今年、6冊目です。




○あらすじ


江戸にある大店・長崎屋の一粒種の若だんなは、体が弱くいつも寝込んでばかりいた。


しかしこの所の江戸は地震が多く、寝込んでばかりの若だんなも落ちてきた物が頭に当たってたんこぶをこさえてしまったりする。


すると、一太郎に砂糖菓子よりも甘い両親は、若だんなを箱根へと湯治に出すことにする。


お供は、やはり若だんなに甘い本性は妖の二人の兄やと、若だんなの腹違いの兄・松之助。


ところが旅の道中、二人の兄やが突然姿を消してしまう。


二人の安否を心配する若だんなだったが、もしかしたら先に行っているかもしれないという希望を持ってとりあえず当初の予定通り宿を目指す。


だが、宿についても二人の兄やは現れず、仕方なく寝床に入る若だんなだったが、そこで突如人攫いにあってしまう。


しかし、この人攫いはどうにも様子が可笑しい。


しかも、箱根の山神の怒りが原因らしい地震も頻繁になってきて・・・・。





○感想


『しゃばけ』シリーズ、5巻目です。


このシリーズ、初期の頃は図書館で借りて読んでいたのですが、今は文庫が出てから読んでいます。


今回は、裏のあらすじに『若だんな、旅に出る』と書いてあったので、「え、若だんなが旅??」とかなり驚きました。


病弱な若だんなの旅をよく両の親と二人の手代が認めたな~と思ったら、読んでみて納得しました(苦笑)


道中さぞかし二人の手代の心配性が出るだろうな~と思っていましたが、そうそうに二人の手代が忽然と姿を消してしまって、若だんなと一緒になって心細い思いをしました。


しかも、若だんなってば結構ハードな事になってしまっていますし・・・・。


物語の最後の頃に漸く二人の手代が揃ったときは、何だかホッとしました。


やっぱり、若だんなの傍には二人の手代がいないと・・・・・(家鳴もね)


この『しゃばけ』というシリーズは、毎回読んでいる人の心の奥底に眠っている感情などを刺激して気付かせてくれる作品だと思います。


今回、山神と人間との間に生まれた子供・比売が物語の主軸になっています。


比売が受けた仕打ちというのはとても酷いものですが、もう一方の見方をすれば他にどうしようもないんですよね。


人って言うのは、切羽詰ったときに何と惨いことを平気でやってしまう動物なのだろうと思います。


後、今回、比売と若だんなが抱えているある問題に酷く共感しました。


『どうしよう・・・・苦しいよう』


この言葉は、私の心にずしんと響きました。


五体満足で大きい病気もせず、家族もいて仕事もあって友達もいて帰る場所にも食べるものにも困らないのに、どうしたって不平不満が出る。


そう考えるのは贅沢な悩みだと思っていても、思うことはやめられなく、そんな自分が嫌になる。


そういう時に、無意識に上記のような言葉が心の中で浮かんでいるのかもしれないな~と思いました。


若だんなも比売も今回の大騒動で何かしらの切欠が掴めたようです。


私自身も己の足でもっと踏ん張れたらいいなと思ったお話でした。