本書の著者、平川さんは、1年間の新人研修の後、
カークーラー事業部に配属されます。
後に28人抜きで社長に抜擢された山下事業部長が率いる
エアコングループから独立した事業部でした。
そこで待っていたのは、千本ノックのような厳しい洗礼でした。
京都・神戸の担当を命じられ、上司の課長は同行することもなく、
いきなり1人で売り込みに行かされるのです。
しかも毎週月曜日の営業会議は恐怖でした。
真剣に対策を考えているか
営業的な策を練っているか
命がけで取り組んでいるか
それが試されるのです。
新人の平川さんは、事業部長から責められます。
わたしも営業経験が長いですから、こういった営業会議での追及は
はっきり言って嫌いでした。
結果ばかり求める上司に反発したこともありました。
それなら、お前がやってみろ!
そんなに口でいうほどカンタンではないんだよ!
そんな怒りを感じたことは、数え切れないくらいあります。
平川さんの新人時代のパナソニックでも、
同じような厳しさがあったのだと思います。
しかし、幸之助さんのある教えを知り、
そういった営業部隊の上司と部下の考え方、
上意下達というか軍隊の命令系統のようなやり方は、
そんなに悪いことではない、と思うようになりました。
幸之助さんは言いました。
強く要望できないリーダーは去れ、と。
社長は役員に強く要望し、役員は部長に、部長は課長に、課長は係長に、
係長は主任に、主任は一般社員に、それぞれ強く要望する。
社長は誰に要望されているかと言えば、株主であり、お客様です。
パナソニックに限らず、うまくいっている組織には
必ず強く要望するリーダーがいる。
幸之助さんはそう言っています。
たしかにその通りです。
上司が部下に遠慮してどうすんだ!という話です。
要望と強制は違います。
受け取る部下の側が、勝手に「強制」だと受け取って反発するのです。
要望されたら、全力でそれに応える。
それだけで良いのです。
今なら、そう思えますが、当時の私はそう思いませんでした。
平川さんの新人時代も、そういった洗礼を受けていたのだと思います。
でも幸之助さんの「要望する」という経営哲学が
パナソニックに浸透していたので、
私のようにひねくれずに、伸びていかれたのだと思いました。
パナソニックV字回復の真実/KADOKAWA
¥1,512
Amazon.co.jp