その人は自室にこもって、ずっと、ずっと

何かを書いていた

何を書いていたのかは、知らない



俺はその部屋のそばにある階段で座ってた

その人が出てくると

俺の隣に座って



「これだけ書いても、大したことではないのですよ」

苦笑いで、そう、言った





俺はそこでずっといた

その人は外に出て行った



その人から、メールが届いた

小料理屋さんで、静かな時間を過ごされていることが感じられる

やさしい文章だった

添付された画像には

その小料理屋の、地面に据え置く電灯



小奇麗で繊細な

紫色の菖蒲の描かれた電灯