その酷い雨は

濡らすもの全てを真っ黒にしていった



俺はビニール傘さして、上半身までずぶ濡れだった



寺院の入り口で、その雨に濡れた真っ黒な人がいっぱいいた

顔は、ない



その中に和紙の傘をさした、紫の着物を着たその人がいた

俺と同じで上半身まで真っ黒だった

顔まで真っ黒な人たちは、その人に憑いていっているみたいに見えた



ビニール傘を投げ出して

全身真っ黒になって

その人に憑いていこうと思った



その人が、ゆっくり俺を見て、言った



「そんなことをしては、貴方の顔さえ、見られなくなるではありませんか」





ビニール傘を、握り締め直した