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檸檬🍋

 

文学青年でなくても、

梶井基次郎の「檸檬」を知っているだろう。

 

文学青年でなくても、

丸善(本屋)に「檸檬」をそっと置き、

そこを人の目につかぬよう出て来る梶井さんを知っているだろう。

 

文学青年でなくても、

彼の蒙古のような勇猛な表情に、

彼が時たま自信を覗かせていたのをご存知だろう。

 

文学青年でなくても、

梶井のような文学者が早逝し、引き出しの奥にジュエルの小箱の様に、

誰も知らぬ文学作品を、隠し持っている事をご存知だろう。

 

文学青年でなくても、

その頃の文学青年のほとんどが、

肺結核か、カタル、脊椎カリエスなどを患い、

自らの命を、運命を、皮肉っていたのをご存知だろう。

 

文学青年でなくても、

この檸檬🍋の名をカタカナで読まず、

漢字で読ませる人が誰か知っているだろう。

 

私は、文学青年とは、この人の様に、

短い人生を駆け抜け、

僅かな命の雫すら見落とさず、

幸せが何であるのかを示さず、

夕刻の人混みに、黄色い香りのツンとして、

沢山の同病の先輩に可愛がられ、

目柱を擦りながら惜しまれ、

たったの一冊でも良い、

たったの一言でも良い、

素晴らしい文節を紡ぐ人だと思う。

 

 

レモン哀歌    高村光太郎

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

わたしの手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ

トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽喉(のど)に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓(さんてん:山のいただき)でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関はそれなり止まつた

写真の前に挿した桜の花かげに

すずしく光るレモンを今日も置かう

 

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