修道保守會議

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 「ロシアはウクライナの全土獲得可能」の米大統領発言 明日は我が身

 

発言の真意を理解せよ

 

 トランプ米大統領は21日放送のラジオ番組のインタビューで、ロシアのウクライナ侵攻についてプーチン大統領の責任を認めなかった上、プーチン氏が望めばウクライナの「全土を占領できるだろう」と述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領が戦争終結を「難しくしている」とも指摘した。(令和七年二月二十二日 産経新聞)

 我が国の諸オールドメディアはこの発言を「ロシア寄りの姿勢を鮮明にした」(共同通信、産経新聞 )、「露に譲歩」「一方的に主張」(読売新聞)などと否定的感想を添えて報道し、又、ニュースサイト、SNSにも数多くの批判的意見が寄せられた。トランプ大統領の今般の発言は日本国内で一種の炎上状態となっている。

 しかし、そうしたトランプ氏の発言の文字通りの、表面的な部分のみへの批判は、言論空間を飽和させることによって大衆が発言の意図を分析することを難しくさせている。

 そこで、今号ではトランプ氏の二十一日の発言が単なる権威主義的な暴論ではないことを示し、我が国の安全保障にも関わる重大な意味を持つものであると云うことを述べようと思う。

 

ウクライナは自ら望んで危機を招来した

 元々ウクライナは旧ソビエト社会主義共和国連邦の構成国であり、かつては世界第三位の核保有国であった。しかし、平成六年(1994年)ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンは核不拡散条約に参加し、これに関連して同年十二月五日ハンガリーの首都ブダペストにおいて開催されたOSCE(欧州安全保障協力機構)会議において、アメリカ、イギリス、ロシアは「協定署名国はウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの安全を保障する」という内容のブダペスト覚書に署名した。

 この覚書にはウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンの領土保全や政治的独立に対する脅威、または他国からの武力行使に対する安全保障が含まれており、その結果、この三ヶ国は以降、ソ連時代から引き継いだ核兵器の放棄(正確にはロシアへの移転)を行った。 

 しかし、平成二十六年(2014年)にロシアがウクライナのクリミア半島へ侵攻を開始した際、覚書にあるアメリカ、イギリスによるウクライナの安全保障は、ロシアを刺激することを避けるため行われず、結果ロシアはクリミア半島を一方的に併合した。同年三月ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはブダペスト覚書の違反の疑いについての質問への回答として「今は新たな国家が起ち上がった時であり、この(新たな)国家に関しての義務的な文書には何ら署名していない。」と発言した。又、クリミア半島に居住するウクライナ人を「ウクライナに強制滞在させること」までは義務に含まれないと主張した。

 つまり、覚書は何の強制力ももたず、ロシアは協定に違反し武力による一方的な現状変更を平然と行ってしまうことが分かったのである。

 

 こうした過去の失敗があるにも関わらず、その後平成三十一年(2019年)に行われたウクライナ大統領選挙において、現職の対露強硬派のペトロ・ポロシェンコを73.22%の得票率で破って当選した対露協調派のウォロディミル・ゼレンスキー現大統領はロシアとの対話路線を強調し、ウクライナ東部を実効支配する親露独立派住民との紛争は対話で解決可能であると主張した。

 その結果は言うまでもなく、ロシアによる令和四年(2022年)から今現在まで続く武力侵攻である。ウクライナ侵略は他でもないウクライナ国民の圧倒的支持を受けて始まったのである。

 

 自身が招いた危機にも関わらず、ゼレンスキー現ウクライナ共和国大統領は、戒厳令を宣布し、本来の任期の五年を超え大統領であり続け、多額の資金・武器援助を西側主要諸国、とりわけ民主党バイデン政権下のアメリカ合衆国から得てきた。戦争開始から三年が経過した現在、新たに米国大統領となった、常に自国の国益を最優先することで知られる、共和党のドナルド・トランプ大統領(二期目)は、ウクライナへのアメリカの資金や武器の援助は膠着状態の戦況を大幅に変更する効果がなく、国益に資さないと判断し、ロシアとの停戦交渉を開始した。
 その際トランプ大統領は自身が所有するSNS、Truth Socialにおいて、「ゼレンスキーは米国を説得し三百五十億ドルものお金を出させた。勝てない戦争をするためだ。(中略)米国はお金をヨーロッパよりも二百億ドルも多く出してきた。ヨーロッパが出したお金は返済されるが、米国には一ドルも帰ってこない。(中略)ゼレンスキーは選挙のない独裁者だ。彼がさっさと辞めなければウクライナは滅ぶだろう。」(筆者拙訳 @realDonaldTrump Feb. 20 Truth)と発言している。
 以上のことから、今回の恫喝ともとれるトランプ大統領の発言はロシア擁護ではなく、自国を防衛する意思がなく、いざ自業自得の侵略をされれば外国に甘える不誠実なウクライナへの戒めと理解できないだろうか。
 
今のウクライナは護憲派が望む将来の日本の姿

 我が国における核兵器を巡る議論には、不可解なものがある。

 例えば、法規範の序列についての理解だ。我が国では義務教育で、憲法、条約、法律、国会決議、条例の順に序列があることを学ぶ。ところが、非核三原則という「国会決議」があるため憲法が制限されるという倒錯した認識を持つ人々が多くいるのだ。

 令和四年(2022年)三月七日の参議院予算委員会において、小西洋之議員(立憲民主党)による核共有についての質問に当時の岸田文雄内閣総理大臣は「私の内閣としても国是として(非核三原則の)堅持をしている」「少なくとも非核三原則の『持ち込ませず』とは相容れない。核共有について政府としては考えない」と答弁した。しかし、国会決議は憲法が定める自衛権を制限できない。内閣法制局は憲法と核兵器の関係について次のように公式答弁をしている。

「我が国を防衛するための必要最小限度のものにもちろん限られるということでございますが、憲法上すべてのあらゆる種類の 核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えておりません」(横畠裕介内閣法制局長官・平成二十八年三月十八日参議院予算委員会第十七号)

 核兵器と云っても様々な種類があり、核地雷や核機雷のように相手国が侵攻しない限り爆発しないものもある(射程五百㎞以下のものを戦術核という)。日本国憲法が敵国内への侵攻を含む交戦権を否定しても自衛権を否定していないことは自明の理であるにもかかわらず、そのような常識を共有できない日本人がいるのはなぜなのだろうか。

 

 

 ハンブルク空襲、東京大空襲や広島・長崎への原爆投下など人口の集中する都市への無差別爆撃を戦略爆撃という。その目的は都市インフラ、軍事施設の破壊だと一般に誤解されているが、実は間違いである。戦略爆撃理論の創設者、イタリア王国陸軍少将ジュリオ・ドゥーエは主著「制空」の中で、戦略爆撃の目的を次のように論じた。

「無慈悲な空襲を受けた国では、社会構造の完全な崩壊が避けられない。国民自身が恐怖と苦しみに終止符を打つため、自衛本能に駆らに駆られて戦争の終結を求めて立ち上がる時が来るだろう」

 つまり、恐怖と苦しみを多くの民間人に与え根治不能な心的外傷を負わせパニック状態にすることが戦略爆撃の目的なのだ。選挙権を有する民衆が錯乱状態になれば、その戦争が侵略であろうと防衛であろうと、相手国政府は戦争能力を喪失するだろうという期待が戦略爆撃の支柱である(但し、民主国家でない――日中戦争中の中華民国などの――国における民衆の錯乱は統治機能に影響しないため戦略爆撃の効果はない)。戦略爆撃の目的は物質ではなく精神の破壊にある。

 そして、心的外傷を負った人々は次世代も同じ精神状態にするためにたゆまぬ努力を続けてきた。我らが街広島では「平和教育」と称し、平和記念資料館にかつて展示されていた、「原爆の熱戦をあびて皮膚が剥がれ落ち、水を求めてさまよう女性と子供」のリアルな等身大の人形や被爆者の焼けただれた舌の実物標本を未就学児や小学生に遠足で見せたりなど、欧米社会では児童虐待として禁止されるような行為を平然と行ってきたのである。

 このように、「核兵器」となれば法的な議論ができず、行政レベルで児童虐待を推進するなどの狂気が戦後繰り返されてきたのである。

 こうした敗戦後の錯乱の中で「非核三原則」という単なる国会決議が「経典」として宗教的価値を有したのではないか。そして、現在の広島、長崎延いては日本全国の「非核思想」に異議を唱えることは許されない「普遍的真理」が生まれたのだ。

 核の議論をただの右翼思想と一蹴していては、正しい結論は得られない。これは被爆者の苦しみを癒すために用意された経典を巡る宗教論争なのだ。

 それは、非核三原則に「議論させず」と「考えさせず」を加えた「非核五原則」となっている現実からも分かるだろう。

 

 

 ︎︎このことを踏まえ、ウクライナが陥った状況を見れば、非核思想がいかに危険な思想かが分かるだろう。

    東シナ海、沖縄の尖閣諸島、台湾の周辺で活動を活発化させるている中国人民解放軍、北方領土周辺で軍事演習を繰り返すロシア軍、北朝鮮へのロシア製のマッハ20で飛行する極超音速核ミサイル(現在の人類の科学技術では撃墜不可能)の保有合意など日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しくなっている。

    今回のウクライナ戦争の帰結を見て、相手国の理性に期待した楽観的な宥和的平和協調路線が国を誤った方向へ導くということを、我々日本人は認識した。ウクライナの現状は決して対岸の火事ではなく、平和主義的非核化理想論を信仰し続けた近い将来の私たちの末路であると云うことを、トランプ氏の発言に否応なしに意識させられるのだ。