相手の首を絞め返したという話を披露していたことをきいていて、

反撃を加えてみようと決心したのだ。



金縛りと思いこんでいた右手に力を込めると

拳骨を握りしめることができた。

ついにそのタイミングを待ち、渾身の一撃を加えたのだ。



その反動で私は起き上がったのだが、

馬乗りになっていたはずのターゲットはすっかり姿を消し、

部屋は西日に照らされていた。







その件との関係は不明だが、

高校時代、流行りのロックバンドに憧れ、ベースを弾いていたことがある。

親しい友人が家の前を通りかかった時にいつも通りの私の弾く音が聞こえそうで、

鍵のあいていた玄関から、二階の私の部屋に上がったことがあったそうだ。

私の部屋にはもちろん誰もいなかったのだが。



その彼自身もギタリストであり、

私の演奏を聞きなれた男だったのだが、

完全に疑う余地はなかったそうだ。



私が故郷を離れるときに、

もちろん楽器も持って出ていたのだが、

いつも彼は私の部屋にベースを弾きにきていたのかもしれない。



夏のある日の出来事だった。






あなたにもそんな経験ないですか?






























社会人になり、数年を経たある日のこと。

10時は回っていたかと思う。


いつもの駅前のコンビニで夕食とツマミを購入し、

家まで10数分の帰り道だった。


そこは通りからわかれた、くだり坂の終わりになるのだが、

暗がりに広い駐車場が面していた。


街頭一つの広いスペースの奥に

数台の放置車両が止められていたのだが、

その日に限って、その中の一台に目が行った。


当時から視力だけは恵まれていたが

さすがに暗がりで到底端までは見えるはずはないはずだった。


だが、奥から2台目の運転席にいた男と

目が合ってしまったのだ。


不思議なもので、瞬間的に見てはならないもの、

生き物ではないというのが理解できた。


あわてて目を逸らした瞬間だ、

突如頭の上から大きな圧力がかかってきた。


学生時代はサッカー部で足腰の筋力も自信があったのだが、

その重さは尋常ではなく、歩くことさえ困難なほどだった。


止め処もなく溢れる冷や汗を垂らしつつ

ほとんど這うような形で残りわずかな距離だった

自宅アパートにたどり着いた。




ようやく家にはたどり着いたのだが、

その後3日ほど、

さらに騒がしさに悩まされることになる。


当時の部屋はいわゆる1kのロフト付で、

ロフトを寝床に充てていた。


その日から電気を消すと始まる騒音の数々。


箪笥を開け閉めする音や何かを落とすような音、

そして倒したような音。


かなり騒がしいのだが、明りをつけると

特に変わった様子はないのが不思議だった。


なのだが、当時は灰皿などもあったので、

万一ひっくり返されてはと、

盛り塩を備えてみることにした。


まずは部屋の隅に盛り塩をしてみたが、

それは微妙に効果を感じた程度だった。


翌日には週末の掃除を覚悟し、

相撲取り並みに部屋中に撒いたところ、

騒がしさは嘘のように止んだ。


以後、その道は使うことはなくなったが、

その現象に何らか訳があったのかは

全くの不明である。




























小学校4年の夏だったと思う。



小学校単位の少年野球部に入部テストの手前のこと。

自然と野球好きの男子がつるみ出し、

自分達だけで草野球部を立ち上げ、

学校が終わると毎日のように

近所のグランドで楽しんでいた。





その日もそんな極めて普通の一日だった。

いつものように日の長い一日も暮れかけた頃に帰宅すると、

リビングにメモが残されていた。





週末の夜だったこともあり、

仕事も早めに切り上げた両親は弟を連れ、

車で20分程度の父の自宅に先に行っているというもので、

私にも帰り次第タクシーで向かうようにという指示だった。





メモに記されたタクシー会社に電話をするとすぐに車が手配され、

表の通りで待つことになった


着替えだけを済ますとすぐに家を出て、表通りに向かった。



外に出ると先ほどまでの蒸し暑さがうすれ、

涼しい風が心地よかった。


道路の縁石に腰掛け、顔を上げた瞬間、

見慣れないものが目に入ったのだ。



目の前の道路の向こうは畑と小川が流れ、

その向こうに山沿いの道路が見える。


その間、およそ100m

正面には山の麓の道路に面する部分に

水道小屋と呼んでいた、セメントとブロックで四方が囲われた

小さな小屋が見えるのだが、その周囲を明るいものが

激しく飛んでいたのだ。





目を凝らすとそれは確かに火で、

風や空気の影響により、炎の尾が流れるのがしっかり見える。


るで夜の電燈に群がる羽虫のような円を描きながら、

炎を大きくしたり、急な加速を楽しむようにも見えたのだ。

それは暫くの間続き、すっかり見入っていた。



これが人魂なのか?


怖いというより、すごいものを見ているような心持ちだった。

超小型のUFOが火災を起こしたならば、

このようにも見えるかもしれない。



正直、妖怪や心霊の類の恐怖感は実際になかったのだ。



火の玉はしばしの遊覧を楽しんだ後、急にその光を強め、

私に向かってスピードを上げた。



思わず、その速度に顔の前を手で覆うほどだったが

次の瞬間、その火は急反転し、セメント製の水道小屋に激突したのだ。





それはまるで、火のついたタバコを地面に叩き付けた時のように、

激しく火の粉が飛び散り、飛び散った火の粉も徐々に消えていったのだ。


その光が失われるにつれ、徐々に恐れに似た感情が湧き出してきていた。







父の実家につくなり、今見た顛末を家人に話したのだが、

子供の戯言とその域をでることはなかった。





ただ、祖母だけが、それは火の玉だよ。

お盆も近いからなにか言いたいことがあったのかもね

と言ってくれたのが、唯一の救いだった。






週明け、火の玉が衝突した個所や、飛び散った部分を見て回ったのだが、

残念ながら焼き焦げたような跡は見つけることはできなかった。







それからおよそ一週間後、

その場所で交通事故が起きた。

見通しの良い直線道路だが、軽車両が大破していた。



もちろん火の玉との因果は不明だが、

その後、同様なものは目にすることはなかった。



あなたにもそんな経験ありませんか?