夢の中に樹が出てきました。

樹は言いました。

 

「ちょっとそこ行くちょろちょろ消えたり現れたりする者よ」

「え?はい?オレのこと?」

「そうだ。人間。面白い変わった者よ」

「なんだよ。木のくせに偉そうに言うなよ。動けないくせに」

「きみたちの目からはそう見えるだろう」

「あー、そーだよ。しゃべることもできないくせに。ってなんでおまえしゃべってんだよ」

「きみがみている夢だからだ。といっても実際にもわしたちはリアルにしゃべってるがね」

「え?口もないくせに」

「わしたちは匂いでしゃべり、地の根を伝ってコミュニケートとしている」

「ああ、フェロモンね。んで根っこの菌根を使ってしゃべってるって言いたいのね」

「にんげん。よく知っているな」

「キンコンカンコーン。知ってるさ。学研の図鑑で読んだ」

「がっけん。しらない。人間はたくさんの単語をつくった」

「そうだよ。言葉ってな。お前たちみたいに単純じゃないんだよ。もっと複雑で」

「単純、複雑、わからない。人間は要らないものまで言葉にする」

「要らないものってなんだよ。言葉は時とともに磨かれてきた人間の知恵の結集だよ」

「ふふん。まあいいだろう」

 

「ねね。あんたずいぶん年くってるね。1000年くらい?ちょっと抱きついていい?」

「(ため息)ふむ。あまり好きじゃないがね。何故だね?」

「エネルギーをもらうのさ。あんたらはそのために存在してるんだろう?」

「きみらはわしら植物から酸素をもらって生きとるくせに欲張りじゃな。おまけに仲間を散々切り倒して、さまざまなものに使っておるじゃろう。きみが着ている服も植物からできているんじゃないか。紙だってそうだ。なけりゃ君らは勉強もできないし、おしりも拭けないだろう」

「ちぇ。そのとおりですぅ、けどね」

「さらにわしらからエネルギーを奪おうとするのかね。なんと強欲なんじゃろう。エネルギーを奪ってどうする」

「元気をもらう。明るくなる。愛に満ちて喜びにあふれる」

「ふむふむ。それはいいことじゃが、たまにはわしらにエネルギーを少し分けてくれんかね。都会の仲間たちはアスファルトやコンクリートに根元を固められてしまって疲れておる。たまーに人間の中にもエネルギーを与えてくれる者もいるがな。そんなのは666人に一人じゃ」

「666人?なんじゃそりゃ。悪魔か」

「知らなくばそれでいい」

 

「人類はこれから覚醒するのさ。愛と宇宙意識に目覚め、平和な世界を作る。宇宙の周波数と同化し、真我を極めるのだ」

「ほう。すごいのお。宇宙と」

「すげえだろ。宇宙は愛で満ちているのさ。人類が真我に目覚めたらきっとおまえたちももっと楽に生きられるようになるよ」

「・・・宇宙のアイかね(苦笑)」

「なに笑ってんだよ」

「いやすまんすまん。しかしな。きみ。宇宙意識と同化するなんて考えないほうがいいぞ。そんなことしたら、君らは一瞬にして消滅してしまうだろう。だいたい宇宙空間に出たら何秒と持たずに君らは死ぬ。空気がないうえに紫外線、宇宙線にさらされたらひとたまりもない」

「べつに宇宙空間に出るって言ってないよ。んなことわかってるよ」

「それを君たちから守っているのが、この地球だ。宇宙は果てしないパワーを持っている。その破壊的なパワーの中で奇跡的にあるのが、この地球だ。精神のバランスを保っていられるのもこの地球のおかげということを忘れちゃいかんな」

「うーん。屁理屈の多いじいさんだな」

 

「宇宙に溶け込むのは、きみの肉体が死んでからじゃ。ま、あまりうぬぼれずにな。どうも最近の人間は幸せになりたい欲が高まっておるのか、足元の幸せを見んで、遠くのほうばかり見ておるようじゃ。感謝じゃよ。まずは感謝。それを忘れちゃいかん」

「へいへい。わかりましたよ、先生。ありがとうね」

「(頷き)・・・ありがとう」

「・・・」

「また会おう。にんげん」

「おー。あんたが生きてたらな」

「手足や頭がもげたくらいで死ぬような生き物に言われたくはないわ。はっはっは」

 

ジジイの笑い声で、目が覚めましたとさ。

 

 

夢の中に地球が出てきました。

地球は言いました。

 

「ボクはまるい」

「知ってるがな、んなこと」

「太陽の光を受けてね」

「知ってるっつーに」

「本当に知っているの?太陽の光を浴びて君たちは生きているんです」

「だーかーらー」

「でもボクが自転していなかったら君たちは死んでしまうよ」

「え?」

「ボクが回っているから、昼が夜になって夜が昼になってまた夜が来て」

「あたりまえだがね」

「光は同じ分だけ影になる。光と影。君たちはそう言いますね」

「ああ、それが?」

「相反するもの。光と影。表と裏。生と死。善と悪。喜びと悲しみ。いろいろあるけど、ボクはそうしたものを自転することによって、均等にしているんです。そもそもふたつでひとつのものだけどね」

「均等?相反するものを。。。」

 

「…きみは、しあわせって何だと思う?」

「なんだよ、急に。しあわせってのは、そりゃ愛と喜びに満ちた世界だろう」

「それは実に人間らしい。平面的な考え、というか意識ですね。でも光ばかりを浴びていたら、きみたちは生きていけないでしょう。それにそうしたものはすぐにひっくり返る」

「ちょと何言ってるかわからない」

「ボクがまるくって自転しているのは、きみたちの魂が宿る命そのものの形なんです。まるいからオモテもウラもない。夜と昼を均等にしているようにすべての相反するものを、そう、ピアノやギターの調律のように均一に調和のとれた形にするよう、整えているんです」

「うーむ」

 

「でも人間たちは欲に目がくらんで、その奇蹟の働きをわすれているみたい。人間が幸せというものを、愛と喜びに満ちた世界だ、と言っているうちは、本当のしあわせは見つからないんじゃないでしょうか。愛と喜びに目がくらんでやしませんか?それを得るためには手段を選ばないくらいに」

 

「じゃ、じゃあ、しあわせは、愛も憎しみも喜びも悲しみもぜーんぶひっくるめたもんだとでも言いたいの?」

「簡単に言ってしまえばそうかな。大切なことは、まずは太陽の光と自転している自分に気づくことです。太陽が神の光、もしくは愛だとしたら、きみたちは自らの魂の働きに気づき、自らの意思で自転すること。光と影、喜びと悲しみ、愛と憎しみ、どちらかに偏らないようにね。時には思いっきり片方に寄ってしまうこともあるだろう。でもね、その度に意識して自分を調律する。もちろんほかの人たちや生き物と共に生きていく中で寄り添いながら、調律していくのも大いにありだね。そこに命の輝きがある。生かされている感謝と共にね。そうすると相反していたものはだんだんまるくなって、相反ではないひとつの魂の形になっていきます。そしてそれはとっても愛おしく大切な尊厳にみちた命の根源に溶けていくんです」

「尊厳、いのち・・・」

 

「それがあなたたちの言う与えたり奪ったりする所有する愛ではない、ただ在る、神かァみィのアイです。あ、感謝といえば、月、もあるね。夜の闇を照らさないように照らしている月。それから、大気ってのがありますね。これは君たちでいえば、こころ、かな。その中に住まうものを生かしたり殺したり、、、ちょちょ、なにしてんの?」

「まわってんだよ。どうだ。これでいいんだろ。ひゃー、目が回る」

 

「ふむ。ボクにもよくわかんないです。ま、ゆっくりとね。目を閉じて、踊るようにまわってごらん。そういえば君たちはボクが回っていることさえ、気づいて生きていないでしょう。自分ってなにか、とか、アイってなにか、生きるってなにか、なんてのはそんなもんかもしれませんが(微笑)どうか迷ったときは、ボクを思い出して欲しいな。それは自分自身なんです。わすれないで」

 

クルクル目がまわったところで目が覚めました、とさ。