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スペイン内戦に義勇軍として参戦したアメリカの大学教授ロバート(ゲーリー・クーパー)は、政府の軍事輸送を阻止するための鉄橋爆破任務を任され、ジプシーのゲリラ隊に協力を求めます。彼はそこで匿われていた美女マリア(イングリッド・バーグマン)と出会い、互いに惹かれあいますが・・・


巨匠ヘミングウェイの同名小説を実写化したラブロマンス。1943年。
原作のほうは名前ぐらいしか知らなかったので、あくまで一つの映画作品として鑑賞しました。

で、やっぱり有名なだけあってそれなりに面白いです。
スペイン内戦での過激派ゲリラにアメリカ人助っ人がやってくるという設定なのですが、このゲリラ集団がなかなかの個性派集団。
特に一番キャラが強烈なのが、髭もじゃもじゃの野性男パブロ(エイキム・タミロフ)です。端的に言うと、嫌な奴。小心者でやたら厭味ったらしく、精神的に未熟な人間のように思えます。しかしそんな役立たずのように見える彼も、以前は勇敢な革命戦士だったということが回想シーンで明らかに。彼を変えてしまったのは、革命ゲリラが引き起こした、ある出来事がきっかけでした。


パブロの妻であるピラー(カティナ・パクシノウ)も、旦那に負けず劣らずのインパクトがある女性です。事実上ゲリラ集団を仕切っている彼女は、荒々しいもの言いや行動・容姿などからわかる図太い女性というイメージとは裏腹に、かつて何人もの男に恋をした乙女な一面を持っていました。女を捨て、闘う戦士としての人生を全うしようとする姿勢は、男からみてもカッコイイの一言。


そして端麗な容姿で画面に華を与えてくれている、ヒロインのマリア。ごつい男たちの集団の中で明らかに浮いた存在ですが、右翼に乱暴され捉えられていたところを、彼らに助けられたという事情があります。しかしそんな彼女がロバートと喋るとき、見せる表情はそんな過去など微塵も感じさせない輝いた笑顔。生きる意味・喜びをようやく見つけたような、透明で純粋な感情がはじけ飛んでいて、微笑ましく感じられます。


見る前は反ナチス・反ファシズム的な側面が強調されまくってるタイプの映画かと思ったのですが、革命勢力側に対してもやや冷静な視線を投げかけるシーンがあり、単純な構図で描かれていないのも印象的なところです。
本作が公開された1943年と言えばまさに第二次世界大戦・スペイン内戦の真っ最中のはず。
リアルタイムでこういう視点を持つ作品が生まれたというのは興味深く感じます。


背景のセットとか明らかにショボかったりするんですけど、
さすがにクライマックスの戦闘シーンはちゃんとハラハラさせてくれます。
見て損はしません。良作。
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ガイ(ジョン・カサベテス)とローズマリー(ミア・ファロー)の新婚夫婦が越してきたアパートは、昔から妙な噂が絶えないいわくつきの物件。二人は特に気にも留めませんでしたが、いざ住み始めると隣人の老夫婦がやたらと頻繁に訪ねて来るので、ローズマリーがやや辟易し始めます。そんなある日、彼女はベットで悪魔に犯されるという不思議な体験をするのですが・・・


アメリカの小説家アイラ・レヴィン原作のサイコ・サスペンス。1968年。
ホラーに分類されることが多いようですが、あまり怖くはないです。
構成要素としては、恐怖よりはむしろ不気味さ・気色悪さのほうが強いと思います。


新居の隣人であるローマン&ミニーの老夫妻を不気味がるローズマリー。
最初のほうは、よくいるおせっかい焼きの老夫婦という感じで、彼女の過剰反応という感じもしたのですが、途中から明らかに違和感のある行動が増えてきます。
ローズマリーの妊娠発覚後、ミニーの勧めで診察を受けた産婦人科医も、鼻っから怪しさ満天。痛みを訴えても一蹴し、何故かミニーの調合した特製ドリンクを飲ませようとします。
そしてこういう時に一番信頼できるはずの夫も、妙な行動をし出すありさま。


そうこうしている内に、彼女はある出来事がきっかけで、老夫婦の重大な秘密を発見します。
周りの皆が自分の敵だと信じ込んだ彼女は精神が崩壊。夫や産婦人科医の手から逃れようと、大きなお腹を抱え逃げ回るシーンはちょっと怖いです。


クライマックスは中々に衝撃。真逆のオチを予想していたので、果たして画面通りに受け取っていいものか、戸惑ってしまう内容でした。そしてそれに対するローズマリーの最終的な行動も、やや意外な感じ。
このラストシーンこそが、この映画を名作たらしめているという気がします。


ローズマリー役のミア・ファローはそれなりに綺麗だったんですが、途中で髪型をベリーショートに刈り込んでしまったのがちょっと残念。劇中でも夫が嘆いてましたが、これに関しては全く同感です。おシャレなんですけどね~男ウケはしないんですよね。
もちろん演技自体は素晴らしい熱演でした。


ポランスキーの最高傑作という評価に違わない名作。
Young Man in AmericaYoung Man in America
Anais Mitchell

Wilder/Pryor Recordings 2012-02-09
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曲名リスト
1. Wilderland
2. Young Man In America
3. Coming Down
4. Dyin Day
5. Venus
6. He Did
7. Annmarie
8. Tailor
9. Shepherd
10. You Are Forgiven
11. Ships

アメリカのシンガーソングライターAnais Mitchellの5thアルバム。

ちょっとロリっぽい声が独特です。Joanna Newsomなんかを引き合いに出されているみたいですが、彼女よりはまだ万人受けしそう。

前作『Hadestown』は、Ani DiFrancoやボン・イベールことJustin Vernonなどが客演として参加した一大フォークオペラとして話題になりましたが、本作では再び王道フォークに回帰。
繊細なアコギ・ピアノを主体に、バイオリンやアコーディオンなんかも時折絡んで、洗練された音世界を作り上げています。
全体的には、よりシンプルになった分、楽曲の良さがより強調されたような印象です。


M3。米バーモントでのライブ映像。静謐なピアノイントロで始まるCD版とはまた違った情感。


M9。優雅な美メロ曲。
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ロシアでクーデターを起こした反乱軍は、シベリアの核施設を制圧、アメリカと日本をミサイルで攻撃するという声明を発表します。これに対処するため派遣されることになった米海軍の原潜「アラバマ」は、ベテラン艦長ラムジー(ジーン・ハックマン)に、新任のハンター(デンゼル・ワシントン)を副長として出航。しかし二人の思想は正反対で、徐々に対立が深まっていき・・・


潜水艦映画の代表作とされるポリティカルサスペンス。1995年。
デンゼル・ワシントンにジーン・ハックマンと、個人的に好きな俳優が出ているので見る前から楽しみでしたが、まさにこの二人の魅力が存分に発揮されていて、十分満足できる作りでした。


デンゼル・ワシントン演じる副長・ハンターはハーバード出の超インテリ。
何事も慎重な考え方をする彼のキャラクターは、血の気の多い軍人たちの中ではちょっと異彩を放っています。
部下に対しても、叱るだけでなく相手を思いやった表現を使ってやる気を引き出したり、変わった喩を出して鼓舞したり、何かと人間的に深みが感じられます。


一方、ジーン・ハックマン演じる艦長ラムジーは海軍に勤めて25年の大ベテラン。「われわれは民主主義を守るが、実行しない」という言葉通り、命令には絶対服従、たてつく者は許さん、という典型的なカタブツオヤジです。
ただ完璧に頭カッチンコッチンというわけではなく、ちょいちょい柔軟性を感じさせてくれるシーンがあって、そこがたまらなく良い!たぶん実は自分でも悩んでいて、こういうスタイルでなければ駄目なんだ、と言い聞かせているような感じすら見受けられます。


そして物語は常にこの二人の対立を軸に進んでいきます。
序盤、何人かで潜水艦の一室に集まり話すシーンがあるんですが、その時点で早くもハンターとラムジーの考え方の相違が明らかに。
それからも何度か考えが衝突することがあったんですが、いよいよ決定的になるのがロシアの潜水艦と遭遇した時。核ミサイルの発射命令をめぐって口論になり、収拾がつかなくなってしまいます。
結局強制的な手段が使われることになるのですが、さらにその後異常事態が。
ハンター派とラムジー派に分かれ、主導権が行ったり来たりする後半は緊張の連続でハラハラさせられます。

結末はだいたい読めるんですけど、それまでの展開が熱いので中だるみせず物語に惹き込まれました。


ストーリー以外では、一番印象に残っているのが潜艇シーン。
夕日に照らされた淡い色彩の中、水しぶきを静かに上げ沈んでいく「アラバマ」。
BGMの聖歌のような荘厳なコーラスが、画をより勇壮なものに仕上げてくれています。


実力派の二人の好演が見どころな良作。





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推理作家のワイク(ローレンス・オリヴィエ)は、彼の妻と不倫関係にある美容師マイロ(マイケル・ケイン)を自宅に呼び寄せ、ある提案を持ちかけます。それは、マイロにワイクの宝石を盗ませ、保険金をだまし取ろうというもの。ワイクの懐が潤うだけでなく、宝石を売ればマイロも大金持ちになれると言葉巧みに誘い、彼を納得させます。こうして順調に進みだしたかのように見えた計画でしたが、実はワイクは頭中で全く違う構想を描いており・・・


イギリスの作家アンソニー・シェーファーによる有名舞台劇の映画化作品。
リメイク版ではなく、1972年に公開された本家のほうです。(リメイク版は未見)

完全犯罪を目論んだ二人が、自らの犯した小さなミスによって計画に狂いが生じ思わぬ方向へ・・・のようなストーリーを、最初の流れから勝手に想像したんですが、いい意味で裏切られました。
声だけの出演者以外では、出てくる人物は二人のみ。
人形で溢れるワイクの家の中で延々と二人が話し続ける構成なのですが、そんな画面上のマンネリを感じさせないほどの練りに練られたストーリーで、終始惹きつけられました。


この作品を見る普通の人は、まず開始1時間ぐらいのとこで「!?」と感じます。そして30分ぐらい後にまた「!?!?」と、さらにラスト周辺で「!?!?!?」となって、この脚本すげーな、と感心することになります。
前半らへんは二人の掛け合いが面白くてちょっとコメディっぽい感じですが、後半は息詰まるシリアスな展開に。
途中不自然なところがあって惜しいな~と思っていたら、その部分を後でしっかり納得できる形で示してくれたので、特に引っかかるところもなく見る事が出来ました。
まあ立場逆転シーンが何度もあるので、ちょっと疲れる作品ではあると思います。


あと二人の画だけで持たせる作品ということもあって、やはり両者の演技力は光っていました。
特に、頭は切れても高慢で精神的に幼稚なワイク役を好演したローレンス・オリヴィエが、個人的にはたまりません。
自分の計算の中で物事が進んでいるときはマイロに対して強く当たっていたのに、いざ自分が嵌められると取り乱し落ち着きがなくなってしまうという、余裕のなさ。
自らに都合のよいように作り上げた小説の世界の中でのみ大活躍していた、いわば「井の中の蛙」的な人間性が本当にうまく表現されていました。
もちろん彼のハイレベルな推理能力の片鱗は、しっかり描写されてはいますが。
しかしそんな彼を騙すほどの頭脳を見せつけたマイロも、何気に凄いような気がします。


単純に素晴らしい、低予算ミステリーの大傑作と言えると思います。