1 右手右足戻れ歩け
多分、二十日くらい
僕は母の、見たことのない、彼女の、
怒りを、ただ静かにぶつけられていたのだろうか?
あるいはまた、所謂ボケたと呼ばれる、彼女の世界に、
無防備のままとび込み、何も出来ぬまま、
母と向き合っていたのだろうか?
その中で、どんな日々を過ごしたかは、
精査して記録するとして、
このうつ伏せのペッタリした日々は
いつか逃れるべき世界には見えたが、
急ぐべき逼迫性を感じなかった。
ただ、その店を出るとき、その支払いは莫大なようであった。
いつか、その母の世界を出なくてならない。
その結論に至る2週間は所謂救助されるまでは、
僕がどうなってしまい、どうすべきかわからない日々
に違いない。
そして僕にとって、同じように、どうなってしまい、
どうして欲しいと叫ぶべきかわからない。