闇に香るもの (新潮文庫)/北方 謙三
¥460
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恋人の髪の匂いから、隠された一面を知る男。
一夜の出会いから、過去の真実に気付く少年。
軽いゲームのつもりが、 危険な賭けに巻き込まれる男。
香水の残り香に、恋の行方を悟る女……。
飲み物、煙草、装身具、香水など、誰にでもあるお気に入りの一品が、
思いがけず日常 を反転させるスリリングな瞬間を、
ミステリの名手八人が鮮やかに描く。短編小説の醍醐味溢れる、傑作アンソロジー。


しばらく、PCの前に座る時間がなく久しぶりの更新です。

東野 圭吾さん、宮部みゆきさん、森 瑶子さん
このあたりの方の作品が読みたくて図書館で借りました。

無意識下での記憶の書き換えをテーマに書かれている
東野圭吾さんの『栄光の証言』
たまたま見かけた2人の男性のうち、ひとりが殺害されたことを後で知り
目撃者として名乗りを上げる主人公
人生ではじめて、人から興味を持ってもらえる話題を
提供できる状況に少なからず喜びを隠せない。
今まで見向きもしてくれなかった人が自分の話しに耳を傾けてくれる。
自分の存在意義を少しでも長くつなぎとめておきたいと願う主人公。
何度も話すうちに自分で勝手につくった部分が話しに加わっていること
に気が付きます。そして、根本から自分の記憶が間違いであることに気づき・・・

事実をあとから話す時って、誰でも少なからずその人の主観が
入ってしまうものなので、人づてに話しを聞くときは
「それって、どういう状況?」とわたしは聞くようにしています。
思ったことだけをを言ってもらうと、そのすべてが事実であるように
こちらも思い込んでしまう。
それで、先入観や誤解が生じていたことが後から分かり
いい出会いになったかもしれないのにもったいなかったな
と思うことが多々あったります。

考えさせられる作品でした。


あと、わたしがおもしろかったのが、北方謙三さんの
『男の小道具』
経験も、知見も豊富な哀愁漂う男性が
男と女について、若者に説いている様が
ものすごい説得力。
雰囲気で相手を飲み込んでしまう。
相手は一太刀も浴びせられず、たじろくばかり。
そんな若造相手に最後、やるじゃないか
と一言なげく、男同士、やるかやられるかの世界
を覗かせてもらったような感覚です。

他、重松 清、阿刀田 高、結城 昌治、勝目 梓
東京湾景 (新潮文庫)/吉田 修一
¥500
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出会い系サイトで知り合った亮介と美緒

亮介は振られた彼女の傷が癒えないまま
美緒は『涼子』と自分の名前を偽って

出会いがあればいつかは別れがくる。
恋愛なんかで泣いたり、笑ったりできるなんてドラマの世界だけ。
そう思ってきたことも、誰かと出会うことで
思い直すことができる。
心で向き合うことに臆病なふたりの長く、せつない恋愛小説

こころをさらけ出さなければ、受け入れてもらえなかったときに
傷つくこともなく。
自分は真剣じゃないからって言い聞かせていれば、
踏み込む勇気もいらない。
それがだんだん自分に染み込んでいっていつのまにか、
臆病になって気がついたら本当に好きになることもなくなったり。

だから、相手に先にうそをついてしまう。
自分から冷めたことを言って「あなたも、そうでしょ?」
って言ってしまう。
美緒は、そんな恋に臆病な女性。

一方、亮介は素直なのに、あと一歩相手の気持ちに
踏み込めずにいるタイプ。
そんなふたりが出会い、互いに気になりだして、
それが人恋しいからなのか、一緒にいるから
好きだと思いたいのか、
ゆっくり、ほんとうにゆっくりと自分たちの気持ちに
気づくまでのふたりの物語でした。
ちょっぴりせつないけれど、未来あるあたたかさを
感じました。

ブリッジを眺める砂浜で少し距離をあけて座る
男女のハードカバーの写真も
ふたりの微妙な距離を感じさせてくれるようで良かったです。
おとなの自由研究/林 雄司
¥1,050
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凍ったバナナで釘は打てるのか。
糸電話で市外通話はできるのか。

誰もが(?)ふと一度は頭によぎったことのある
くだらないともいえる疑問に真剣に挑戦した
記録が綴られているエンターテイメント本


こどもの頃だったら、こういう疑問はたくさん浮かんだけれど
おとなになってから、そのこと自体を口に出すこともためらいます。

この本に収録されている内容は
『デイリーポータルZ』で連載されているもので
一度読んでみたいなと思ってたんです。

よく考えたら、そらそうやん!
と思ってしまう内容から、へぇ~と思う実験も。
こういう遊びごころをもった人はけっこう好きです。

ちなみに、凍ったバナナで釘は打てなかったようです。

連載中の『デイリーポータルZ』